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4章 視察(上)
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「あ、あの三人は何歳なの?」
「し、失礼いたしました。
私が17歳、シシティアが13歳、フルシアが9歳です」
「17歳、ですか?
学園に行く歳では……」
「ああ、上級貴族の方が通われるスターフェ王立学園ならばそうですね。
でも私のような下級貴族の場合は少し事情が違うのですよ。
私が通っている学園はバニエラ学院といって上級貴族の委託領を継ぐものが行くところなのです。
そこは毎日通うわけではないので、本日こうして屋敷にいるのです」
そんなにいろんな学園があるんだ。ずっとスターフェ王立学園行くんだと思っていたからほかの学園のことは全然知らない。
「来年私が入ることになるのはカンボア女学院はご存じですか?」
「カンボア……?」
「ええ、主に下級貴族の令嬢が花嫁修業をするための学院です」
そんなところもあるんだ。
「そういえば、僕の側近のなかにランタナ学院の学生だって言っている人がいるね」
「ああ、ランタナ学院も有名ですね。
あそこは執事などを養成する名門ですから。
でもスターフェ王立学園がやはり最も規模が大きく、名門です」
ほへー。全然知らなかった。そんな話をしているとむすっとした様子になったのはフルシア嬢。あれ? と思っているとすくっと立ち上がった。
「もう、学院の話ばかりしていないで遊びましょうよ!」
「ふ、フルシア!?
申し訳ございません、殿下、アラミレーテ様」
「いや……」
ありゃ、シントは目を丸くしている。まあ僕も結構したけれど。まさか話に割って入ってくるご令嬢がいるとは思わなかった。かわいそうに、上のお二人は顔を真っ青にしている。
「フルシア、謝るんだ!」
語気の強いガルシアン殿に驚いたようにひっ、と涙目になっているけれどこれは同情できないな。シントもフォローすることはできないからどうしよう、とこちらを見てきている。いや、どうしようもないよこれは、と首をふることしかできないけれど。
結局フルシア嬢は侍女に連れられて部屋を出ていきました。最後までなんだかこちらをにらんできたけれど、無視の方向で。だから僕らは気にしていませんよー、と思ってはいるけれど、口にはできない。ガルシアン殿もシシティア殿も顔色を悪くしていらっしゃる。そりゃそうだよね。子爵家の子が、しかも9歳とお披露目の歳の子が僕はともかく王族に失礼を働いたんだもの。
「あ、あの大変申し訳ございませんでした。
フルシアにはきつく言い聞かせておきますので……。
あの子は9歳とはいえ、いまだお披露目を済ませていない身。
ほかの貴族と、上位貴族と接するということがどういう意味か分かっていないのです」
「……、わかっていないと、それで許される話だと?
ならば、無礼を働いた者すべてが許させるだろうね」
おや? ここはきっと大丈夫です、と言って終わるだろうと思っていたんだけれど。珍しいな、とシントのほうを見ると別に怒っているわけではなさそう。まあ、シントの性格ではこのくらいのことでは怒らないだろう。ここはひとまずシントに任せよう。
「お、おっしゃるとおりです……。
あの我々はどうすれば」
その言葉にシントは少し考えるようにする。ちなみにこの場にはサイガもツェベルも何なら、子爵家の使用人もいるけれど誰も何も言わない。貴族同士の会話に入るのはご法度というのが大きいのだけれど、サイガたちの場合は少し違う。まあ、だからきっと子爵家の対応を、そしてシントの対応を見ているのだろう。僕みたいに。
「フルシアに代わって深くお詫び申し上げます」
その空気を破って発言したのは意外にもシシティア嬢。座っていたソファから立ち上がり、深く膝を折ったうえで頭を下げる。もちろんドレスは床についてしまっているけれど、気にしている様子はない。そして妹の様子を見たガルシアン殿も同じようにソファから立ち上がり頭を下げた。そしてそれを無言で見ていたシントは一つため息をつく。二人の肩がおびえたように揺れるのが分かった。
「顔をあげて。
怒っているわけではないんだ。
それに謝罪をするのならば本人も一緒でなければ意味がない。
こうして代わりに謝ってしまっては本人が間違えに気が付けないだろう?」
恐る恐る顔を上げた二人は少し気まずげに顔をそらした。
「し、失礼いたしました。
私が17歳、シシティアが13歳、フルシアが9歳です」
「17歳、ですか?
学園に行く歳では……」
「ああ、上級貴族の方が通われるスターフェ王立学園ならばそうですね。
でも私のような下級貴族の場合は少し事情が違うのですよ。
私が通っている学園はバニエラ学院といって上級貴族の委託領を継ぐものが行くところなのです。
そこは毎日通うわけではないので、本日こうして屋敷にいるのです」
そんなにいろんな学園があるんだ。ずっとスターフェ王立学園行くんだと思っていたからほかの学園のことは全然知らない。
「来年私が入ることになるのはカンボア女学院はご存じですか?」
「カンボア……?」
「ええ、主に下級貴族の令嬢が花嫁修業をするための学院です」
そんなところもあるんだ。
「そういえば、僕の側近のなかにランタナ学院の学生だって言っている人がいるね」
「ああ、ランタナ学院も有名ですね。
あそこは執事などを養成する名門ですから。
でもスターフェ王立学園がやはり最も規模が大きく、名門です」
ほへー。全然知らなかった。そんな話をしているとむすっとした様子になったのはフルシア嬢。あれ? と思っているとすくっと立ち上がった。
「もう、学院の話ばかりしていないで遊びましょうよ!」
「ふ、フルシア!?
申し訳ございません、殿下、アラミレーテ様」
「いや……」
ありゃ、シントは目を丸くしている。まあ僕も結構したけれど。まさか話に割って入ってくるご令嬢がいるとは思わなかった。かわいそうに、上のお二人は顔を真っ青にしている。
「フルシア、謝るんだ!」
語気の強いガルシアン殿に驚いたようにひっ、と涙目になっているけれどこれは同情できないな。シントもフォローすることはできないからどうしよう、とこちらを見てきている。いや、どうしようもないよこれは、と首をふることしかできないけれど。
結局フルシア嬢は侍女に連れられて部屋を出ていきました。最後までなんだかこちらをにらんできたけれど、無視の方向で。だから僕らは気にしていませんよー、と思ってはいるけれど、口にはできない。ガルシアン殿もシシティア殿も顔色を悪くしていらっしゃる。そりゃそうだよね。子爵家の子が、しかも9歳とお披露目の歳の子が僕はともかく王族に失礼を働いたんだもの。
「あ、あの大変申し訳ございませんでした。
フルシアにはきつく言い聞かせておきますので……。
あの子は9歳とはいえ、いまだお披露目を済ませていない身。
ほかの貴族と、上位貴族と接するということがどういう意味か分かっていないのです」
「……、わかっていないと、それで許される話だと?
ならば、無礼を働いた者すべてが許させるだろうね」
おや? ここはきっと大丈夫です、と言って終わるだろうと思っていたんだけれど。珍しいな、とシントのほうを見ると別に怒っているわけではなさそう。まあ、シントの性格ではこのくらいのことでは怒らないだろう。ここはひとまずシントに任せよう。
「お、おっしゃるとおりです……。
あの我々はどうすれば」
その言葉にシントは少し考えるようにする。ちなみにこの場にはサイガもツェベルも何なら、子爵家の使用人もいるけれど誰も何も言わない。貴族同士の会話に入るのはご法度というのが大きいのだけれど、サイガたちの場合は少し違う。まあ、だからきっと子爵家の対応を、そしてシントの対応を見ているのだろう。僕みたいに。
「フルシアに代わって深くお詫び申し上げます」
その空気を破って発言したのは意外にもシシティア嬢。座っていたソファから立ち上がり、深く膝を折ったうえで頭を下げる。もちろんドレスは床についてしまっているけれど、気にしている様子はない。そして妹の様子を見たガルシアン殿も同じようにソファから立ち上がり頭を下げた。そしてそれを無言で見ていたシントは一つため息をつく。二人の肩がおびえたように揺れるのが分かった。
「顔をあげて。
怒っているわけではないんだ。
それに謝罪をするのならば本人も一緒でなければ意味がない。
こうして代わりに謝ってしまっては本人が間違えに気が付けないだろう?」
恐る恐る顔を上げた二人は少し気まずげに顔をそらした。
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