150年後の敵国に転生した大将軍

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4章 視察(上)

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 姉上の婚約問題が解決しないまま、僕は王都を出発することになった。やっぱり姉上は王妃なんて無理、自分はカーボ領で暮らしていたい、という結論になったみたい。それをエキソバート殿下を筆頭にして王族の方々が引き留めている。その関係でなかなか話がまとまらないみたいだ。ちなみにシントは賛成でも反対でもない中立派で、僕たちに対しても申し訳なさそうにしている。

「さて、準備は万端かい?」

「はい!」

「ふふ、いい返事だね」

 この一年で相当慣れてきたらしいダブルク先生は、今はこうして自然に話してくださる。仲良くなれて本当にうれしいです。ダブルク様は本当にやさしくて、まだ子供がいらっしゃらないからか、僕たちのことをとても気にかけてくださる。優しくて頼りになる兄上って感じがする。

「ダブルク様、出発できます」

「ああ、ありがとう。 
 では行ってまいります、シベフェルラ公爵」

「ああ、頼んだ」

 そうしてなかなかの大所帯で王城を出発することになったのだ。


「初めに行く場所のこと、覚えていますか?」

「はい。
 果物が有名なアークレッフェ公爵リキューシア子爵領ですよね」

 僕の言葉にダブルク様がうなずく。よかった、あっていた。

「それにしても果物か。
 実際になっているところは見たことがないんです」

「そうなのですね。
 きっとリキューシア領では今も果物が実っているはずです。
 タイミングが良ければ収穫を手伝えるかもしれませんね」

 果物の収穫! やってみたい。シントと顔を見合わせるとお互いに瞳が輝いていることがわかる。やっぱりなんだか面白そうだよね。
 ちなみに馬車の中では特に瞳の色を変えていない。僕は両目を同じ色にするのに使っているけれど。これはまだ魔力を使い慣れていない僕たちがずっと使っていて、人前に出たときに切れると大変だから、という理由らしい。

「リキューシア領は近いですからね、今日中につきますよ」

「今日は町にも降りるのですか?」

「うーん、まだ決まっていません。
 到着の時間やその他もろもろの兼ね合わせですね」

 町降りてみたいんだよね~、とは口に出せない。ひとまず馬車では極力休むこと。それが僕に対するこの視察の最低条件だった。ちなみにこの馬車だけ特別性だったりする。ソファはふっかふか、幅広タイプでこの小さ目な体では余裕で横になれる。そして豪華にも魔法で温度調整もされている。うーん、本当にすごい。
 まあ、初めて視察に王族が参加するということで張り切ったみたい。僕にとってもありがたい話だけれど。この馬車に乗っているのは僕とシント、ダブルク様とそれぞれの執事だ。まあ、この視察において6人はとっても少ない。そして周りには近衛騎士という最強の守り。もともと護衛の騎士はつく予定だったけれど、近衛騎士が来るのは相当調節があったみたい。といっても3人ととても少人数。

「さあ、アランは今のうちに少し眠っておくといい」

「はい。
 起こしてくださいね?」

 しっかりとうなずくのを確認してから、僕は目を閉じた。今日は朝早かったから眠くなってきていたんだよね。それはシントも同じだったようで、隣でもおやすみなさい、という言葉が聞こえてきた。

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