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七章 学園生活 1-2

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「……ということがありました」

 はい、父様に本日二度目の説明にチェスト先生が仰っていたことを加えて説明いたしました。
 予想通り頭を抱えていらしているお父様。
 お可愛そうに……。

「まあ、いずれはそうなるとわかってはいたんだ。
 わかってはいたが、そうか、このタイミングか……」

「あの、なんだか申し訳ありません」

「いや、いい。
 こちらの方でも、国王に話はしておこう。
 興味を持たれるのはわかっていたことだしな」

「そう、なのですか?」

「ああ。
 まあその話は置いておこう」

 置いておいていい話なのかな?
 まあ、いいか。

「今日、呼んだのはアーネに頼みたいことがあるからだ」

「私に頼みたいことですか?」

「今、アーネから預かっている石があるだろう?
 それを今度持っていきたいんだ。
 あれはまだ魔法陣を込めてはいないが、魔法経路をもっているものにとっては十分に使えるものだ」

「私の魔力が役に立ちますか?」

「ああ、もちろんだ」

「お父様に、託しますね」

「ありがとう」

 やっと、私のこの力が誰かの役に立つのかもしれない。
 それだけでどれほど嬉しいことか……。

「泣いているのか?
 どうした?」

「いえ、なんでもありません。
 すいませんでした」

 いまだに心配そうに父様がこちらを見ているけど、私でも説明できない気持ちだからね。
 ごめんね、父様。

「あと、もう一つ。 
 アーネに礼を言いたくてな」

 礼……? 
 何かしたかな?

「先日、フルトの誕生祭のとき使用人たちにチョコレートを差し入れしてくれただろう?
 皆感謝していたぞ」

「あ、あれはベンネが買ってきてくれたのです!
 私は頼んだだけなので、実質何もしておりません」

「その心遣いが大切なのだ。
 こちらが相手を思いやれば、それは相手にも伝わり思いやりを返そうとする。
 逆に相手を下に見ていれば、相手もこちらのことを下に見、何もなすことはできない。
 今はまだあまりわからないかもしれないが、アーネの人を思いやれる力はいづれお前の力になってくれるだろう。
 これからもその気持ちを大切にしなさい」

 力に……。
 うん、なんとなくそれはわかるかな。 

「はい!」

「いい返事だな。
 もう戻っていいぞ」

「失礼いたしますね」

 お父様に許可をもらって部屋を出ると、ちょうど兄様とすれ違った。
 なんだかいつもより表情が硬い気がするけど、父様に何を頼むつもりなのかな?
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