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六章 フルトの誕生祭

115 フルトの視点

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「やっと、終わった……」
 
 あと少しで日付も変わろうかというころ、ようやくパーティー会場から人が居なくなった。
 
「お疲れさま、フルト。
 立派だったわよ」

「ああ、立派だったな」

「父様、母様。
 ありがとうございます」

 どうして、こんなにも残りたがるんだ、というくらいなかなか人は帰ってくれなかった。
 一応今回の主役である僕が先に帰る、というわけにもいかず結局この時間だ。
 とても疲れた……。
 でも、父様と母様にそう言っていただけるなら頑張ったかいがあったというものだ。

「今日はもう疲れただろう、ゆっくり休みなさい」

「はい!」

 許可をもらって会場を後にすると、ふとよく話題に上がったアーネのことが思い浮かんだ。
 まだ八歳という年齢のため、招待客にはアーネの顔を知らない人も多かったのだろう。
 それにしても、僕にお祝いの言葉を述べた後に揃いもそろってアーネのことを聞いてこなくていいじゃないか!
 確かにアーネは可愛いし、今日のアーネは特に可愛かった。

「何やら荒れてらっしゃいますな、坊ちゃま」

「セバスか。
 はぁ、アーネが変な男に目を付けられないか心配だ」

「やはり、坊ちゃまの心配事はお嬢様のことなのですね。
 本日はどのようなことが?」

 幼いころから僕を見てきたセバスは、きっとこの家で一番僕を理解してくれている。
 話を聞いてもらうのも一番楽なのだ。
 だから、ついたくさんのことを話してしまう。

「パーティに来た者たちがこぞってアーネのことを聞いてくるんだ。
 中には婚約者はいるのか聞いてくるものもいた」

「本日のお嬢様を見られたら、気にならずにはいられないのでしょう。
 奥様が力を入れられていただけはありますな」

「ああ。
 しかし、まだアーネには婚約者はいらない。
 僕にだっていないしな」

「先にお嬢様に婚約者ができるのがお嫌ですか?」

「そうじゃない!
 わかっていて言っているのだろう?」

「これは失礼いたしました。
 しかし、坊ちゃんが心配なさらなくても、旦那様はそう簡単にお決めにはならないでしょう」

 そう、わかってはいるんだ。
 父様だってアーネのことを大切に思っている。
 だが、僕にだって心配する権利はあるはずだ。

 むっとしていると、セバスが苦笑してくる。
 
「本日は大変お疲れでしょう?
 どうぞごゆっくりお休みくださいませ」 

 いつの間にか着いていた僕の部屋の前で、セバスは一礼してそう言ってくる。
 くっ、逃げられた!
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