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九章 初めての夏休み

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「こいつら結構カネ持ってましたよ」

「へぇ、ガキのくせに」

 これはどうしたらいいんだろう……。
 面倒だしさっさとお金を渡しちゃった方がいいのかもしれないな。
 隣を見るとルカさんが顔を青白くさせて震えている。
 やっぱり普段はこんな状況に陥ることがないから、余計に怖いのかもしれない。
 
 私も頭は冷静に考えられているけど、体は勝手に震えてしまう。
 本当にどうしよう。

「おとなしく金を出したら逃がしてやらないこともないけどなぁ」
 
 にやにやと笑いながら、そう言ってくる。
 それにしても、こんな小さい子にもたかるとかどんな奴らよ……。

「あ、アーネさん……」

 涙を目からこぼしそうにしながら、ルカさんはこちらを見てくる。
 やっぱり、お金を渡して早々に逃げた方がよさそう。
 
 そう判断して、かばんに手を伸ばしたときだった。
 目の前で中心と思われる人が飛んでいった。
 ……!?
 
「え……?」

 横からはルカさんの戸惑う声が聞こえてくる。
 私も何が起きたのか理解できていないんだけどな。

「あれ?
 君は確か隊長の?」

 振り返ったその人は私の顔を見るなり、首をかしげる。
 私にとっては知らない人だけど、父様の部下なのかな?

 少しの間こちらを見つめていたが、すぐに反撃してきた相手に応戦する。
 途中少し魔法を使っていたが、5対1という人数差だったのにも関わらず部下であろう人が圧勝していた。

 その間、私とルカさんはポカーンとその戦いを見ていることしかできなかった。
 
「さってと」

 五人の気を失わせた後、どこかに連絡をする。
 そしてこちらを向くと、じっと私たちの顔を見た。

「ああ、やっぱり隊長の娘さんでしょ?
 どうしてここいるんだい?」

「えっと、お父様の部下の方ですか……?
 私は建国祭を見に来たんです」

「オリベルト家のお嬢様もこういうお祭りに来るんだね~。
 そちらの方ももしかして?」
 
 この質問にはなんと返したらいいのかわからずに、思わずルカさんの方を見ると苦笑いしている。
 さすがにここでいうわけにもいかないのだろう。

「まあ、いいや。
 もうすぐ隊長もここに来るはずだから、ちょっと待っててね」

 えっ?
 ここにお父様が来るの?
 それはなんというか気まずい……。

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