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九章 初めての夏休み

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「つ、疲れた……。
 何か飲み物はないかい?」

「兄様?
 何をなさっていたのですか?」

 汗をかいて戻ってきた二人に思わずそう尋ねてしまう。
 三人でお茶を楽しんでいる間に一体何をしていたというのだろうか。

「少しシアンさんと手合わせをしていてね」

「フルトはすごいな!
 俺の方が年上なのに、なかなか勝てなかった」

「いえ……!
 シアンさんが手加減をしてくださったから」

「していないと言っているだろう」

 おお、言い合いが始まってしまった。
 でも休暇にここにきてまで手合わせなんてさすがとしか言いようがない。
 だから汗をかいていたのか。

「ふふっ、シアンが楽しそうで何よりだわ。
 相手をしてくれてありがとう、フルトさん」

 ほほえましそうに叔母様が微笑んでいる。
 普段そういう相手がいないから余計に楽しかったのかな?

 こちらがのんびり話している間に、侍女さんはきちんと飲み物を用意している。
 それもここにはなかったはずのフルーツウォーターだ。
 さすがすぎる!

「ありがとう、いただくよ」

 そういって二人とも注いだ分を一気に飲み干してしまう。
 本当にのどが渇いていたんだな。

「アーネは何をしていたんだい?」
  
 飲み物を飲んで落ち着いたようで、いつの間にか用意されていた椅子に二人はそれぞれ座る。
 そして、今日話したことを兄様に伝えた。
 ひとまずとても楽しかったことは伝わったようだ。

「ヴィートもすっかり慣れたようで良かったよ。
 誰かを泊めたことがないから心配だったんだよ」

「だ、大丈夫です!」

 思いのほか強く言いきったヴィートに二人は少し驚いた視線を向けていた。

「なんだか賑やかだな」

 そこにやってきたのは家主であるハントさん。
 どうやらお仕事が終わったようだ。

「おかえりなさいませ」

「お邪魔しております、叔父様」

「今戻った。
 二人ともよく来たな。
 ゆっくりしていってくれ」

 それだけ言うと叔父様は部屋へと戻ってしまった。

 結局ゆっくりとお茶をしてしまったために、夕飯があまり入らなくなってしまったのは今日一番の反省だ。



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