姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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2章 学園生活

190話 目覚め

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 ふっと意識が浮上する。いつもと違う天井? どうして私はここにいるんだろう。

「ウェルカ様!」

 イルナ?

「お目覚めになってよかったです」

「えっと、ここはどこかしら?」

「ここは王宮です。
 倒れてしまわれたので、こちらに部屋をお借りしていたのです」

 王宮で倒れた? えっと、なんでだっけ。

「覚えておられないのですか?」

 信じられないといった様子で聞いてくるイルナ。まだ頭がうまく回らなくて、それがどうしてかわからない。どうして、イルナはそんな顔をするの?

「お目覚めになられたことを伝えてまいります。
 何か欲しいものはございますか?」

 水はあるし、おなかはすいてない。うん、特にないな。

「大丈夫よ」

「かしこまりました。
 どうぞ横になってお待ちください」

 そういうとイルナは部屋を出ていった。うーん? 本当に思い出せない。何か、とても大事なことがあったはずなんだけれど。


「ウェルカ!
 よかった、目が覚めたのか」

「ヴァーク?
 それにベルク殿下まで……」

 ほっとしたような顔のヴァーク。それと暗い顔をした殿下。どんな組み合わせ何だろう。

「ウェルカ?
 どうしたんだ?」

 どう、って言われても困る。何が何だかわからないのだ。

「あの、どうして私王宮で気を失っていたのでしょうか?」

 疑問をそのまま口にする。すると、え? と固まってしまった。いや、だからどうして?

「覚えていないのか?」

「何をですか?」

 あっ、いや。と言葉を濁されてしまった。さっきから、こう何かを思い出せないような気持ち悪さは感じているのだ。でも何が思い出せないのかがわからない。

「そういえば、お姉様は?」

 2人の方がびくりと跳ねる。あれ、聞いてはまずいことだったかな。でも、気になるし。

「えっと、その……。
 どこまで覚えているんだ?」

「どこまで……。
 えっと、確か熱を出して寝込んで、それでおねえさまが、倒れたって聞いて?」

 そうだ。お姉様が倒れたと聞いて、王宮に来たんだ。それで、必死に治癒して、赤ちゃんを救って、それで……。

「あの、お姉様は?」

 最後ゆっくりと目を閉じたお姉様。嫌な予感がする。それが当たっていないでほしい。でも、その反応ではきっと。

「何が、あったのですか?」

「そう、だな。
 まずことが起こったのは3日前のことだ。
 ウェルカはそこで倒れて、そのまま丸2日眠っていた」

「2日も?
 そうですか」

 それは失態だ。まさかそんなに眠っていたなんて。ひとまず全体を把握したかったので、続きを促す。

「ことの発端はアゼリア様が毒を盛られたことだった。
 いきなりジェラミア様が訪ねてこられたと思ったら、おなかが大きくなり動きずらくなっていたアゼリア様に何かを飲ませたのだ。
 そのままアゼリア様は倒れられ、ジェラミア様は逃亡。 
 その後、ジェラミア様は自ら毒を飲まれて絶命している。
 アゼリア様は、御子をお産みになられた後、そのまま……」

 お姉様に、毒。あのお守りはそういった内側からのものには自動では起動できない。だから毒が一番怖かったのだ。それが自ら盛りに行ったとは。
 守り切れなかった。私が熱で倒れていたばかりに。いつもだったら王宮にいた時間だったのに。

「ありがとう、ウェルカ嬢。
 あなたのおかげで子は救われた。
 自身も万全の状態ではなかったのに」

「赤ちゃんは、元気なのですね」

「ああ。
 乳母であるクルトラ子爵夫人に預けている」

「そう、ですか。
 すみません、一度一人にしてもらってもいいでしょうか」

 よく思考がまとまらない。だから、一人にしてほしかった。ぽつりとお願いすると、心配そうにこちらを見つつも出て行ってくれた。


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