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2章 学園生活
166話 新学年(1)
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無事に学園を卒業したヴァークは、正式に近衛騎士団に入団した。実家からではなく寮に入ったため、なかなか会えるタイミングがないといわれた。
でも、たまには会えるみたいだ。
セイットからは、あちらでのことが忙しくてもう戻れないと書かれた手紙が届いた。そこには、いつでも力になること、そしてセイット自身も神国で婚約者ができたことが書かれていた。
そして私も学年が一つ上がることに。つまり、初等専門部2年に進学した。それは同時に、アンティーナが入学してきたことを示す。まあ、とは言っても学部が違うから会うこともないでしょうけれど。
ちなみにお兄様は初等専門部文官科に合格して、自宅から通うことになっている。学年上後輩になるなんて変な感じだ。
「まあ、クラスはもともと一つですし、何かが変わるわけではありませんよね」
新学年が始まり、いつものように教室へ向かう。そこにはやはりいつものようにエリオベラ様がいた。早速のエリオベラ様の言葉に私はうなずくしかない。
「魔法科は特にそうですよね。
高等専門部になってくると、初等専門部の人に指導することもあるみたいですが、初等専門部のうちはそれもしませんし」
あまり後輩が入ってきたという気がしないのだ。それに私にとっては学年は後輩でも年齢は年上。なんとも微妙な関係だ。
「それよりも!
もうすぐ校外学習がありますね」
「そう、ですね」
校外学習。そう、それがあるのだ。今回は学園のすぐ近くにある森での狩りだが、不安ももちろんある。あまりにもイレギュラーだったことは知っているが、あの時のことを思い出す。
「大丈夫ですか?」
「はい」
それでも多くの人は楽しみにしているのだ。今までの成果をようやく発揮できると考えれば、まあ当たり前ともいえるけれど。あいまいに笑って見せると、エリオベラ様は心配そうにこちらを見てきたけれど、私はそれ以上何も言わなかった。
結局、担任の先生も変わらないまま始業式も終わった。うん本当に何も変わらないね。
授業の内容が少し難しくなって、2年だけでなく3年の授業も一緒に取ることになって学園にいる時間が増えたな、と感じ始めたころ『それ』は突然にやってきた。
「あの、ウェルカ公爵令嬢様、そこに……」
そろそろ帰ろうか、そう思って準備をしていると急に話しかけられた。クラスメイトだと知ってはいるけれど、名前なんだっけな……。
そんなことを考えながら返事をすると、指し示す先には、アンティーナ……?
ここでは決して見ることがない基礎教育部の制服。なるほど、これは確かにかわいい、なんて逃避気味に考えても目の前から彼女はいなくならない。
「なぜ、ここにあなたが?」
「あら、せっかく私から会いに来て差し上げたのにひどいあいさつじゃない。
とってもお会いしたかったわ、お姉様」
お姉様、アンティーナの口からその言葉が紡がれた瞬間悪寒が背筋を這い上がる。ああ、だから嫌なのだ。
「私はもうあなたの姉ではないのだけれど?
それで、なんの用ですか、アンティーナ様?」
あくまでも他人です、という態度を貫く。そうすると、アンティーナはわかりやすくむっとする。相変わらず、なんだね。
「あら、バーセリク侯爵令嬢、どうかしたのですか?」
「エリオベラ……。
いいえ、なんでもありませんわ。
今日はお姉様にあいさつに来ただけですし、もう帰りますわね」
結局、本当に何をしに来たんだっていうくらいアンティーナはあっさりと帰っていった。というか、いくら小さい声とは言えエリオベラ様を呼び捨てにって、ありえない。
「あの方は、本当に理解ができませんね」
「すみません、嫌なものを見せてしまって」
「ウェルカ様のせいではありませんわ」
ああ、やっぱりエリオベラ様はとてもやさしい。もう、アンティーナには会いたくなかったんだけど、な。エリオベラ様のおかげで少し元気になった。
でも、たまには会えるみたいだ。
セイットからは、あちらでのことが忙しくてもう戻れないと書かれた手紙が届いた。そこには、いつでも力になること、そしてセイット自身も神国で婚約者ができたことが書かれていた。
そして私も学年が一つ上がることに。つまり、初等専門部2年に進学した。それは同時に、アンティーナが入学してきたことを示す。まあ、とは言っても学部が違うから会うこともないでしょうけれど。
ちなみにお兄様は初等専門部文官科に合格して、自宅から通うことになっている。学年上後輩になるなんて変な感じだ。
「まあ、クラスはもともと一つですし、何かが変わるわけではありませんよね」
新学年が始まり、いつものように教室へ向かう。そこにはやはりいつものようにエリオベラ様がいた。早速のエリオベラ様の言葉に私はうなずくしかない。
「魔法科は特にそうですよね。
高等専門部になってくると、初等専門部の人に指導することもあるみたいですが、初等専門部のうちはそれもしませんし」
あまり後輩が入ってきたという気がしないのだ。それに私にとっては学年は後輩でも年齢は年上。なんとも微妙な関係だ。
「それよりも!
もうすぐ校外学習がありますね」
「そう、ですね」
校外学習。そう、それがあるのだ。今回は学園のすぐ近くにある森での狩りだが、不安ももちろんある。あまりにもイレギュラーだったことは知っているが、あの時のことを思い出す。
「大丈夫ですか?」
「はい」
それでも多くの人は楽しみにしているのだ。今までの成果をようやく発揮できると考えれば、まあ当たり前ともいえるけれど。あいまいに笑って見せると、エリオベラ様は心配そうにこちらを見てきたけれど、私はそれ以上何も言わなかった。
結局、担任の先生も変わらないまま始業式も終わった。うん本当に何も変わらないね。
授業の内容が少し難しくなって、2年だけでなく3年の授業も一緒に取ることになって学園にいる時間が増えたな、と感じ始めたころ『それ』は突然にやってきた。
「あの、ウェルカ公爵令嬢様、そこに……」
そろそろ帰ろうか、そう思って準備をしていると急に話しかけられた。クラスメイトだと知ってはいるけれど、名前なんだっけな……。
そんなことを考えながら返事をすると、指し示す先には、アンティーナ……?
ここでは決して見ることがない基礎教育部の制服。なるほど、これは確かにかわいい、なんて逃避気味に考えても目の前から彼女はいなくならない。
「なぜ、ここにあなたが?」
「あら、せっかく私から会いに来て差し上げたのにひどいあいさつじゃない。
とってもお会いしたかったわ、お姉様」
お姉様、アンティーナの口からその言葉が紡がれた瞬間悪寒が背筋を這い上がる。ああ、だから嫌なのだ。
「私はもうあなたの姉ではないのだけれど?
それで、なんの用ですか、アンティーナ様?」
あくまでも他人です、という態度を貫く。そうすると、アンティーナはわかりやすくむっとする。相変わらず、なんだね。
「あら、バーセリク侯爵令嬢、どうかしたのですか?」
「エリオベラ……。
いいえ、なんでもありませんわ。
今日はお姉様にあいさつに来ただけですし、もう帰りますわね」
結局、本当に何をしに来たんだっていうくらいアンティーナはあっさりと帰っていった。というか、いくら小さい声とは言えエリオベラ様を呼び捨てにって、ありえない。
「あの方は、本当に理解ができませんね」
「すみません、嫌なものを見せてしまって」
「ウェルカ様のせいではありませんわ」
ああ、やっぱりエリオベラ様はとてもやさしい。もう、アンティーナには会いたくなかったんだけど、な。エリオベラ様のおかげで少し元気になった。
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