姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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2章 学園生活

149話 婚約(3)

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 無事にやりきった、と詰めていた息を吐きだした。なんとかミスせずに終わったようだ。

「おめでとう、二人とも。
 しかと見届けた」

「ありがとうございます、父上。
 ウェルカ嬢、もしよければそれをつけてみてくれないでしょうか。
 合わないようだったらすぐに何とかしましょう」

  合わないからってすぐには何とかできないでしょう、そう思いながらもうなずく。少し緊張しながらも箱を開けると、そこに入っていたのはネックレスだった。そこには私の瞳の色である若草色をした石をヴァーレクト様の髪の色である黒い装飾できれいに飾られていた。光を受けて周りの装飾とともに輝くそれはきっと確かな技術を持った人が作り上げたのであろうことが簡単にわかった。

「きれい……」

「それはよかったです。
 つけてあげます」

 言われて、ヴァーレクト様にネックレスを渡すと、すぐにつけてくれた。こんな素敵なものをいただいて、私が渡したのは自分で刺繍したハンカチ……。それがよくあるものとは言えなんだか申し訳ない気持ちになってしまった。

「ウェルカ嬢のものも開けてみていいでしょうか?」

 いやだ、と言いたい気持ちを我慢して私はうなずいた。こんな素敵なものを見せられた後で、まさかのあれを見られるのか。
 どきどきとしながらヴァーレクト様が包みを開けていくのを見つめる。自信作だったけど、一気にその自信はなくなった。

「これは、すごいですね……。
 ウェルカ嬢が自分で刺繍を?」

 何を当たり前のことを、とひとまずうなずく。

「このような素敵なものをいただけるとは思いませんでした。
 ありがとうございます」

 その言葉に、ついうつむいていた顔を上げる。ヴァーレクト様は優しい笑みを浮かべて、私が刺繍したハンカチを見ていた。
 その様子に何も言えなくなる。なんだか、こう恥ずかしい。

「大切に使わせていただきます」

 私はやっとのことで、はい、と返した。ふとこの場にはお父様方がいらっしゃるのを思い出し、そちらの方の様子を見てみた。すると、アクバルディア公爵様はニヤニヤといった様子でこちらを見ている。だからやめてほしいんだって! 
 そこからお父様に視線を移す。どうかお父様はせめて普通にこちらを見ていてくれ、いっそ見ていないでくれ、と思っていると、予想外の反応をしていた。なんだか、ほっとしたような顔をしていたのだ。
 今のやり取りのどこにそんな要素が、とついそちらを見ているとふいにお父様と視線が合った。

「どうかしたか、ウェルカ?」

「い、いえ。
 なんでもないです」

 そうか? と首をひねられるも、さすがにこの場でその理由を聞くことはできなかった。


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