姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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2章 学園生活

142話 婚約話(1)

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「さて、ウェルカ。
 疲れているところ悪いのだが、少し話をしてもいいか?」

「はい」

 どこか気まずげなお父様の様子に首を傾げつつも、特に用事があるわけではない私は素直にうなずいた。なんとなく、ヴァーレクト様に関係があることだと思うけれど。

 私たちは無言のまま元の応接室へと戻ってきた。

「それで、だな。
 話というのはヴァーレクト殿のことなのだが……」

 やっぱり、そう思いつつも無言でその先を促すとお父様はいまだに迷っているように口をつぐんでしまった。こうなると、いっそ早く知りたくなってくるのだが。

「お父様?」

 早くいってくれとばかりに、お父様に呼びかけるとようやくお父様は口を開いてくれた。

「彼を、ウェルカの婚約者にどうかと、そう考えているんだ。
 もう相手方からの了承は得ている。
 あとはウェルカの気持ち次第だ」

 えーっと、少し待ってほしい。ヴァーレクト様を私の婚約者に? 
彼は近衛騎士団に所属している。通常はじめ、騎士は全員騎士団に所属する。そして16歳の初等専門部卒業時に選ばれた人が近衛騎士団の見習いに配属されるのだ。
 つまり、彼とは少なくとも6歳以上離れている。ありえない年齢ではない。でも、そっか。
 何よりも、真っ先に頭に浮かんだのはセイットのことだった。

「ウェルカが嫌ならば、もちろん断ってもいい。
 だが、ウェルカにとってもヴァーレクト殿にとっても、きっとこれ以上の相手はいないだろう。
 少し考えてみてくれ」

 そこまで言うと、もう下がっていい、という。私としてもいったん落ち着きたかったため、ありがたく部屋へとさがることにした。

「セイットに、会えるかしら」

 自分の部屋に下がり、一息つく。そうすると、自然とそんな言葉が漏れていた。ヴァーレクト様の顔が思い浮かんで、そしてセイットの顔が思い浮かんだ。セイットのことが好きかといえば、よくわからない。やっぱり師匠や兄といった言葉のほうがしっくりくる。
 ヴァーレクト様についてもそうだ。とてもかっこよくて、物腰が柔らかな人だとは思った。でも、好きかどうかよくわからない。
 それならば、お父様がこれ以上いない相手と言っているヴァーレクト様のほうがいいのではないか?
 でも、それはセイットのことをないがしろにしている気がする。今までずっと支えてくれていたのは確かなのだ。

「お嬢様、セイット様にお会いになられますか?」

 もんもんと考えていると、ルナベレークからそんな言葉がかかる。そうだ、今を逃すとセイットに次会えるのはいつになるかわからない。なら、会いたい。すぐに心は決まった。
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