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2章 学園生活
136話 領民へのお披露目(2)
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更新遅くなりました……!
後半別視点での話になります。
ーーーーーーーーーーーーーー
バルコニーに出ると、ざわめきにふさわしい人数がいた。ううう、人がいっぱい……。
周りがにこやかに手を振っているのを見て、私も慌てて手を振り出す。それに観衆がわっとわく。皆とても嬉しそうにこちらを見ている。良かった、拒否はされていないみたい。
「みな、よく集まってくれた!
今日は我が娘としてチェルビース家に迎えた、ウェルカのお披露目を行いたいと思う」
そっと背を押され、一歩前にでる。いつの間にかあんなにも騒がしかった人々がしん、と静まっている。
どきどきと心臓の音が聞こえてくる。
「みなさま、始めまして。
ウェルカ・ゼリベ・チェルビース申します。
よろしくお願い致します」
そうして一礼。よし、かむことも転ぶこともなく挨拶できた! 挨拶できた満足感に満面の笑みで顔をあげると途端に歓声があがった。
「よろしく、ウェルカ様!」
「よろしくー!」
歓迎を示してくれている領民たち。
「アリストリア様そっくりだ」
そんな声も聞こえてくる。
うけ、いれてもらえた? 私はチェルビース家の者として、この領地で暮らす人々に、チェルビース家を支えてくれている人々に受け入れてもらえたんだろうか。
不安になってちらりとお母様の方を見上げると優しくこちらを見てくれていた。そして一つうなずいてくれる。
知らず、涙がこぼれた。あちらではそもそもお披露目なんてやっていない。だから、こうして領民の顔を見ることもなかった。
違いがいっぱいあって、自分の常識も変わっていく。
うん、今は間違えなく幸せだ。
「ど、どうした、ウェルカ!?」
「なんでもないんです」
慌てた様子のお兄様の様子がおかしくて、思わずくすくすと笑ってしまった。
「そろそろ中に入ろうか」
「はい」
このバルコニーに立てたのはわずかな時間ではあったが、それでもとても大切な時間だった。
ーーーーーーー
「あれが、ウェルカ嬢か」
「はい、ヴァーレクト様」
「まあ、お茶会で会えるのを楽しみにしていようか」
「気に入ったのですか?
お顔がゆるんでいらっしゃいす」
「お前な……。
まあ、思っていたよりもいい相手を紹介しもらえたみたいだ」
「それはようございました。
あなた様に拒否する権利はないのですから」
「そんなことはないだろう。
いっそ結婚しないという手がある」
「周りの方々は本当に放っておいてくれると?
幻想は抱かない方は御身のためですよ」
はぁ、と一つため息をつく。そうだ。あの面倒な人たちはきっと放っておいてくれない。余計な迷惑だと言うのに。
もう一度ウェルカ嬢の方をみる。先ほどまでひどく緊張した様子で民衆をみていた彼女は、打って変わって涙を流しながらほころんだ笑顔を見せていた。
何がそんなに嬉しいのだろうか。理由は分からなかったが、ひどく悔しいような、もっと笑顔を見ていたいようなそんなよくわからない気持ちになってしまった。
後半別視点での話になります。
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バルコニーに出ると、ざわめきにふさわしい人数がいた。ううう、人がいっぱい……。
周りがにこやかに手を振っているのを見て、私も慌てて手を振り出す。それに観衆がわっとわく。皆とても嬉しそうにこちらを見ている。良かった、拒否はされていないみたい。
「みな、よく集まってくれた!
今日は我が娘としてチェルビース家に迎えた、ウェルカのお披露目を行いたいと思う」
そっと背を押され、一歩前にでる。いつの間にかあんなにも騒がしかった人々がしん、と静まっている。
どきどきと心臓の音が聞こえてくる。
「みなさま、始めまして。
ウェルカ・ゼリベ・チェルビース申します。
よろしくお願い致します」
そうして一礼。よし、かむことも転ぶこともなく挨拶できた! 挨拶できた満足感に満面の笑みで顔をあげると途端に歓声があがった。
「よろしく、ウェルカ様!」
「よろしくー!」
歓迎を示してくれている領民たち。
「アリストリア様そっくりだ」
そんな声も聞こえてくる。
うけ、いれてもらえた? 私はチェルビース家の者として、この領地で暮らす人々に、チェルビース家を支えてくれている人々に受け入れてもらえたんだろうか。
不安になってちらりとお母様の方を見上げると優しくこちらを見てくれていた。そして一つうなずいてくれる。
知らず、涙がこぼれた。あちらではそもそもお披露目なんてやっていない。だから、こうして領民の顔を見ることもなかった。
違いがいっぱいあって、自分の常識も変わっていく。
うん、今は間違えなく幸せだ。
「ど、どうした、ウェルカ!?」
「なんでもないんです」
慌てた様子のお兄様の様子がおかしくて、思わずくすくすと笑ってしまった。
「そろそろ中に入ろうか」
「はい」
このバルコニーに立てたのはわずかな時間ではあったが、それでもとても大切な時間だった。
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「あれが、ウェルカ嬢か」
「はい、ヴァーレクト様」
「まあ、お茶会で会えるのを楽しみにしていようか」
「気に入ったのですか?
お顔がゆるんでいらっしゃいす」
「お前な……。
まあ、思っていたよりもいい相手を紹介しもらえたみたいだ」
「それはようございました。
あなた様に拒否する権利はないのですから」
「そんなことはないだろう。
いっそ結婚しないという手がある」
「周りの方々は本当に放っておいてくれると?
幻想は抱かない方は御身のためですよ」
はぁ、と一つため息をつく。そうだ。あの面倒な人たちはきっと放っておいてくれない。余計な迷惑だと言うのに。
もう一度ウェルカ嬢の方をみる。先ほどまでひどく緊張した様子で民衆をみていた彼女は、打って変わって涙を流しながらほころんだ笑顔を見せていた。
何がそんなに嬉しいのだろうか。理由は分からなかったが、ひどく悔しいような、もっと笑顔を見ていたいようなそんなよくわからない気持ちになってしまった。
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