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2章 学園生活
113話 心配(2)
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「申し訳ございません。
お待たせしてしまいましたね」
「気にしないでください。
あまり待っていませんから」
そうですか? というとそのまま向かいの席に座るかと思ったエリオベラ様は座ることなくそれで、と話を切り出した。
「私の部屋でお茶にしませんか?
珍しいものが実家から送られてきましたの」
お部屋……。どうしようかとイルナの方に視線を向けると少し困った顔をされてしまった。まあ、急に頼られても困りますよね。
「あの、ご迷惑ではありませんか?」
「私からお誘いしているのですよ」
おかしなことを言うのね、とふふっとほほ笑む顔を見ると迷惑とは思われていないみたいと安心できた。
「では、お言葉に甘えます。
よろしくお願いいたします」
そしてエリオベラ様に連れられて部屋に入ると、私の部屋との雰囲気の差に思わず足を止めてしまった。作り自体はおそらく一緒だが、必要最低限なものしか入れていないし、装飾もしていない私の部屋はいたってシンプルだ。さすがに自分でお金を稼げない上に、ここの高額な学費を払ってもらっているので最低限以上を頼むのは申し訳ないし……。
「ウェルカ様?
どうぞ入って?」
いつまでも中に入らない私を不思議そうに見ながら、そう声をかけられてしまった。謝って慌てて中に入る。決して派手な色ではなく、目に優しい色のピンクだ。これだけでもエリオベラ様の趣味の良さがわかる気がする。
「さあさあ、座ってください。
今持ってきてもらいますから」
何を? と聞く間もなく、机に見たことがないものが運ばれてきた。すぐ横にフォークが置かれているし、いい香りがしてくるから食べ物なのは間違いなさそう。そして紅茶を入れてもらうと、まずは食べてみてくださいと勧められた。
勧められたままに一口含むとほのかな酸味と上品な甘さが口の中に広がっていった。それにこれは何の甘さだろう? 初めて食べるし、しつこくない甘さでとてもいい。
「とても、おいしいです」
「そうでしょう!
これはね、隣国でとれる実を使っていて、砂糖を入れなくても十分な甘さがあるんですって。
それを特別に煮てつぶしたものを生地に混ぜ込んだみたいで」
興奮したように目をきらめかせたエリオベラ様にびっくりしてしまう。初めて見たかもしれない。私が思っていたよりも甘いものが好きなのかな。
おお、となっていると私の反応に気づいたエリオベラ様が滑らかに動いていた口が急に止まった。そして顔も真っ赤になってしまう。
「申し訳ございません」
消え入りそうな声でそう謝られてしまった。気にしてない、ということを示すとエリオベラ様がほっとした表情を浮かべた。
お待たせしてしまいましたね」
「気にしないでください。
あまり待っていませんから」
そうですか? というとそのまま向かいの席に座るかと思ったエリオベラ様は座ることなくそれで、と話を切り出した。
「私の部屋でお茶にしませんか?
珍しいものが実家から送られてきましたの」
お部屋……。どうしようかとイルナの方に視線を向けると少し困った顔をされてしまった。まあ、急に頼られても困りますよね。
「あの、ご迷惑ではありませんか?」
「私からお誘いしているのですよ」
おかしなことを言うのね、とふふっとほほ笑む顔を見ると迷惑とは思われていないみたいと安心できた。
「では、お言葉に甘えます。
よろしくお願いいたします」
そしてエリオベラ様に連れられて部屋に入ると、私の部屋との雰囲気の差に思わず足を止めてしまった。作り自体はおそらく一緒だが、必要最低限なものしか入れていないし、装飾もしていない私の部屋はいたってシンプルだ。さすがに自分でお金を稼げない上に、ここの高額な学費を払ってもらっているので最低限以上を頼むのは申し訳ないし……。
「ウェルカ様?
どうぞ入って?」
いつまでも中に入らない私を不思議そうに見ながら、そう声をかけられてしまった。謝って慌てて中に入る。決して派手な色ではなく、目に優しい色のピンクだ。これだけでもエリオベラ様の趣味の良さがわかる気がする。
「さあさあ、座ってください。
今持ってきてもらいますから」
何を? と聞く間もなく、机に見たことがないものが運ばれてきた。すぐ横にフォークが置かれているし、いい香りがしてくるから食べ物なのは間違いなさそう。そして紅茶を入れてもらうと、まずは食べてみてくださいと勧められた。
勧められたままに一口含むとほのかな酸味と上品な甘さが口の中に広がっていった。それにこれは何の甘さだろう? 初めて食べるし、しつこくない甘さでとてもいい。
「とても、おいしいです」
「そうでしょう!
これはね、隣国でとれる実を使っていて、砂糖を入れなくても十分な甘さがあるんですって。
それを特別に煮てつぶしたものを生地に混ぜ込んだみたいで」
興奮したように目をきらめかせたエリオベラ様にびっくりしてしまう。初めて見たかもしれない。私が思っていたよりも甘いものが好きなのかな。
おお、となっていると私の反応に気づいたエリオベラ様が滑らかに動いていた口が急に止まった。そして顔も真っ赤になってしまう。
「申し訳ございません」
消え入りそうな声でそう謝られてしまった。気にしてない、ということを示すとエリオベラ様がほっとした表情を浮かべた。
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