上 下
94 / 193
2章 学園生活

94話 校外学習(11)

しおりを挟む

 部屋を出て、今日入ってきたところへと向かう。そこではなんだか先ほどよりも多くの人が寝ているように感じた。そしてそんな人たちを治療して回っているのは先ほどとは違う女性、それに男性もいた。

「あの、すみません」

 突然声をかけてしまったからだろうか、その女性はびくりと方を揺らしてこちらを振り返る。この人もなんだか顔色が悪かった。

「何か、御用でしょうか」

「新しい包帯、あとは薬はないでしょうか?」

「包帯はこちらに。
 薬は圧倒的に足りていませんのでこちらでは使用していません」

  てきぱきと必要なことを伝え、新しい包帯を渡されるとそこでふと顔をあげる。そして、改めて私という人間を認識した様だった。

「制服? 
 それにずいぶんと幼いような……」

 ポツリとつぶやかれたそれはおそらく独り言で、きっと返事をしなくても大丈夫でしょう! うん。ということで包帯をもらうと私はお礼を言い先ほどの部屋まで急ぐことにした。

「包帯、もらってきました。
 薬も聞いてみたのですが、こちらにはないようです」

 部屋に入りつつそう言うとセイットは黙々と治癒魔法をかけていた。布団をはがされている患者の中には腕や足を失っている人もいて、私は思わず息をのんで固まってしまった。

「ああ、ありがとうございます。
 そうですね、この方より先の患者の治癒をお願いできますか?
 私は包帯を変えていきますので」

 セイットに声をかけられてはっとする。いつの間にはセイットは近くに来ていて包帯が入ったかごを受け取っていた。

「やってみます」

 それだけを何とか返すとさっそく患者のそばへ行く。そして布団をはがしけがの個所を探すとそこに向かって治癒魔法をかけていく。ケガに関して何も考えないようにしながらも必死に治癒をかけていくと、あっという間に全員分が終わっていた。

 終わったことを伝えようとセイットの元に行くと、セイットはまだ3人目の患者の包帯を変えているところだった。この人の包帯変えが終わったら声をかけよう、そう思ってその様子を見ているとセイットの手元がずっと淡く光っているのが見えた。治癒魔法をかけ続けているということ?

 けがの個所に淡く治癒魔法をかけながらセイットは包帯を丁寧にはがしていく。そして下に布を挟むとその上から水をかけていた。治癒魔法をかけながらだからか、患者はかすかにうめく程度で暴れることはしなかった。そのあとは傷口の水分を飛ばすと新しい包帯を巻いていた。これは大変だ……。

「セイット、こちらは終わりましたが手伝いましょうか?」

「早かったですね。
 そうですね、お願いします。 
 私は治癒魔法をかけているので、包帯をはがすのをお願いします」

 そうしてセイットの指示に従いながら、恐る恐る包帯を変えていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください。 そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。 政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。 しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。 それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。 よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。 泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。 もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。 全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。 そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

(完結)戦死したはずの愛しい婚約者が妻子を連れて戻って来ました。

青空一夏
恋愛
私は侯爵家の嫡男と婚約していた。でもこれは私が望んだことではなく、彼の方からの猛アタックだった。それでも私は彼と一緒にいるうちに彼を深く愛するようになった。 彼は戦地に赴きそこで戦死の通知が届き・・・・・・ これは死んだはずの婚約者が妻子を連れて戻って来たというお話。記憶喪失もの。ざまぁ、異世界中世ヨーロッパ風、ところどころ現代的表現ありのゆるふわ設定物語です。 おそらく5話程度のショートショートになる予定です。→すみません、短編に変更。5話で終われなさそうです。

処理中です...