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2章 学園生活
69話 訪問(2)
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そんなお姉様に、私はもう一つの聞きたいことを聞いてしまおうと再び口を開いた。
「では、もう一つ。
昨日アーサベルス殿下がお姉様とベルク殿下にいろいろとあったとおっしゃっていたのですが、何があったのですか?」
ちらり、とお姉様の方を見るとまた固まっていた。え、もしかしてこれも聞いてはいけないことだった?
そのままお姉様を見ていると、うーん、と何やら悩み始めてしまう。どうしよう、完全なる興味本位だったからそんなに悩むのなら聞かなくても……。
「そう、ね。
今は言えないかしら。
ウェルカがもっと大きくなって、恋愛をして、それから話したいわね。
褒められたものではないから」
気まずそうに視線をそらしたままお姉様はそう言うと、ごめんなさいね、と小さく謝った。
「い、いえ。
では聞かせてもらえる時までお待ちしております」
ありがとう、と言うとお姉様は笑う。でも、なんとなく気まずそうな、そんな笑顔だった。
そのままお姉様と他愛のない話をしつつ、おいしいお茶やお菓子を楽しんでいるとベスが急にお姉様に訪問者を告げに来た。昨日約束して急に訪れてしまったから、邪魔してしまったかな。
「あの、ウェルカ?
そのベルクがあなたに会いたいと言っているのだけれど、大丈夫かしら?」
「私に、ですか?」
訪問者がベルク殿下ということもだけれど、私に用事があるということにはもっと驚いた。なんだろう?
「もちろん大丈夫ですが……」
もとより私に断るという選択肢はないけれど、聞いてくれたのは優しさだろうな。少しすると、ベルク殿下がやってきた。
「姉妹水入らずのところすまないね。
せっかくウェルカが来ているといるから昨日のお礼を言いたいと思ったんだ」
「お礼だなんて!
こちらこそ招いていただきありがとうございました。
初めて結婚式に出ましたが、とても綺麗でした!」
「ありがとう。
もらった花も活けているのよ」
お姉様が示す方を見ると確かに昨日私とお母様が渡した花、そして殿下がいただいていた花が活けられていた。
「何か、不自由はしていないか?
スキップで学園に通っていたら何かと大変ではないか」
「そんなことありませんよ。
今はほとんど授業がないので、むしろ暇をしています」
「そうか、さすがだな」
そう言って、殿下が柔らかに微笑まれる。もともと顔がいいから、そういう顔をされると、こう、なんだか顔がほてると言いますか……。
「どうしました?」
「いいえ、なんでもありません」
「アーサベルスが、残念がっていたよ。
君が入学してくるのを楽しみにしていたようだからね。
アーサベルスは女性が苦手だから驚いたよ」
殿下が? でもなんでだろう。そして確信はしていたけれど、女性苦手なのね。
「それはなんだか申し訳ないことをしたような?」
「まあ、会ったら挨拶くらいはしてあげて」
「は、はい」
といっても校舎が違うから会うことは基本的にはないんだよね。食堂は一緒のところもあるみたいだけれど。
「いろいろとあるかもしれないけれど、楽しんでね。
それと、いつでもここに遊びにしていいから」
「ああ、衛兵にはこちらから言っておくから」
「ありがとうございます!」
王宮に入ってしまったからには、お姉様と会うのはなかなか難しいと思っていたからそれはなかなか嬉しいな。ぜひまたお姉様とはお茶をしたい。
「では、またな」
そう言って殿下はすぐに去っていってしまった。本当にお忙しそうだ。
殿下をお姉様と見送るとそろそろ帰らなければいけない時間になってしまった。もう少しお姉様と話していたかったからなんだか寂しい気持になるけれど、お姉様もお忙しいよね。
「……、もうそろそろ帰りますね」
「ええ。
また来てね」
「はい」
今度はお姉様に見送られつつ、寮へと帰寮した。
「では、もう一つ。
昨日アーサベルス殿下がお姉様とベルク殿下にいろいろとあったとおっしゃっていたのですが、何があったのですか?」
ちらり、とお姉様の方を見るとまた固まっていた。え、もしかしてこれも聞いてはいけないことだった?
そのままお姉様を見ていると、うーん、と何やら悩み始めてしまう。どうしよう、完全なる興味本位だったからそんなに悩むのなら聞かなくても……。
「そう、ね。
今は言えないかしら。
ウェルカがもっと大きくなって、恋愛をして、それから話したいわね。
褒められたものではないから」
気まずそうに視線をそらしたままお姉様はそう言うと、ごめんなさいね、と小さく謝った。
「い、いえ。
では聞かせてもらえる時までお待ちしております」
ありがとう、と言うとお姉様は笑う。でも、なんとなく気まずそうな、そんな笑顔だった。
そのままお姉様と他愛のない話をしつつ、おいしいお茶やお菓子を楽しんでいるとベスが急にお姉様に訪問者を告げに来た。昨日約束して急に訪れてしまったから、邪魔してしまったかな。
「あの、ウェルカ?
そのベルクがあなたに会いたいと言っているのだけれど、大丈夫かしら?」
「私に、ですか?」
訪問者がベルク殿下ということもだけれど、私に用事があるということにはもっと驚いた。なんだろう?
「もちろん大丈夫ですが……」
もとより私に断るという選択肢はないけれど、聞いてくれたのは優しさだろうな。少しすると、ベルク殿下がやってきた。
「姉妹水入らずのところすまないね。
せっかくウェルカが来ているといるから昨日のお礼を言いたいと思ったんだ」
「お礼だなんて!
こちらこそ招いていただきありがとうございました。
初めて結婚式に出ましたが、とても綺麗でした!」
「ありがとう。
もらった花も活けているのよ」
お姉様が示す方を見ると確かに昨日私とお母様が渡した花、そして殿下がいただいていた花が活けられていた。
「何か、不自由はしていないか?
スキップで学園に通っていたら何かと大変ではないか」
「そんなことありませんよ。
今はほとんど授業がないので、むしろ暇をしています」
「そうか、さすがだな」
そう言って、殿下が柔らかに微笑まれる。もともと顔がいいから、そういう顔をされると、こう、なんだか顔がほてると言いますか……。
「どうしました?」
「いいえ、なんでもありません」
「アーサベルスが、残念がっていたよ。
君が入学してくるのを楽しみにしていたようだからね。
アーサベルスは女性が苦手だから驚いたよ」
殿下が? でもなんでだろう。そして確信はしていたけれど、女性苦手なのね。
「それはなんだか申し訳ないことをしたような?」
「まあ、会ったら挨拶くらいはしてあげて」
「は、はい」
といっても校舎が違うから会うことは基本的にはないんだよね。食堂は一緒のところもあるみたいだけれど。
「いろいろとあるかもしれないけれど、楽しんでね。
それと、いつでもここに遊びにしていいから」
「ああ、衛兵にはこちらから言っておくから」
「ありがとうございます!」
王宮に入ってしまったからには、お姉様と会うのはなかなか難しいと思っていたからそれはなかなか嬉しいな。ぜひまたお姉様とはお茶をしたい。
「では、またな」
そう言って殿下はすぐに去っていってしまった。本当にお忙しそうだ。
殿下をお姉様と見送るとそろそろ帰らなければいけない時間になってしまった。もう少しお姉様と話していたかったからなんだか寂しい気持になるけれど、お姉様もお忙しいよね。
「……、もうそろそろ帰りますね」
「ええ。
また来てね」
「はい」
今度はお姉様に見送られつつ、寮へと帰寮した。
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