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1章 変わる日常
42話 お買い物(2)
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「ようこそいらっしゃいました。
お嬢様はこちら、お坊ちゃまはこちらへどうぞ」
キリキリとした女性店員が出迎えてくれたと思ったら、すぐにセイットと左右に分かれとある部屋に連れていかれた。大きな鏡が置かれている。
「初めにこちらを来てください。
針も使いますので、なるべく動かないようにお願いいたします」
それだけ言うとすぐに手に持っていた制服を着せられる。このお店は以前も利用したことがあるから事前にある程度服の調整をしているのかな?
「うーん、もう少し詰める?」
「でもウェルカ様は成長期ですし、少し大きくてもいいんじゃないかしら?」
「そうね、この長さでもバランスが取れているし、いいんじゃないかしら?」
「そうね、じゃあ後は少しここを調整してっと」
制服を着せられて、まじまじと見られています。軽くダボっとしているところにまち針を刺したり、スカートの丈を見たりしている。なんだか恥ずかしい……。
「はい、これで大丈夫です。
それではこちらの方で少々お待ちください」
確認が終わったかと思うと、お茶などがいつの間にか用意されている席の方を勧めてすぐにいなくなってしまった。い、忙しそう。
「ウェルカ様、お疲れ様です。
どうぞこちらを」
「ありがとう、イルナ。
それにしてもすごいわね……」
「彼女らも毎年この怒涛の時期を乗り切っているようですし、慣れてはいるのかもしれませんね」
「お待たせいたしました。
次はこちらの方をお召しになってください」
もう⁉ 本当に一瞬だった。女性の手には別の服があるし。
あれよあれよと服を整えられていき、最後の方はぼーっとしているだけで終わってくれました。店員の迫力がすごかったですね、はい。
「お疲れさまでした。
こちら制服になります」
「ありがとうございます」
セイットはすでに終わっていたようで私の制服を受け取ると、すぐにお店を後にした。本当に忙しいようで、お店の方々はすぐに別のお客さんの対応に追われていた。
「さて、どこに行きましょうか」
「まずは文具をそろえてしまいませんか?」
「では、行きましょうか」
一つ一つ、必要なものを確認しながらお店を巡っていく。こうやって自分で歩きながらお買い物をするのが初めてだったけれど、とても楽しい!
多くのものから一番気に入ったものを探し出すのがこんなにも楽しいなんで思わなかった。
「ウェルカ、君はとても楽しそうですね……。
僕はもう疲れてしまいました」
ようやくすべての買い物が終わったころセイットはぼそりと愚痴をこぼす。私は楽しかったけれど、セイットはそうではなかったみたい。ちょっと申し訳なかったかも。
「そろそろ帰りましょうか?」
ええ、と全力でうなずかれてしまったのでおとなしく馬車へと戻ることにした。ずっと護衛に騎士様たちがいてくれたけれど、何も起きずに済んでよかった。今、というか今後ももうあの方たちには2度と会いたくない。
「ウェルカ?
怖い顔をしてどうしたのですか?」
「いえ、なんでもありません。
帰りましょう!」
今が幸せだ。今日、初めて外で買い物ができたことがとても楽しかった。それがどれほどの贅沢なのか、あの方たちを思い出すたびに実感してしまうな。
そうして馬車に乗り込もうとした、その時だった。女性の悲鳴が聞こえてきたのだ。
お嬢様はこちら、お坊ちゃまはこちらへどうぞ」
キリキリとした女性店員が出迎えてくれたと思ったら、すぐにセイットと左右に分かれとある部屋に連れていかれた。大きな鏡が置かれている。
「初めにこちらを来てください。
針も使いますので、なるべく動かないようにお願いいたします」
それだけ言うとすぐに手に持っていた制服を着せられる。このお店は以前も利用したことがあるから事前にある程度服の調整をしているのかな?
「うーん、もう少し詰める?」
「でもウェルカ様は成長期ですし、少し大きくてもいいんじゃないかしら?」
「そうね、この長さでもバランスが取れているし、いいんじゃないかしら?」
「そうね、じゃあ後は少しここを調整してっと」
制服を着せられて、まじまじと見られています。軽くダボっとしているところにまち針を刺したり、スカートの丈を見たりしている。なんだか恥ずかしい……。
「はい、これで大丈夫です。
それではこちらの方で少々お待ちください」
確認が終わったかと思うと、お茶などがいつの間にか用意されている席の方を勧めてすぐにいなくなってしまった。い、忙しそう。
「ウェルカ様、お疲れ様です。
どうぞこちらを」
「ありがとう、イルナ。
それにしてもすごいわね……」
「彼女らも毎年この怒涛の時期を乗り切っているようですし、慣れてはいるのかもしれませんね」
「お待たせいたしました。
次はこちらの方をお召しになってください」
もう⁉ 本当に一瞬だった。女性の手には別の服があるし。
あれよあれよと服を整えられていき、最後の方はぼーっとしているだけで終わってくれました。店員の迫力がすごかったですね、はい。
「お疲れさまでした。
こちら制服になります」
「ありがとうございます」
セイットはすでに終わっていたようで私の制服を受け取ると、すぐにお店を後にした。本当に忙しいようで、お店の方々はすぐに別のお客さんの対応に追われていた。
「さて、どこに行きましょうか」
「まずは文具をそろえてしまいませんか?」
「では、行きましょうか」
一つ一つ、必要なものを確認しながらお店を巡っていく。こうやって自分で歩きながらお買い物をするのが初めてだったけれど、とても楽しい!
多くのものから一番気に入ったものを探し出すのがこんなにも楽しいなんで思わなかった。
「ウェルカ、君はとても楽しそうですね……。
僕はもう疲れてしまいました」
ようやくすべての買い物が終わったころセイットはぼそりと愚痴をこぼす。私は楽しかったけれど、セイットはそうではなかったみたい。ちょっと申し訳なかったかも。
「そろそろ帰りましょうか?」
ええ、と全力でうなずかれてしまったのでおとなしく馬車へと戻ることにした。ずっと護衛に騎士様たちがいてくれたけれど、何も起きずに済んでよかった。今、というか今後ももうあの方たちには2度と会いたくない。
「ウェルカ?
怖い顔をしてどうしたのですか?」
「いえ、なんでもありません。
帰りましょう!」
今が幸せだ。今日、初めて外で買い物ができたことがとても楽しかった。それがどれほどの贅沢なのか、あの方たちを思い出すたびに実感してしまうな。
そうして馬車に乗り込もうとした、その時だった。女性の悲鳴が聞こえてきたのだ。
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