37 / 193
1章 変わる日常
37話 入学試験(2)
しおりを挟む
「ウェルカ・ゼリベ・チェルビース様ですね。
こちらの試験会場へどうぞ」
あれ? ほとんどの人が違う方向へ向かっていくけれど、私はこっちでいいの?
不安になりながらも案内をしてくれるという女生徒の後をついていった。
セイットもこっちなのね。
「時間になりましたらこちらに監督者が参りますので、お待ちください」
入った教室には誰もいない。というか、机がまず2つしかない。それも向かい合った形で少し距離を置いておかれている。試験をここで受けるのってもしかして私1人?
「お待たせいたしました。
ウェルカ・ゼリベ・チェルビース嬢で間違えありませんか?」
「はい」
教室に入ってきたのは紙をたくさん抱えた若い男性教師だけ。つまり、この先生が試験監督をするということかな。それと、やっぱりここで試験を受けるのは私だけなのね。
その前に! あの紙の量は何でしょうか?
まさか全部解かなくてはいけない?
「では上から順に問題を解いていってください。
わかる問題をすべて解き終わりましたら声をかけてください」
「あの、時間の制限はないのですか?」
「気にしなくて大丈夫です」
あれ? 今までは時間で区切りながら試験の練習をしていたんだけど……。
「どうぞ、初めてください」
慌ててペンを手に取り、私は試験問題を解き始めた。
う、うーん?
あれから昼休憩をはさみつつ、数教科の問題を解いていったわけですが……。
妙に問題数が多いのは疲れたけれど、問題の難易度としては解けないほどのものはなかった。緊張して臨んだ分、なんというか拍子抜けです。
でも、こんなにも多くの問題を解いたのは初めてだったし、めちゃくちゃ疲れました。
さくさくと解いていった私を珍しそうに先生に見られたのは恥ずかしかった……。
「お疲れさまでした。
こちらの結果は後日、各家にお渡しいたしますのでお待ちください
では、校門の方までお送りいたします」
私が解いた紙をすべて袋に入れると、そういってくれる。正直全く道がわからないので助かりました。すぐに片づけを済ませてしまわないと。
すでに迎えに来ていた馬車に乗り込んでセイットと共に屋敷へ帰宅すると、今日は珍しくすでにお姉様が帰宅していた。
「ただいま帰りました。
今日は早かったのですね」
「おかえりなさい、ウェルカ。
ええ、今日は早くに切り上げてきたのよ」
疲れたでしょう? と言われて席に着くと確かにどっと疲れを感じてしまった。ずっと集中していたからか目も痛いような気がする。
「お疲れさまでした、ウェルカ様。
こちらをどうぞ」
「ありがとう」
うん、疲れているときはやっぱり甘いものだよね!いつもよりもなんだか甘めな気もするけど、それがとてもおいしい。
「ウェルカ、疲れているところ申し訳ないんだけれど、少しいいかしら?」
菓子を食べ、お茶を飲み、一息ついたのを確認するとお姉様がおずおずと声をかけてくる。そういえば、今日行く前に何か話したいことがあると言っていたな。
「はい、大丈夫です」
「あのね、ウェルカが学園に入ったら正式に王宮に入ることになったの。
側妃だし、隣国への義理もあるので本来なら式を挙げない予定だったのだけれどね、陛下方のご厚意で近い親戚のみの小さな式を挙げてもらえるの。
来てもらえないかしら?」
「そうなのですね!
もちろん行きます!」
お姉様の花嫁姿が見れるなんて! 絶対にきれいに決まっている!
それにお姉様は殿下の話をされるとき、とても優しい顔になるのだ。それだけでいかに殿下のことを思っているかがわかる。そして殿下がお姉様を見る目も愛おしそうだった。そんな2人の結婚式、きっと素敵なものになるはずだ。
疲れも吹き飛ぶような報告に疲れも吹き飛びました!
こちらの試験会場へどうぞ」
あれ? ほとんどの人が違う方向へ向かっていくけれど、私はこっちでいいの?
不安になりながらも案内をしてくれるという女生徒の後をついていった。
セイットもこっちなのね。
「時間になりましたらこちらに監督者が参りますので、お待ちください」
入った教室には誰もいない。というか、机がまず2つしかない。それも向かい合った形で少し距離を置いておかれている。試験をここで受けるのってもしかして私1人?
「お待たせいたしました。
ウェルカ・ゼリベ・チェルビース嬢で間違えありませんか?」
「はい」
教室に入ってきたのは紙をたくさん抱えた若い男性教師だけ。つまり、この先生が試験監督をするということかな。それと、やっぱりここで試験を受けるのは私だけなのね。
その前に! あの紙の量は何でしょうか?
まさか全部解かなくてはいけない?
「では上から順に問題を解いていってください。
わかる問題をすべて解き終わりましたら声をかけてください」
「あの、時間の制限はないのですか?」
「気にしなくて大丈夫です」
あれ? 今までは時間で区切りながら試験の練習をしていたんだけど……。
「どうぞ、初めてください」
慌ててペンを手に取り、私は試験問題を解き始めた。
う、うーん?
あれから昼休憩をはさみつつ、数教科の問題を解いていったわけですが……。
妙に問題数が多いのは疲れたけれど、問題の難易度としては解けないほどのものはなかった。緊張して臨んだ分、なんというか拍子抜けです。
でも、こんなにも多くの問題を解いたのは初めてだったし、めちゃくちゃ疲れました。
さくさくと解いていった私を珍しそうに先生に見られたのは恥ずかしかった……。
「お疲れさまでした。
こちらの結果は後日、各家にお渡しいたしますのでお待ちください
では、校門の方までお送りいたします」
私が解いた紙をすべて袋に入れると、そういってくれる。正直全く道がわからないので助かりました。すぐに片づけを済ませてしまわないと。
すでに迎えに来ていた馬車に乗り込んでセイットと共に屋敷へ帰宅すると、今日は珍しくすでにお姉様が帰宅していた。
「ただいま帰りました。
今日は早かったのですね」
「おかえりなさい、ウェルカ。
ええ、今日は早くに切り上げてきたのよ」
疲れたでしょう? と言われて席に着くと確かにどっと疲れを感じてしまった。ずっと集中していたからか目も痛いような気がする。
「お疲れさまでした、ウェルカ様。
こちらをどうぞ」
「ありがとう」
うん、疲れているときはやっぱり甘いものだよね!いつもよりもなんだか甘めな気もするけど、それがとてもおいしい。
「ウェルカ、疲れているところ申し訳ないんだけれど、少しいいかしら?」
菓子を食べ、お茶を飲み、一息ついたのを確認するとお姉様がおずおずと声をかけてくる。そういえば、今日行く前に何か話したいことがあると言っていたな。
「はい、大丈夫です」
「あのね、ウェルカが学園に入ったら正式に王宮に入ることになったの。
側妃だし、隣国への義理もあるので本来なら式を挙げない予定だったのだけれどね、陛下方のご厚意で近い親戚のみの小さな式を挙げてもらえるの。
来てもらえないかしら?」
「そうなのですね!
もちろん行きます!」
お姉様の花嫁姿が見れるなんて! 絶対にきれいに決まっている!
それにお姉様は殿下の話をされるとき、とても優しい顔になるのだ。それだけでいかに殿下のことを思っているかがわかる。そして殿下がお姉様を見る目も愛おしそうだった。そんな2人の結婚式、きっと素敵なものになるはずだ。
疲れも吹き飛ぶような報告に疲れも吹き飛びました!
9
お気に入りに追加
1,212
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は冷徹な師団長に何故か溺愛される
未知香
恋愛
「運命の出会いがあるのは今後じゃなくて、今じゃないか? お前が俺の顔を気に入っていることはわかったし、この顔を最大限に使ってお前を落とそうと思う」
目の前に居る、黒髪黒目の驚くほど整った顔の男。
冷徹な師団長と噂される彼は、乙女ゲームの攻略対象者だ。
だけど、何故か私には甘いし冷徹じゃないし言葉遣いだって崩れてるし!
大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気がついたテレサ。
断罪されるような悪事はする予定はないが、万が一が怖すぎて、攻略対象者には近づかない決意をした。
しかし、決意もむなしく攻略対象者の何故か師団長に溺愛されている。
乙女ゲームの舞台がはじまるのはもうすぐ。無事に学園生活を乗り切れるのか……!
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
最強総長は姫を眠らせない。⚘
空野瑠理子
恋愛
地味な私。
離れ離れになった元義兄、宙くん
との約束を果たす為
月籠(つきかご)高校に入学したけど、
まだ会えず諦めかけてたら……
「危なかったな」
制服を着た紫髪の男の子に助けられました。
顔を見たらまさかの宙くんで……
再会した宙くんは、
鬼雪(おにゆき)の総長になっていました。
秘密な紫髪の最強元義兄(16)
黒沢宙(くろさわそら)
昼間はイケメン高校生、夜は総長
×
秘密な黒髪の眠れない姫(16)
花城雪乃(はなしろゆきの)
昼間は地味な高校生、夜は美少女?
*゚ஐ🍬グミキャンディのような
パチパチと弾ける甘い日々……眠きゅん青春物語🍬ஐ*゚
「お願い…眠らせないで」
「もちろん、眠らせねぇよ」
秘密の関係は刺激的で、やめられそうにない。
イラスト*子兎。(許可済み)
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる