上 下
23 / 193
1章 変わる日常

23話 勉強開始(5)

しおりを挟む
「ウェルカ様のマナーも完璧になりましたね。
 そうですね、次は特別授業としてお客様をお招きして小さなお茶会を行いましょうか」

 あるときのマナーの授業でふとワルクゥベ様がそんな提案をしてきた。

「お茶会、ですか?
 でも一度も参加したことがないので、どういったものか知識でしか知らないのですが……」

「準備は私の方で行います。
 ウェルカ様は知識だけでなく、体験もしていただいた方がよいと思いますので。
 後ほど、招待状をお送りいたします」

「わかりました」

 まだお茶会に参加しないと思っていたから、私は驚きながらも頷きを返した。


 招待状はすぐに送られてきた。どうやらワルクゥベ様の邸宅であるカルセッタ伯爵家にて行われるようだ。その日に合わせてドレスを選んだりと、授業とはいえ本格的に準備を行った。


「カルセッタ夫人、本日はお招きありがとうございます」

 当日、エスコートで馬車を降りるとワルクゥベ様はすでに待っていらした。お互いにいつもとは違う雰囲気で少し緊張してしまう。

「ようこそいらっしゃいました、ウェルカ様。
 どうぞ、庭園のほうへとご案内いたします」

 そうして庭に面したベランダへと案内をしてもらう。そこにはすでにきれいな花が描かれた皿に盛られたかわいらしいお菓子や、おそろいの絵柄のティーカップが置かれていた。
そしてーーー

「わぁ!
 とてもきれいですね」
 
 目のまえに広がるのは季節の花が咲き乱れる庭園があった。

「ありがとうございます。
 どうぞこちらのお席へ」

 ふふっと柔らかい笑みを浮かべたワルクゥベ様に席を勧められ、お礼を言いつつ席に着く。すると、自分が来た方向から人の声が聞こえていた。

「遅れてしまい、申し訳ございません。
 本日はお招きありがとうございます」

「お、お姉様⁉」

 思わず驚いた声を上げると、いたずらが成功したようにお姉様が微笑んでいる。全く気が付かなかった……。

「ようこそおいで下さいました。
 どうぞ、こちらの席へ」

「ありがとうございます」

 すっとお姉様は座る。なんとなく、ワルクゥベ様がお姉様も呼んだ意味が分かった気がした。

「ささやかなものではございますが、どうぞ楽しんでいってください」

 その言葉が合図だったように、侍女がやってきてからだったカップに紅茶を注いでいく。その瞬間にふわりと、紅茶の良い香りがしてくる。

「こちらの紅茶はとても良い香りね。
 どこの茶葉を使っていらっしゃるの?」

「こちらは……」

 お姉様の質問に、ワルクゥベ様はよどみなく答えていく。その品名も産地も確かに聞いたことがあるものだったが実際に口にするのは初めてだ。いろんなことに感動をしながらお茶会に参加していく。

 基本はお姉様とワルクゥベ様の会話を聞くだけになってしまったが、それでも楽しいお茶会になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は冷徹な師団長に何故か溺愛される

未知香
恋愛
「運命の出会いがあるのは今後じゃなくて、今じゃないか? お前が俺の顔を気に入っていることはわかったし、この顔を最大限に使ってお前を落とそうと思う」 目の前に居る、黒髪黒目の驚くほど整った顔の男。 冷徹な師団長と噂される彼は、乙女ゲームの攻略対象者だ。 だけど、何故か私には甘いし冷徹じゃないし言葉遣いだって崩れてるし! 大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気がついたテレサ。 断罪されるような悪事はする予定はないが、万が一が怖すぎて、攻略対象者には近づかない決意をした。 しかし、決意もむなしく攻略対象者の何故か師団長に溺愛されている。 乙女ゲームの舞台がはじまるのはもうすぐ。無事に学園生活を乗り切れるのか……!

日給10万の結婚〜性悪男の嫁になりました〜

橘しづき
恋愛
 服部舞香は弟と二人で暮らす二十五歳の看護師だ。両親は共に蒸発している。弟の進学費用のために働き、貧乏生活をしながら貯蓄を頑張っていた。  そんなある日、付き合っていた彼氏には二股掛けられていたことが判明し振られる。意気消沈しながら帰宅すれば、身に覚えのない借金を回収しにガラの悪い男たちが居座っていた。どうやら、蒸発した父親が借金を作ったらしかった。     その額、三千万。    到底払えそうにない額に、身を売ることを決意した途端、見知らぬ男が現れ借金の肩代わりを申し出る。    だがその男は、とんでもない仕事を舞香に提案してきて……  

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

最強総長は姫を眠らせない。⚘

空野瑠理子
恋愛
 地味な私。  離れ離れになった元義兄、宙くん  との約束を果たす為  月籠(つきかご)高校に入学したけど、  まだ会えず諦めかけてたら…… 「危なかったな」  制服を着た紫髪の男の子に助けられました。  顔を見たらまさかの宙くんで……  再会した宙くんは、  鬼雪(おにゆき)の総長になっていました。  秘密な紫髪の最強元義兄(16)  黒沢宙(くろさわそら)  昼間はイケメン高校生、夜は総長  ×  秘密な黒髪の眠れない姫(16)  花城雪乃(はなしろゆきの)  昼間は地味な高校生、夜は美少女?  *゚ஐ🍬グミキャンディのような  パチパチと弾ける甘い日々……眠きゅん青春物語🍬ஐ*゚ 「お願い…眠らせないで」 「もちろん、眠らせねぇよ」  秘密の関係は刺激的で、やめられそうにない。  イラスト*子兎。(許可済み)

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...