姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio

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1章 変わる日常

17話 勉強開始(1)

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 翌日、本当にさっそく家庭教師という先生がいらっしゃいました。おじい様方の仕事の早さにびっくりしてしまいますね。
 ちなみにお姉様は今日、王城へ行って教育をうけているそう。お姉様が頑張っているから、私も頑張らないと!

「初めまして、ウェルカ様。
 本日より教師を務めるマリーベ・ドゥ・ベルクリート、と申します。
 ベルクリート子爵夫人でもありますわ」

「初めまして、マリーベ様。
 バーゼリク侯爵が次女、ウェルカ・ティー・バーゼリクです。
 よろしくお願いいたします」

 ぺこりと一礼すると、なんとも言えない顔をされてしまった。

「未だ、教育を受けてないとは聞いております。
 本日の午後はマナーの教師がいらっしゃるそうですから、その方からもよく学んでください。
 さて、本日はこちらのテストを受けていただきます。
 あなたの現状を知るためにいくつかの難易度のものを用意しておりますから、解けなくても気になさらないでくださいね」

「はい」

 ぺらりと目の前に何枚かの紙を差し出される。でもよくよく考えてみたら、私文字を書いたことってないような気がする。文字も絵本を読んであげたときくらいだしな。

 はじめてください、そう言われて紙に向き合ってみるもなかなか書き進められない。数字が書かれているものは全く意味が分からないし、歴史については絵本で書かれている程度のことしか知らない。それ以外のことはもっとわからない。完全に書き進める手が止まってしまう。

「もうわかりませんか?」

「はい」

 そうですか、と言うとマリーベ様は紙を手に取り一問ずつ私が書いた答えを確認していく。

「解けている部分は合っていますが、ほとんど解けていませんね。
 今日は算学から行っていきましょうか。
 それと、宿題としてこちらの本を読んでおいてください。
 何かわからない単語等が出てきましたらこちらの辞書で調べ、単語、意味を書き写していってください。
 ああ、辞書に載っていないようでしたら家のものに聞いてくださって構いません」

「は、はい!」

 一度に話し始めたマリーベ様に多少驚いてしまったけど、渡された二冊の分厚い冊子を何とか受け取る。というか、こんなに重いものをマリーベ様はかばんに入れていらしたのね。

「さて、算学ですが何がわかりませんでしたか?」

「これと、これが数字だということはわかるのですが、このつなぐ記号が何を意味するのかが分からないです」

 数字と数字の間、横それぞれにある記号を指さすと、マリーベ様はなるほど、とつぶやく。

「これはプラス記号と言ってこちらとこちらの数を足すという合図なのです。
 ですからこの問題では……」

 何がどうわからないのか、一問ずつ丁寧に確認してはマリーベ様はゆっくりと教えてくれる。私のペースにしっかりと合わせてくれているところからもこの方が優秀な先生なのだということがわかる。
 その後も私は夢中になってマリーベ様に算学の解き方について教えてもらった。

「驚きましたわ。
 ウェルカ様は理解力が大変優れていらっしゃいますね。
 本日だけでここまで進むことができるとは思っていませんでしたわ」

 解き方を教えてもらい、その方法を使って新たな問題を解くということを何回か繰り返したのち、マリーベ様はそう言って驚いたようにこちらを見てきた。そんな風に言われたのは初めてで、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。

「本日はここまでにいたしましょう。
 宿題も頑張ってくださいね」

 では、と言ってマリーベ様は去っていた。
 
 この後は少し休憩をはさんで昼食、その後マナーのレッスンだったはずだ。 
 ひとまず休みたい、という思いから誰もいないのをいいことに私はベッドに横になった。

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