『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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6章 再会と神島

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「ここは……?」

 目が覚めたら見知らぬ天井、ではなかったか。おそらく本神殿だろう。口に出した言葉が掠れている。そう言えば、のどが渇いたような? ぼーっと天井を眺めていると、誰かが部屋に入ってくる音が聞こえた。そちらを向くとユベリナがいた。

「す、スーベルハーニ様⁉ 
 目を覚まされたのですか⁉」

「ユベリナ……?」

「ああ、少々お待ちください。
 すぐに水を!
 何か食べたいものはございますか?」

「何か……。
 わからないけれど、おなかすいたな」

「ええ、そうでしょうとも。
 なら、何か適当にもってきますね」

 そういうと慌てたようにユベリナは部屋から出ていく。えっと、俺は一体どれくらい寝ていたんだ? それにリンカ様はどうなった? 疑問に思っていると、すいっとシャリラントが入ってきた。よかった、シャリラントは無事のようだ。

「ハール……」

「シャリラント。 
 無事なようでよかったよ」

「ハール、申し訳ございません」

「え?」

「私の願いのためにあなたを危険な目に合わせてしまった……。
 今の私の主はあなたなのに」

 なんだ、そんなこと。真剣な様子に何を言われるかと思いきや。

「シャリラント、リンカ様を助けることは、シャリラントの願いを叶えることは俺自身が望んだことだ。
 そんな風に謝られることではない」

 そこまで言い切ると、ごほごほと空せきがでる。からからののどで一気にしゃべったせいだ。ちょうど水と軽食を持ったユベリナが部屋に入ってくる。ユベリナはシャリラントを見ると驚いたように固まるが、すぐにはっとしたように俺に水を渡してくれた。

「ありがとう」

 少しぬるいくらいの水がちょうどいい。一気に一杯分の水を飲み干してしまう。もう一杯水を汲むとユベリナは気を使ってか部屋を出ていった。一緒に用意してくれた軽食も口にする。……これ、まさかジヘドさんが作ったものじゃないよな?

 俺がそうして食事をとる間、シャリラントは何も言わなかった。ようやく食べ終わって、ほっと一息ついてから俺は気になっていることを聞くことにした。

「リンカ様は?」

「リンカは、無事です。
 あなたのおかげです、ハール」

「精霊たちが手助けしてくれたおかげだよ」

 ……さっきから気になっていたのだが、あの外を漂う光の粒。あれ、精霊だよな……?

「リンカがダンジョンから解放された関係で、あそこにとどめられていた精霊たちも解放されたようです」

 よくわからないけれど、分かった。あのダンジョンにいた精霊が外に出てきた関係で、あんなに精霊がいるのか。とはいえ、異常だとは思うが。

「俺、どれくらい眠っていた?」

「5日ほどです」

 それは思ったよりも眠っていたな。まだ体がだるいし、もう少し休みたい。そう思っていたら、また瞼が重くなってきた。

「また後でリンカ様に会ってみたいな」
 
「……おやすみなさい、ハール」

 最後にその言葉が聞こえてきて、俺はまた眠りについた。

------------------------

 ふ、と目が覚めるともう外は暗くなっていた。とはいえ、まだ精霊がいるからぼんやりと光っているけれど。飲み物がサイドテーブルに置いておいてくれたおかげで今回はすぐに飲めた。

 ああ、本当に終わったのか。この島でやるべきことが。最後に気を失ってしまったからか、なんだかあまり実感がわかない。またなんだかおなかがすいた。どうしよう、と少し悩んだ後に俺は部屋を出てみることにした。

 多少は慣れた廊下を歩いていくと、向こう側から人がやってくる気配がする。怒られないよな……。少し身構えていると、明りに照らされたのはミーヤの顔だった。

「ミーヤ⁉」

「え、ハール⁉
 もう大丈夫なの?」

「あ、うん」

「なら、よかったけれど……。
 どうして廊下に?」

「おなかすいちゃってさ」

 素直にそう口にすると、ミーヤは少し驚いた顔をした後に嬉しそうにほほ笑んだ。

「じゃあ、厨房行こうか。
 なにか簡単なものなら作ってあげられるだろうし」

「え、ミーヤが作ってくれるの?
 別に場所さえあれば自分で作れるよ」

「まあ、私たち同じ孤児院で仕込まれたもんね」

 ふふ、と笑うミーヤになんだか力が抜ける。私もおなかすいたから、とおそらく嘘であろう言葉を言って、俺たちは一緒に厨房を目指した。

 無事に厨房について、ミーヤに使ってもいいものを教えてもらって早速調理に取り掛かる。この厨房は、一応この神殿にいるものなら自由に使っていいらしい。便利だ。

「こうしてまた、ハールと一緒に厨房に立つことがあるなんて思わなかったな」

「本当に。
 懐かしいな」

 もう体に染みついた動作で、二人で料理を仕上げていく。それはもちろん、料理人が作るものよりも不格好で、おいしくない。でも、なんだかおいしく感じる。

「ハールは本当にすごい。
 まさか伝説の大聖女さまを助け出すなんて」

「あれはほとんどシャリラントと精霊たちの力だよ」

「ふふ、その力を借りられる時点ですごいのよ。
 少し追いついたと思ったら、すぐに遠くへ行っちゃって……」

「ミーヤ?」

「ううん。
 私ももっと頑張らないとね」

 よくわからないけれど、ミーヤは気合が入った様子でぐっとこぶしを握る。その様子がなんだがかわいらしい。そういえば、リキートたちは元気かな。

「だから、私決めたよ……」

「え、何を?」

「まだ、内緒!」

「内緒?」

「うん!」

「それにしてもすごいことになっているよー」

「すごいこと?」

 からかうような視線でこちらを見たかと思うと、ミーヤが楽しそうに口にしたのはなんとも信じたくない内容だった。

 どうやら俺が歓迎の宴で否定の言葉を口にされたことやそれを許したこと、そして何よりも長い間助け出されることがなかった大聖女を助け出したこと。それがかなり噂になり、盛り上がってしまっている、と……。うん、リンカ様のことだけ確認したらさっさと皇国に戻りましょうか……。

 そして、精霊たちもリンカ様を守るようにとどまっていたダンジョンから解放されたことで、この島だけでもかなり魔法の使いやすさなどが変わっているらしい。

「これで、皇国の立場も決定的に変わるはずだわ。
 そして、この島のあり方も……」

「ミーヤ」

「もう戻ろうか!
 誰かが様子を見に来ていたら心配しちゃう」

「うん」

 そうして部屋に戻ると、すぐに眠りについてしまった。
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