『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
上 下
133 / 178
6章 再会と神島

4

しおりを挟む
 大丈夫か、と小さく聞いてきたカンペテルシア殿になんとか大丈夫だと返し、ようやく俺はキンベミラ殿下2人きりになった。先ほどの言葉の意図は一体何だったのか、改めて聞こうと意思を固めている間にいつの間にかキンベミラ殿下がすぐ近くに来ていた。

 いったい何を言うのか、緊張しながら相手の言葉を待ってみる。殿下も緊張した様子で迷うように視線をさまよわせていた。やがて決心したようにこちらをまっすぐにみるとすぐに視線があう。その時どこか気が抜けたように殿下は微笑んだ。その微笑み方をどこかで見たような……? どこで、と言われると答えられないけれど。

「久しぶり、っていうのもなんだか違和感あるな。
 元気だったか、陽斗」

「……は?」

 今、陽斗って言ったか? どうして今その名前がキンベミラ殿下から出てくる? 俺が前世の記憶を保持している話は誰にもしたことがない。もちろん、前世の名を知る人もいない。なのに、なぜ。

「やっぱりわからない、よな。
 宮間って名前、憶えていないか?」

「え、いや、同じ寮に住んでいた宮間なら覚えているけれど……」

 同じ寮に暮らしていた友人。よく俺のことを気にかけてくれていた人だ。でも、その宮間と目の前の殿下がつながらない。いや、1つの可能性が頭に浮かんではいるが、到底信じられないことだ。

「そ、同じ大学、寮だった宮間。
 覚えていてくれてよかったよ」

 そうして先ほども浮かべていた微笑みが確かに記憶の中の宮間と重なる。でも、なんでその宮間がここに? 疑問ばかりが頭に浮かぶせいか何かを口に出すことができない。

「どうして、ここに?」

 ようやく口に出たのはそんなわかりきった疑問だった。俺がここにいる時点で宮間も同じなのだろうとわかったはずなのに。だが、俺がその事実に思い至ったのは宮間の、キンベミラ殿下の説明を受けた後だった。

「俺は、陽斗が死んだあとにずいぶんと長生きしたんだけどな。
 気が付いたらミベラ神と呼ばれている神であろうものと対峙していたんだ。
 その人に言われた。
 ……自分の罪を償う機会をやろう、と。
 それで陽斗を、皇国の皇子として転生させるので手助けをするように言われて、目が覚めると俺はオースラン王国の嫡男に生まれ変わっていた。
 今までは口先だけでなく本当に陽斗が困ったときに手を差し伸べられるように、自分の立場を固めることに注力していたんだ。
 まさか、陽斗がそんな大変な目にあっているとも知らないで」

「まって、待って!?
 罪って、何? 
 それにどうして俺の手助けを?」

「……、陽斗は自分が亡くなったときのことを憶えているのか?」

「え、いや、憶えていないな」

 そうか、と答えるとキンベミラ殿下はうつむき再び黙ってしまう。そして再び顔を上げたとき、その顔は蒼白になっていた。

「キンベミラ殿下……?
 あの、言いづらいことでしたら無理に話さなくても……」

 とっさに出た言葉にキンベミラ殿下は小さく首を横に振った。

「陽斗が亡くなったのは、俺が見殺しにしたせい、なんだ……」

「……見殺し?」

「あの日……、俺は午後からの授業に向かうために駅に行ったんだ。
 そしたら、前を、ホームの端を陽斗が歩いていて、スマホを見ていたから危ないって声をかけようとしたんだ。
 俺が陽斗に追いついて声をかけようとしたときに、目の前で陽斗が線路に落ちた。
 手を伸ばせば間に合った、救えた。
 でも、頭に……がよぎって、それで伸ばせないまま、線路に落ちて」

「何がよぎったって?」

 ホームまで向かったこと自体憶えていない。でも、つい濁された部分に意識がいってしまう。ここまで来たら聞ききってから考えよう、うん。キンベミラ殿下は視線を一度そらした後にまたこちらを見た。

「このまま、陽斗が亡くなればって考え、が……」

「どうして、そんなこと……」

 つぶやきながらひどい頭痛に襲われる。頭の中で響く誰かの叫び声。悲鳴。迫りくる電車の音。ああ、これはきっと。

「陽斗が、嫌いだったから」

 小さい、しかし妙にはっきりと聞こえた声。宮間が、陽斗のことを嫌いだった? あんなによくしてくれたのに? あんなに長い間一緒にいたのに? 陽斗は数少ない友人すら手に入れられていなかった?

「は、陽斗!?」

 キンベミラ殿下の声を遠くに聞きながら、目の前が暗くなっていくのを感じた。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

欲張り転生★ダンジョン最下層へ落とされた悪役令嬢は、喋る剣と配信しながら地上を目指します

まめつぶいちご
ファンタジー
【完結済み】 2023/10/6 改稿verへ差し替えました。 2023/10/8おまけ1話追加しました。 ---あらすじ---- 不運にも死んでしまったOLの宮森涼音。 運良く転生のチャンスを手にしたが、ボケ老人の神により適当に転生させられてしまう。 ギリギリ希望通り悪役令嬢に転生した宮森涼音だったが、スタート地点は処刑場。何がどうして処刑される事になったのかわからないまま、配信スライムで配信されながらダンジョンの最下層へと落とされてしまった。 穴の底で出会った喋る剣カグラを手に取り、涼音は地上を目指すことを決意する。 なぜ悪役令嬢として殺される事になったのか。 なぜカグラはダンジョン最下層に刺さっていたのか。 宮廷陰謀論など様々な要素が展開されます。 いろんな要素を内包した闇鍋冒険のスタート!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...