『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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5章 ダンジョン

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「ねえ、ミーヤに会えるかわかる?」

 部屋への帰り道、一緒に来ていた侍従に問いかける。ミーヤにはお礼を言いたいし、聞きたいこともたくさんある。すると、その人は微妙な顔をする。ああ、あまり会いに行くのはよくないとか?

「ミーヤ様はまだお目覚めではございません」

「えっ?」

「相当無理をなさっていたようで、スーベルハーニ皇子方によってダンジョンが攻略された後に眠ってしまわれて」

 そっか……。ミーヤもここで俺たちと同じように戦ってくれていたのか。うーん、お見舞いに行ってもいいんだけれど、何となく行きずらい。目が覚めたら教えてもらうようにだけ伝えてひとまず今日はあきらめることにした。

 昼食後、再び陛下の執務室を訪ねる。リヒトたちはもう待っていて、そう時間をおかずに今回呼ばれた全員がそろった。よかった、皆さん顔色もよさそうだ。

「まずは、この度はダンジョンの攻略に尽力していただき、心から感謝いたします。
 我々だけの力では敵わなかったでしょう」

「いいえ。
 我らとしても得難い経験をすることができました。
 こうして神剣の主が揃う日が来ようとは思いもよりませんでしたから」

「そう言っていただけると。
 ですが、満足なお礼もできず申し訳ない」

「我々はそういったことを目的に動くことはありません。
 よき隣人となれる方を見捨てることなどできませんから。
 ただ……いくつか頼みたきことがございます」

 よき隣人。その言葉にはっと目を見張る。この言葉は決して軽いものではない。それを何ともない言葉のように自然に言い切ったのだ。歴史的な言葉になると、果たしてこの方は気が付いているのかどうか。気を取り直したように、陛下は続きを促す。

「なんでしょうか?」

「まず、ミーヤが目覚めて回復するまでこちらに滞在する許可をいただきたいのです。
 そして次に彼を、スーベルハーニ殿を我らが神島にお連れしたいと考えております。
 最後は私ではなく彼から」

 そこで言葉を途切れさせたティアナさんは視線をリーンスタさんに向ける。リーンスタさんはまっすぐ陛下を見る。その瞳に浮かんでいるのは、怒り? って、待って。今俺を神島に連れて行くとかいった? いや、聞いてない。

「リゼッタに会いに行きたいのです」

 混乱する俺を置いて、リーンスタさんは静かにそう口にした。リーンスタさんの言葉に陛下もリヒトも言葉を失う。きっとここでこの名を聞くことになるとは思わなかったのだろう。

「あの、失礼ですが……。
 リゼッタ妃と血縁関係が?」

 リヒトが恐る恐ると言った様子でリーンスタさんに尋ねる。そうだよね、この色彩は割と珍しい。旅をしていてもほとんど、もしくは全く見かけなかった。それにリーンスタさんはどこか母上と雰囲気が似ている。母上を見たことがあるリヒトなら気が付いてはきっとおかしくはない。

「私はリゼッタの兄です」

 はっ、と息をのむ音がした気がした。陛下もリヒトも固まっている。だが陛下の方が回復が早かった。

「そうとは知らず申し訳なかった。
 ぜひ会いに行っていただきたいが……」

 言いながら陛下がこちらを見る。別に俺の許可などいらないんだけれどな。レッツたちが墓守らしきことをしてくれているけれど、行こうと思えばだれでも行ける場所だし。首を傾げかけたところではたと気が付く。
 
 そういえば皇族って普通、地下の皇族だけの墓に入るものなんだ! そこは限られた人しか入ることができない。そこだったら確かに許可必要だよ。陛下が俺に視線でとはいえ問いかけてきたのはただの気遣いだろうけれど。

「ぜひ。
 とても心地よい風が吹く、丘の上にいるんですよ。
 後で案内しますね」

「そう、か。
 ぜひ頼むよ」

 微笑むとより母に似ている気がするな。さてこの話がまとまったところで、とティアナさんが示した2点に話はもどった。

「まず滞在についてですが、もちろん構いません。
 満足なおもてなしができないかもしれませんが、それでもよければ場所と食事の提供はします。
 次にスーベルハーニを神島にということだが……。
 本人の意思と時期次第だな」

 人気者だな、と苦笑する陛下。えっとなんのことでしょうか。至急行ってもらいたいところがある、とそのあとに付け加えられたのですがいったいどこに行かされるんでしょうか。

「ええ、そうですね。 
 無理に連れて行こうとしているわけではありません。
 ただ、スーベルハーニ殿が望んだ時それを手助けしていただきたいという思いです」

「それならばもちろん」

 こうして無事に? 話はまとまったようでこの会も解散ということに。ただ俺だけ残るように言われたけれど。リーンスタさんには後でゆっくり話をしよう、と声をかけられました。いやー、俺大人気だわ、うん。


「それで、俺に何か?」

 さっき話したばかりだというのに何かあったのだろうか? するとリヒトが俺に届いたばかりだというとある手紙を渡してくる。そこにはオースラン王国との条約締結をここではなく国境で行うこと、カンペテルシア殿が陛下の名代として、オースラン王国の王太子が国王の名代としてサインすること、そういったことが書かれていた。

 ふむふむ。これと俺にどんな関係があるんだと下まで読んでいるとなぜか俺の名前がそこにはあった。曰く、締結については上記の内容でかまわないが俺にその場に来てほしい、と。え、だから何で?

「俺に国境に行けと言うことでしょうか?」

「ああ、頼みたい……。
 本当にどうしてここまでスーベルハーニと会おうとする?」

「それはわかりかねますが……」

 なるほど、これが早急に向かってほしいところか。神島に今すぐ出発となってしまえば、確かになかなか難しいことだ。

「どうして国境で行うことになったのですか?」
 
 これもともと皇宮で行う予定だったはず。そう口にすると二人の視線は外に向けられる。そこには今もまさに復興作業が行われている城下町がある。って、そうか。確かにこの状況ではオースラン王国からの賓客を迎えるのはかなり難しいか。

「休息が必要なことはわかっている。
 それは向こうにも伝えてある。
 そのうえで頼みたい。
 可能な限り早く国境へと向かってくれないか?」

「そう、ですね。
 わかりました。
 ここまで言われては俺としても王太子のことが気になりますし」

 一体どうしてここまで俺に会いたがるのか。ひとつ、心当たりがあるとすれば前世の記憶、だろうか。以前ケリーが言っていた。俺が前世の知識を基に口出ししたちょっとした商品をとても気にしていたと。もしも本当に王太子が俺と同じ星の記憶を持っているなら、ちょっと会ってみたい気がする。

「ありがとう」

「……それにしても、リゼッタ妃の兄君だったのですね。
 もしや、とは思っていましたが本当に」

 話が付いたタイミングでリヒトがぽつりとつぶやく。

「顔合わせの時に伯父だと言われたんだ。 
 さすがに驚いたよ」

「そうだったのですね。
 どうか案内をよろしくお願いします」

「うん。
 この後声をかけてみるよ。
 ……今日はいい天気だから」

 あまり頻繁に足を運べてはいない。けれど、今日は俺としてもなんだか会いに行きたかった。

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