『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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4章 皇国

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 ようやく食事の時間が終ると、別室へ移動することに。それぞれ席に着くと、早速お茶が用意された。三人の前にお茶が置かれたことを確認すると、リヒトが手を振る。それを見ると部屋には三人以外誰もいなくなった。

「さて、改めて。
 はじめまして。
 君の話はたびたび聞いていたが、実際に会うのは初めてだね。
 第一皇子、キャバランシアだ」

 よろしく、と手を差し出す。その手を、俺はとるのをためらった。そんな俺をどう思ったのかはわからないが、第一皇子はすぐに手を下した。

「そうだね、私のことはラシア兄上と呼んでもらおうか?」

 そういっていたずらっぽく笑う。いやいや、この人のことを兄上と呼ぶなんていろんな意味で無理……。もうだいぶ記憶のかなたにいるけれど、あの弟がどんな反応をするのか考えただけで面倒だ。

「遠慮します……」

「そうかい?
 残念だ」

「殿下、遊んでいないで本題に入ってください」

「叱られちゃったよ。
 そうだね、時間はあまりない」

 この人ってこんな人なのか……、そんなことを思っているとすっと目が細められる。そのしぐさだけで、空気ががらりと変わった。

「さて、今私に考えられる案は二つ。
 今すぐ私の侍従として皇宮に来るか、全体の下働きとして皇宮に来るか。
 ああ、下働きなら女として働きに来る手もあるか」

「やはり、皇族としてではないのですね」

「まあ、今あいつらにばれるのは得策じゃない」

 えっと……? 俺を置いて話はどんどん進んでいく。てっきり皇子として迎えに来てもらった以上、そういう形で皇宮に行くのだと思っていた。

「さあ、どちらがいい?」

「え、あ、あの……?」

「……ああ、そうだ、最初に聞くべきだったか。
 君はどうしようと考えていたんだい?
 彼から、私がやろうとしていることの話は聞いているよね」

 この人が、やろうとしていること。きっとクーデターのことだ。その中で、自分の役割は……、役割は一体なんだ? え、だって、俺はあいつらをって……。

「おれ、は……」

「……まあいいや。
 私の敵にならない、いや、味方になってくれるのなら、君はここにいることに価値がある。
 そうだな、リヒベルティアはどちらが良いと思う?」

 ふい、とこちらを見ていた視線がそらされる。あ……。明確な理由はない、けど、わかる。失望された。いや、そんな言葉も似合わないか。でも、興味が失われたことはわかった。どうして、俺は考えなかったんだろう? 自分で選んでここに帰ってきた。それは間違いない。リヒトはそんな俺に現状をできるだけ伝えてくれた。でも……。

「そうですね。
 今のスーベルハーニ皇子に侍従は難しいかと。 
 なるとしたら下働きでしょうか?
 そのあとに、何らかの理由を付けて殿下の侍従にしては?」

「ああ、そうだね。
 それでいいかい?」

「あ、はい」

 そうとしか返せなかった。何か、何か話さないと。そう思っても俺の頭は一切働いてくれない。そのほかにもリヒトと二人で何かを話すと、キャバランシア皇子は席を立とうとした。そんな皇子を引き留めるように、リヒトが口を開く。

「ああ、最後に一つ。
 本当は最後まで話さないでいようかと思ったのですが、やはり殿下にも協力してもらうことが一番かと思いましたので」

「なんのことだい?」

「スーベルハーニ皇子が冒険者になってらしたのはご存じですね?」

 リヒトの言葉にうなずくキャバランシア皇子。その様子を見て、リヒトは言葉をつづけた。

「その際にパーティを組まれていた二人も、共にこちらに来ているのです。
 こちらでダンジョン攻略に力を貸していただく予定なのですが、キャバランシア皇子からも働きかけていただきたいのです」

「パーティのものが……。
 ああ、わかった、そうするよ。
 それで?
 本題は?」

「そのうちのお一方に見覚えがあるかもしれませんが、見逃していただくように、ということです。
 ダンジョン攻略に行くだけならば、何の問題もないでしょう」

 リヒトの言葉に考え込む様子を見せるキャバランシア皇子。少しすると、まさか、と小さくつぶやいた。そしてリヒトの方を見ると、くれぐれもよろしく頼む、といって部屋を去っていった。

「やっと帰りましたね。
 全く、あの方も暇ではないはずなのですが……。
 どうかされましたか?」

「……え?
 あ、何でもない」

 先ほどの皇子の言葉の意味も、俺が下働きになって何をしたらいいかもわからない。それが急に怖くなった。俺は、流されるためにここに来たのではないのに。でも、リヒトが、誰かがどうにかしてくれるだろうと深く考えなかったのだ。

 それが、情けなくて、怖くて……。

「ごめん、疲れたみたいだ。
 もう部屋に戻っているな」

 かろうじてそれだけ言うと、俺はリヒトが何も言わないのをいいことに、その部屋を出ていった。
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