『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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4章 皇国

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 どうしよう、とリヒトから視線を逸らすと目に移ったのは困惑顔の二人だった。って、そっか。二人にはこちらの会話は聞こえていないから、急にシャリラントが現れてなおかつ馬車の空気冷たくして帰っていっただけだもんね。てっきり感覚的に気温が下がっただけかと思っていたけれど、本当に下がっていたようだ。

 少し気の毒には思うけれど、今はとにかくリヒトとの話が優先だ。そっとリヒトを伺うと、シャリラントが去った直後は愕然と言った様子だったリヒトだが、少し回復したらしい。何かを考えこんでいる様子だったか、ふとこちらに視線を上げた。

「リヒト……?」

「あ、はい。
 えっとなんの話でしたっけ?」

 きょとんとするリヒト。なんだかすみません。シャリラントの話が出てきたからちょうどいいかと思ったけれど、話が全部終わった後の方がよかったか?
 ぱちぱちと数回瞬きをした後、ああ、と小さくつぶやいた。そして仕切り直すように

「先ほどの話……」

「え?」

「シャリラント殿の先ほどの話、忘れないようにします。
 ス、スーハル、皇子は皇国が赦された証拠など、そういうのではないと。
 でも、あの国、いや国を問わず周りの人はそういう捉え方をする人がいることを覚えていてください」

 あなたのためにも。そう言うリヒトに素直にうなずく。知っているということは大切だ。さて、あとは何を聞けばいいんだっけ。第一皇子がなんでクーデターを起こしたいかはわかった。後、皇后が第二皇子を皇帝にしたいことはわかった。あとは……。

「ああ、そうだ。
 ちなみに、第二皇子は一部の人からは支持を受けています。
 それらは私腹を肥やしたいだけの、碌のやつではないのでわかりやすいですね」

 あ、はい。第二皇子を支持するなんてどんな奴? と思っていたけれど納得ですね。愚鈍なやつが上に立てばそれは操りやすいでしょうよ。

「そういえば、皇国に聖女がいるという話を聞いたんだけれど」
 
 ふと口をついて出たのはそんな言葉。ミハルさんたちの言葉を思い出すことで、ふと思い浮かんだのだ。確か双子の皇女がそう呼ばれている、と。

「そのことをご存じだったのですね。
 そう呼ばれている方々はいらっしゃいます。
 皇妃殿下のご息女、サラジシア皇女とララベシア皇女のお二人のことです。
 兄であるキャバランシア皇子の力になろうと、未だに嫁がれてはいません。

「そ、そうなんだ?」

 未だに嫁いでいないことはわかった。でも、貴族がどれくらいの年齢で結婚するものなのかよくわからないのだ。成人したら嫁げるようになるのは知っているが、そこは前世の感覚が邪魔をする。20歳にもなっていない歳では結婚していないのも当たり前では、と思ってしまうのだ。

「あの、他の皇女は?
 というか、他の皇族は?」

 もう手っ取り早く全部聞いてしまえ! と尋ねると、リヒトはすらすらと答えてくれた。さすがに第一側妃が実家へと戻り、子である第五皇子が皇籍を抜けて側妃の実家を継いだというのは驚いた。ちなみに同腹の姉である第二皇女は結婚している。また、第二皇子の同腹の妹である第一皇女は皇后の祖国に嫁ぎ、結婚していない皇女は先ほどの二人だけ、と。

 皇子については、第一皇子、第二皇子、第五皇子は言っていたとおりであり、第四皇子は現在騎士団に勤めている。この第四皇子、かなり微妙な立場らしいく、未だにどちら派にもついていないようだ。第六皇子は第一皇子を支えているようだ。

 ううん、なるほど。唯一、第四皇子だけがよくわからないのか。まあ、皇位を狙っているのでないのなら勝つ方につきたいよな。他は思ったよりもまとまっている。皇子が6人もいるのに不思議なくらいだ。まあ、この辺はひとえに皇位に興味がある人が少ないからこそだろうが。

「他に何か聞きたいことは?」

「あとは……、妃のことくらい?」

「ああ……。
 皇后と第一側妃は先ほど申し上げた通りですね。
 皇妃は第一皇子に従っている、と言った感じでしょうか。
 積極的に権力を欲しているわけではないようですが、第一皇子を止めるわけではない。
 第二側妃は下手に巻き込まれないように様子を見ているところです」

 じゃあ、警戒するべきは皇后くらいか。厄介な状況ではあるのだろうが、警戒すべき人が絞れているのはありがたい。……いや、まあほかの貴族はわからないが。

 そんな話をしているうちに馬車は動きを止めた。思っていたよりも時間が経っていたようで、外を覗くともう暗くなり始めていた。今日はここで泊まっていくのだろう。

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