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3章 冒険者養成校

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 俺たちは迎えに来たラグア先生に続いて個室に入ると、途端にラグア先生が深くため息をついた。

「はー、お前ら活躍しすぎだ。
 初回から養成校に収める額達成するやつ初めて見たぞ?
 文句なしに売り上げ額ダントツだ」

 うんうん。俺たちはただ、言われた道に現れた魔獣を片っ端からやっつけていっただけだ。特に活躍した覚えはないんだが?

「あー、あー、無自覚か。
 全く、おかげで資源の確保が大変だったよ。
 初回はあんなばかすかできるもんじゃないんだよ、普通はな。
 それに魔石もちゃっかり出していやがる」

 ちゃっかりって……。魔石の発生は確かランダム。俺らだって狙って出せるものではないのだ。

「で、いくらだったんですか?」

「魔石だけで金貨3枚」

「……は!?」

「よかったな。
 それだけでお前らは返済完了だ。
 どころか前払いだってしている。
 それで、今後ダンジョンで得たものの話だが、自分たちの財にする、またはランク上げのためにギルドに入れるか、どちらも選べる」

 自分たちの財かランク上げ……。正直ここを出たら、皇国に向かう俺にはランクは関係ない。でも、二人は違うか。ちらりと二人の様子を見る。やっぱり悩んでいる。正直、お金はあって困ることはない。だから、どちらかというと手元に残したいが……。

「二人は、どうしたい?」

「うーーーん」

「ま、今すぐ答えなくてもいいし、毎回同じようにする必要もない。
 都度聞こうか」

「ありがとうございます」

「で。
 今回はいつも俺が売りに行っているチラジア商会に売りに行った。
 さっき説明あったと思うが、次にダンジョン行ったときはお前らで売ってもらう。 
 初めの方は俺が仲介するが、自分たちでもがんばれよ」

 うん、知らないな、その商会。まあ、とりあえず聞くだけ聞いてみよう。ダンジョン素材を買い取り、売ることが商会にとっての利益になるならば、ぜひサーグリア商会で売りたい。

「あの、他の商会で売ることできないんですか?」

「ほか?」

「はい。
 サーグリア商会が買い取ってくれると、そういってくれたんです」

「……は?
 サーグリア商会っていったか?」

「え、はい」

 なんでそんな驚いてるんだ? 俺がサーグリア商会に伝手があると、もともと知っている二人も俺と同じように不思議がっている。

「あそこは確かにダンジョン素材を取り扱えるが、実際に取り扱ったところを見たことがないぞ。
 そこが買い取るって?」

「はい。
 昔馴染みなんです」

 まさか今まで買い取ったことがないとは。その状態でよく買い取るよ、と言ってくれたものだ。なんかラグア先生、そうかよ、とか投げやりに言っている。

「まあ、それでも最初の方は一緒に行くよ。
 一応こっちにも監督責任があるからな」

「ありがとうございます」

「それにしても、天才って本当にいるんだな……」

 それは一体どういう意味だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いやー、最初からお金もらえるとは思わなかった!」

「そうだね。
 最初金貨一枚って言われた時、無理だろと思ったんだけれど……」

「ほんと、運がよかったよね。
 ああ、初めて自分で稼いだお金だ!」

 そういって、銀貨一枚を手に持ち目をきらめかせているのがフェリラ。今回はひとまず余剰分のお金をもらうことにしたのだ。それが銀貨2枚と銅貨15枚。予想以上にもらえた。なるほど、確かにダンジョンに行きたがるわけだ。それに売り上げの一部は王室に献上するみたいだし、国としてもダンジョンにはぜひ参加してほしいのだろう。

「ねえ、何を買う!?」

「フェリラの好きなものでいいよ」

「うん。
 俺は特にほしいものないし」

「本当にいいの!?
 あたし、ずっとケーキっていうの食べてみたかったんだ」

「いいよ、買ってきなよ」

「ありがとう!」

 フェリラを見ていると和む。俺たちに出会う前、いろいろと強いられてきたはずなのに、純粋な心が残っていて。まぶしく感じる。隣を見るとリキートもそんな顔をしていて。まあ、貴族も闇深そうだもんな。

「三つ買ってきたよ!」

 店に入っていった時と同じ笑顔のまま、フェリラがおそらくケーキが三つ入った箱を掲げる。その時、横からやってきた何かにフェリラが捕まった。

「何!?」

 あいつは……。確か俺たちに絡んできたやつ?

「ガルシオン……」

 そう、そんな名前。また性懲りもなく絡んできたのか? って呆れたいが、あれはまずい……。フェリラは、たぶん対抗できない。下手に動けない状況に血の気が引いていくのを感じる。

「フェリラができるのって、弓くらいだよな」

「うん。
 体術はたぶんできない」

 今、ガルシオンのやつはフェリラの首に刃物を突き付けている。それさえなければ今すぐ助けることができるんだが……。って、なんでリキートは少し驚いた顔を?

「お、お前らのせいで!
 お前らのせいで!」

「なんのことかわかる?」

「いや全く。
 そもそも最近はギルド本部に全く顔出していないし」

「だよね」

 面倒な。さっきからずっと何かを叫んでいる。フェリラはすっかり顔が真っ青だ……。どうする。

『正直、私たちが何をしようとしても、相手にためらいがないならば、相手の方が早いです。
 誰か意識外にいる人間が、一度意識をそらしてくれないと……』

(……シャリラント、確か実体化できたな?)

『ああ、なるほど。 
 いつも以上に魔力いただきますよ?』

(ああ、それでいい。
 見えない状態のまま近くに行って、気をそらしてくれ)

『わかりました』

「ど、どうしよう、ハール」

「そのまま動かないでいて。
 今、シャリラントが意識をこちらからそらそうとしてくれている。
 その間に奪い返そう」

「シャリ……、あ、ああ。
 わかった」

 行きますと言った後、シャリラントが男の後ろに回ってくれる。そして姿を実体化して肩を叩く。そのまま気絶させてくれてもいいが、それでフェリラが傷つく可能性もある。

「ひぃ、お、おまえ何なんだ!」

 よし、今だ。

 一気に近づき、腹を蹴る。根性があるのか何なのか、それでもフェリラを離さずに一緒に倒れていく。腕を叩いて刃物を地面に落とし、なおかつフェリラをつかむ。

 よかった、なんとか無事にフェリラを奪還できた。シャリラントはいつの間にかまた姿を消し、リキートが男を捕まえてくれた。これで一件落着だろう。

「は、ハール!」

「大丈夫か?」

「あ、あたしは、大丈夫。
 ハール、腕!」

 言われてみてみると確かに腕から血が流れている。一体どこで負ったのか。まあ、かすり傷だ。実際もうすぐ止まるだろう。

「だめだよ!」

 とにかくフェリラを寮に送ろう、そう思ったのだが腕を引かれて動けない。なんだ?

「癒しの光よ、ハールの傷を治して!」

 言葉とともに腕に光がともる。フェリラが治癒をするときに出る光だ。言葉を共に言うということを学んだからか、以前よりも強くなっている気がする。すぐに傷が治った。

「ありがとう」
 
「ううん。
 あたし、これくらいしかできないから」

「そんなことない。
 最近は弓だってだいぶ上達しただろ?」
 
「でも、まだまだお荷物だ」

 大丈夫、そういって頭をなでてやる。フェリラは涙で顔をぐちゃぐちゃにしていたが、特にそれに抵抗することはなかった。

「あれ、もう終わっている?」

 ふいに聞こえてきた声。この声、聴いたことがある?

「刃物もったやつが女の子脅してるって聞いたんだけど……。
 って、君たち!」

 声の方を見ると、そこにいたのはキリク先生。騒ぎを聞きつけてこうして様子を見に来てくれたらしい。この後のことは任せていい、と言ってくれたキリク先生にお任せして、俺たちはフェリラを連れて寮へと戻っていった。そして一緒にフェリラが買ってきてくれたケーキを食べた。少し崩れてしまったが、十分おいしかった。

 後日聞いた話ではあの男は俺たちに突っかかったことが原因でパーティを外されたらしく、だいぶ厳しい生活を強いられていたようだ。その逆恨みで俺たちを襲った、と。もう二度と俺たちにかかわれないように罰を与えられたらしい。
 
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