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2章 孤児院と旅立ち

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 さて、フェリラも大丈夫そうだし、本題に入らせてもらおうか。って、リキートが身を乗り出した?

「ねえ、どうしてあんなに村を離れたがっていたの?」

 え、それ直接聞いてしまう? 結構リキートでぐいぐい行くんだね。俺は何となく触れられなかったのだが……。しかもそんな前のめり?

「え、あ、ああ。
 そうだね、あんたたちにはもう言ったしいいか。
 あのね、あたしが治癒魔法、光魔法ともいうみたいだけど、とにかくそれが使えるの知っているでしょう?
 魔法とかよくわからないけど、なぜか小さい頃から使えたんだ」

 光魔法。たしか特殊属性だよな。深くは教えてくれなかったやつだ。というか、この国には報告義務みたいのはないのか? それとも村人だから特にないとか。義務があるのは貴族って言っていたような……?

「治癒、っていうか光魔法って珍しいよね。
 よく、村の人は良く出ていくことを許したよね」

「許してもらってなんてないよ。
 たぶん言ったら許されない。
 でも、もう嫌なんだ。
 あそこの人は、あたしのことけがを治す便利な道具だって思ってる。
 あたしは道具じゃなくて、人間なのに。
 でも、チェシャがいたからあそこにいたんだ」

 チェシャって弟のことだよな。おそらく、出会ったときに抱えていた人。弟がいないなら、村にいたくないとたしかに言っていた。

「そんなに大切だったんだ」

「うん。
 弟は、チェシャはあたしの唯一の理解者で、ちゃんと人間として扱ってくれた。
 それに大切な家族だった。
 チェシャがそばにいてくれたから、あたしはあそこにいたんだ」

「ふーん……。
 仲がいい家族でいいね」

「そうかな。
 両親はあんまり好きじゃなかったけど。
 ねえ、リキートとハールの家族はどうなんだ?」

 あ、流れ弾。正直に話せる家族の話、ないんだけど。孤児院の子たちは、どうしても家族とは少し違う存在にしか思えなかったし。リキートもうつむいている。こういう話は切り上げるに限る。

「うん、この話はやめよう。
 俺から話しておきたいことがあるんだが、いいか?」

「え、家族の……、あ、うん。
 どうぞ」

 よし、ちゃんと空気をよんでくれたらしい。俺に発言を譲ってくれた。さて、まずは剣をだして、と。

「話したい事、っていうのはダンジョンでの拾い物のことなんだ。
 まあ、これ以外は基本的には俺たちの共有財産、みたいになるかと思うから話しておく」

「ハール、その剣は?」

「これは……、神剣、らしい。
 この剣に宿っている? 憑いている? シャリラントがそういっていた」

 あ、フェリラが思いっきり訝しげにこっち見ている。まあ、急にそんなこと言われても信じられないよな。リキートは俯いてしまっているし。わっ、急に顔上げないで!

「しんけん、って神の剣……!?」

 お、おお。リキートは聞き覚えがあるみたいだ。逆にフェリラはきょとんとしている。シャリラント、と呼びとすぐに姿を現してくれた。

「お呼びですか?」

「うん。
 自己紹介を」

「わかりました。
 私はミベラの神剣、シャリラント。
 よろしくお願いいたします」

「え!? 
 あ、はい、よろしくお願いします。
 フェリラです」

「リキート、です……。
 え、本当にどういうこと?」

「こういうこと、です。
 とにかく!
 これで俺もちゃんと武器を手に入れられたんだ」

 俺にもいまだによくわかっていないんだから、細かくは聞かないでくれ、本当に。とにかく強引にでも納得してもらう。

「え、シャリラント、様は女性? 男性?
 う、美しい……」

「私たちに性別、といった概念はありません。
 一番取りやすい形はそれぞれ女体、男体ありますが」

「え、ええ……?」

 なんだか自分で混乱を深めている人もいる。うん、話を次に進めよう。

「あと、他にもいろいろ拾ったんだ。
 鉱石と、魔石と、あとこのバッグ」

「ちょっと、ちょっとまって、ハール。
 ごめん、ついていけない……」

「あら、すごいわね!
 これを売れば多少はお金になるんじゃない?」

 三者三様ってこういうことだな。二人しかいないけど。って、そうじゃなくて、もしかしてフェリラは俺たちじゃ売れないって知らなかった? 途中のやつらは恐らく伝手があるだろうし、売れるのだろうけれど。

「あのね、フェリラ。 
 俺たちにはこういうの売れないらしい」

「どうして?」

「僕も伝え聞いた話なんだけど、ダンジョンで手に入れたものを売るには伝手がいるらしい。
 じゃないと買い取ってもらえなかったり、一番多いのは不当な値で買いたたかれたりするんだ」

「そ、そうだったの……。 
 じゃあどうしてハールはこれらを持ってきたの?」

「今は売れなくても、いつかは売れるかもしれない。
 なら持っていて損はないだろう?」

 今後冒険者養成校に入って、Dランク以上の冒険者を目指すのだ。その時になれば売れるはず。だから持ってきたのだ。それで二人も一応納得してくれたみたいだ。

「はー、もう、本当に……。
 ハールはすごいやつだよ」

「え、全然だと思う。
 俺だけだと知っていることが少なすぎるし」
 
「いや、そういう意味ではなくて。
 なんだか、ハールと一緒にいるとなんでもうまくいく気がする。
 うん、もう今日は休もう。 
 ハールの顔色よくないし、僕もいろいろ整理したい」

 そういうと、魔石とかしんけ、神剣とか……、となんだかつぶやいている。これは触れない方がいいやつですね。体調がまだあまりよくないのも確かだ。今日はもう休ませてもらおう。

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