『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
上 下
33 / 178
2章 孤児院と旅立ち

15

しおりを挟む
 
 なんだか少しばかり睨まれていた気もするが、今は構っていられない。外に出てきている奴は大方片付け終わったのだ。後はまっすぐにダンジョンに向かうだけ。

『ハール、もう厄介なので一気に行きましょう?
 リキートもいなくなり、もう辺りには人はいません。
 多少派手にやっても誰も見ていませんよ』

 うん、そうだね。俺も面倒だと思っていたところなんだ。同意した瞬間、明らかに自分の足の速さが変わる。魔獣ももう本当にいない。そして、今までとは違ってあっという間にダンジョンについてしまった。

『念のため、気を付けてくださいね。
 まだ中に残っているかもしれない』

 まだ残っている、ね。え、かもしれないって、逆にほとんど外に行ったってこと? な、なるほど。

『ちなみに、原則魔獣はダンジョン外ではダンジョン内よりも弱くなると言われています。
 なので、あまりダンジョン外には出ていきたがらないはずなのですが……』

 そんな仕組みになっているのか。それにしてもダンジョンって何なんだ? RPGとかあんまり好きではなかったから、あまりやったことがなかったんだよな。だからダンジョンのイメージはモンスターがわんさか出るって感じ。うん、ぼんやりした知識しかありません。

 さてさて、行ってみますか、ダンジョン。


 ここのダンジョンは洞窟のようになっていて、中に入るとすぐにひんやりとした空気を感じる。ここのダンジョンってこんな感じなのか……。すごく、きれいだ。きっと、中は薄暗く、重苦しい空気なのかと思っていたが、全然そんなことなかった。

「こちらは鉱石系のダンジョンなのですね」

「うわっ!」

 び、びっくりした……。急に姿を現さないでくれよ。しかもタイミング。でも、鉱石か。確かにいたるところに水晶のようなものが付いている。

「こういうのって持って帰っていいのか?」

「よいのでは? 
 今ここにいるのはあなただけ。
 そして、ダンジョンはいかなる人間のものにもなりませんから」

 まあ、ダンジョンを所有しようって気は起きないよね。領地内にあって利用しよう、ならまだわかるが。しかし、持って帰っていいならばありがたく持って帰ろう。俺たちにはもっとお金が必要らしいし。

「それをどこで売ろうとしているのやら……。
 まあ、いいでしょう。
 ハールがそれをお望みならば、私も手伝いましょう」

 すると、シャリラントが姿を変える。おお、これは採掘に便利そうだ。

「ですが悠長にしている時間はありませんよ。
 おそらく、このダンジョンの長は命がつきかけています」

 ダンジョンの長? それはつまりボスみたいな感じか。その命がつきかけている?

「詳しい説明はいずれどなたかがしてくれるでしょう。
 今は早く用事を済ませることを優先してください」

 あ、はい。すみません。取れやすそうなものだけをとる。持っている袋が小さくて、全然取れない! こんなことなら、もっと大きな袋を持ってくるべきだった。

 全然取れていない気がするが、まあいい。リキートの話だと、おそらくこれも伝手がないと売れないだろうし。ひとまずシャリラントの指示にしたがって進んでみよう。

 いっそ不気味なくらい静か。敵があふれていても厄介だが、これはこれで怖い。シャリラントもすっかり静かになってしまったし。途中何度か曲がり、そして少し下る。その先に『何か』はいた。

「もしかして、あれが?」

「ええ、このダンジョンの長です」
 
 長、つまりボスというくらいだ。巨大ゴブリンとか、そんなものを予想していたのに全然ちがった。その白い『何か』は丸まっていた。そして体が大きく上下している。呼吸があらいのだろう。呼吸の音まで聞こえてくる。

 俺たちが近づくと、その『何か』はゆっくりと顔をあげてこちらを見た。獣、のようである。頭はあるし、四肢もある。だが、コロッとした体にふわふわの体毛。かわ、いくはないが、到底あれらのウルフやゴブリンの大本となった、このダンジョンの長には見えない。

「ああ、やはり直前でしたか」

 なんの、そう聞こうとしたところで、不意に長の体がはじけた。物理的にはじけたわけではない。長の体を中心として真っ白な光が爆ぜたのだ。

「一体、何が……?」

「何が、ですか。 
 とにかくほら、これで長は消えましたよ」

 シャリラントが指さす先。そこにはもうあの長の体はなかった。かなり大きかったから、そこにあったら見落とすことはないだろうし。ただその代わり、といった様子で何かが落ちていた。

「これは……、カバン?」

「ああ、いいものを出しましたね。
 あれを持っておくと非常に便利ですよ」

 ひとまずシャリラントの許可は下りた。きっと触っても危険なものなのではないだろう。恐る恐る手にとる。それは手触りの良い素材でできたカバン、のようなものだった。さすがにダンジョンの長が出すものだ、ただのカバンではないだろう。
 もしかして……。

「ねえ、シャリラント、これって」

「アイテムボックス、と呼ばれるものです。
 見た目以上に入りますので、とても便利ですよ」

 やっぱり! ものすごくありがたい。今までは荷物を運ぶのにも、かなり苦労していたし。それに、これがあるなら行きにあまり取れなかった鉱石ももっととれる。

「ハール、何をのんびりしているのです? 
 早くここを出なくては。
 鉱石なんて、採れるわけがないでしょう」
 
 どういうことだ? そう思っているあいだにもシャリラントがせかす。とにかく従っておこうと、急いでその場を後にした。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

かみたま降臨 -神様の卵が降臨、生後30分で侯爵家を追放で生命の危機とか、酷いじゃないですか?-

牛一/冬星明
ファンタジー
神様に気に入られた悪女令嬢が好きな少女は眷属神にされた。 どう見ても人の言う事を聞かなそうな神様の下で働くなって絶対嫌だった。 少女は過労死で死んだ記憶がある。 働くなら絶対にホワイトな職場だ。 神様のスカウトを断った少女だったが、人の話を聞かない神様が許す訳もない。 少女は眷属神の卵として転生を繰り返す。 そいて、ジュリアーナ・マジク・アラルンガルはこの世界に転生された。 だが、神々の加護を貰えないジュリアーナはすぐに捨てられた。 この可哀想な神様の卵に幸はあるのだろうか?

処理中です...