『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
上 下
7 / 178
1章 皇国での日々

6

しおりを挟む

「さて、ではお勉強を始めていきましょうか」

「よろしくお願いいたします、リヒト」

 ああ、素直ってかわいい、そんなことを言いながらにこやかなリヒト。きっと今まで苦労してきたのだろうな、ということが少しだけわかる。
 
 今日はリヒトの授業初日。授業はリヒトの仕事の合間をぬって行われることになったので、今まで時間が取れなかったのだ。無理をさせてしまって申し訳ない……。別に僕は勝手に勉強するから、とも言ったのだが断られてしまった。資料を用意するのも大変だからもう直接教える、と。そういわれてしまえば、否とは言えなかった。

 見た目からしてそんな気はしていたが、リヒトは副隊長ではあるが、基本は現場にはいかない。事務仕事の補佐がメインみたいだ。以前、この隊について軽く説明してくれたのだが、この隊は国内で発生したダンジョンの攻略をメインにしているらしい。だから、兄上が隊長として隊を率いて、ダンジョンへ向かう。そこからの報告をまとめたり、各所とのいろんな調整をしたりといったことをリヒトがやっているみたいだ。

 そしてダンジョン。詳しくは教えてもらえなかったが、ここにはそんなものがあるのだ! まさにファンタジー! 今は禁止されているけれど、いつかダンジョンに行ける日が来ることが楽しみだ。

 さて、剣がある、ダンジョンがある、そんなこの世界にはなんと魔法もあるらしい! 教えてくれ、とせがんだが時間がないと断られてしまった。その代わり今度兄上がまとまった時間をとれる日に訓練に付き合ってくれると約束してくれたのだ。ますます兄上の休みが楽しみです。

 と、今はまず授業に集中しないと。

「まずはどこまでご存じか知りたいのですが、一度も家庭教師が付いたことがなかったのですよね」

「はい」

「では、漏れがあっても困りますから初めから行きましょう」

 そういうと、早速国の説明から入る。この国がアナベルク皇国というのはさすがに知っています。周辺の国が載っている地図を広げると簡単に付近の国の説明をしながら、皇族の話になっていった。

「まず、陛下にはあなたの母君であるリゼッタ側妃も含め、5人の妃がいます。
 スランテ王国の王女であったショコランティエ皇后、ジャグラ公爵家の令嬢であったフロラーン皇妃。
 そして、元サーン伯爵家令嬢のミヤンテラ第一側妃、元シャラべ王国王女のシラマーラ第二側妃、最後にリゼッタ第三側妃。
 皇后から側妃に至るまで、明確な順位付けがされているのが特徴ですかね。
 特に気を付けていただきたいのがショコランティエ皇后です。
 この方は野心家ですからね」

 そういって苦笑いするリヒト。うん、それは知っていた。本当にお近づきになりたくない人ですね。僕は後宮でおこなわれるお茶会に出たことがないから会ったことがある人が皇后くらいなのだけれど、それ以上に警戒しなくてはいけない人がいなかったことは少しだけ安心した。あの人よりも厄介ってもう無理って思うもの。まあ、息子はなかなかの人物だったけれど。

 そのあともそれぞれの子である異母兄弟の説明がされる。自分が第七皇子だって知ってはいたけれど、こうして兄弟の説明されるとなんだかなー、って気持ちになる。元が一人っ子だったからっていうこともあるかもしれないけれど。

「どうして、母上も兄上も僕にこういう説明をしなかったのだろう?
 簡単には教えていただいたけれど、こうして一人ひとり説明されたのは初めてだ」

「……、これは私の想像でしかありませんが。
 きっと皇子を守りたかったのでしょう。
 何も教えないことで、あの離宮だけで生きることで、後宮の様々な問題に触れさせないようにしていた。
 それがあの方たちなりの守り方だったのでしょう」

 それが正しいかったのか、それはまだわかりませんが。そう付け加える。ああ、きっと。母上と兄上のやってきたことが正しかったかどうか、証明できるのは僕だけなんだ。僕がこの後どう生きるかで、決まってしまう。背筋が伸びる思いがした。
 
「そういえば、皇子は皇帝陛下にお会いしたことはありましたか?」

「何度かあるよ。
 だけど、話したことはない。
 お会いするときはいつも母上に会いに来られる時だから、僕はすぐに退室するんだ」

「そうでしたか。
 後、皇族にお会いしたことは?」

「あと……、あとは皇后陛下と第2皇子くらいかな。
 わざわざ嫌味を言いに来られるんだ。
 それ以外はお会いしたことがない」

「両陛下と第2皇子にしかお会いしたことがないとは、何とも珍しい。 
 ふつう逆ですよ。
 特使などの謁見でも皇妃様などが出るだけ、ということもありますし」

 それはいいのか、と思わず突っ込みたくなったのは仕方がないと思う。さすがに皇帝としての役割はきちんと果たしている、よね? え、なんでそこで目をそらすんですか?

「まあ、そこは置いといて。
 もう顔を合わせた方もいると思いますが、今後は誰ともお会いする機会もあります。
 充分にお気をつけください」

 ううん、人間関係ってやっぱり面倒。このままではいけないということは知っている。けれど、ああやって守られている方がやっぱり楽ですね……。
 
 そのあともまちまちとした間隔ではあったが、リヒトとの授業が開催された。リヒトは優秀な先生で、僕にとても分かりやすく説明してくれる。本当に自分が神童になったのではないかと勘違いさせてくれるほどだ。

「いえいえ、皇子が優秀なのですよ。
 私は今まで誰かに教えたことはありませんが、この速度が異常なことはわかります。
 ……意図したこととは違うのでしょうが、家庭教師をつけなくて正解だったのかもしれません」

 えーっと? 家庭教師をつけなくて正解って言われると、なんだか複雑な気がする。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ
ファンタジー
 普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。  目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。  人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。  全三部構成の長編異世界転生物語。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

処理中です...