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第4章 ジルネイ編

身勝手な方々

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 エイケンとセナの思わぬ関係にサイ、アディオンが驚きの声をあげ、スカーレットは驚愕の顔のまま固まっていた。

 「スカーレット。いつまで驚いている?」

 サイがスカーレットの背中を軽くたたき声をかけた。

 「…はっ!?師匠!私気を失ってたのか、セナ様がエイケン様と血縁関係という悪夢を!」

 「ふむ。スカーレット。残念ながら、それは悪夢ではなく現実だ」

 「なっ!?そ、そんな…………」

 「お前ら!大概ひでぇな!!」

 意識を取り戻したスカーレットが悪夢から解放されたような顔をしたが、サイの一言で、再びこの世の終わりのような顔をした。

 「だって!ぜんっぜん!似てないじゃないですかっ!」

 「昔は顔だってよく似てるって言われたわっ!なっ?セナ!」

 「うん?たしかに、よく言われたね」

 「そんなわけないじゃないですか!丸焦げ筋肉ダルマのエイケン様と、穏やかで柔らかいセナ様のどこがっ!」

 「わーっはっは!丸焦げ筋肉ダルマだって!」

 「我が弟子ながら的確な表現だな」

 「おま…本人が認めてんのに…なんか俺、お前らにわるいことしたかっ!?」

 激高するような勢いでいうスカーレットにエイケンが反論したが、結局無駄におわりがっくりと肩を落とした。

 「まぁ……いいよ。もう……それで?どういう流れでセナがここで修業なんかしてるんだ?」

 あきらめの境地という感じでエイケンがサイヘ尋ねた。

 「あぁ、セナ殿と一勝負試合ってな。それで興味がでたので連れてきた」

 「はぁ?なんでお前とセナが?全然意味わかんねぇよ!おい!アディオン説明しろ!」

 「ん?あぁいいよ?それはね?…………」

 サイの説明が意味不明すぎて混乱したエイケンがアディオンへ助けを求めるように説明を求め、アディオンは、セナがリネア王国の首都リネストでの出来事などから現在に至るまでを話した。

 「まぁ、ボクの知ってる流れはこんなところだね。ただ本人が目の前にいるのにボクに聞く君もどうかなと思うよ?」

 「こいつは口下手だからいいんだよ……それより、セナ?おまえ色々やりすぎだろ…………」

 アディオンの説明をきいたエイケンがセナをみながら呆れたようにつぶやいた。

 「は、ははははっ…………ごめん」

 視線に耐えきれず、ごまかすようにセナは笑ったが、エイケンの視線が変わらなかったので最終的に謝罪した。

 「まぁいい、とりあえず、俺のとこ来いよ。お前を会わせたい人もいるし、そこでゆっくり話を聞かせてくれ」

 「え?それはいいけど……会わせたい人ってだれ?」

 「いいから、お前も俺に聞きたいことがあるだろ?」

 「うん、そうだね……沢山あるよ」

 「決まりだな。んじゃ、早速行くか!」

 エイケンの申し出にセナが了承し、すぐにでもセナを連れて行こうとした所。

 「エイケン待て。セナ殿はまだ修行の途中だ」

 「そうだよ!今すぐはボクも許可できないね!」

 サイとアディオンがエイケンを引き留めた。

 「あぁ?修行だったら俺がつけてやっからいいよ。今までサンキューな二人とも。いくぞセナ」

 引き留められ、露骨に不機嫌そうな顔になったエイケンがサイとアディオンにひらひらと手を振り言った。

 「貴様がまっとうな指導など、できるとは思えん」

 「まったくの同意見だね」

 サイとアディオンが冷たい目線でエイケンを見つめながら言った。

 「はぁ?セナお前、拳闘士なのか?それか治療魔法士なのか?」

 「ん?僕は一応、剣士だけど……?」

 「なら専門は俺だろ?そもそも遠路はるばるきた甥っ子の面倒見るって言って、どこが悪りぃんだよ?」

 セナの回答を聞きエイケンが勝ち誇ったように言った。

 「私は師匠だ」

 「ボクは主治医だよ?中途半端な血縁なんて関係ないね!」

 エイケンの言葉を聞き、サイは腕を組みふんぞりかえり、アディオンは腰に手を当て胸をはり言い切った。

 「中途半端って……おもいっきり近けぇ繋がりだろうが!」

 「あ、あのぉ~」

 「「「 あ゛ぁ? 」」」

 「ひぃ!?」

 3人の言い争いにおずおずと、スカーレットが口を挟んだ。結果、悲鳴を上げた。

 「なんだ?スカーレット。私は今、このわからずやに道理というものを教えねばならないところだ」

 「今ちょっと立て込んでるから、ごめんね?スカーレット」

 「いえ、とんでもない。ってそうじゃなくてですね!私たちもエイケン様のところに行けばいいのでは?」

 「「「 あっ…… 」」」

 殺気立つ3人にスカーレットが、おずおずと言うと3人は短く声を上げ固まった。

 「……エイケンが急に無理やりセナ君を拉致しようとして、焦っちゃったね」

 「そうだな……エイケンのせいだな」

 「なっ!?お前らが勝手に邪魔したんだろ!」

 少し間を開けてアディオンがつぶやくとサイも同意した。

 「まぁ、いいよ。んじゃ、皆で行くか」

 「そうだな。たまにはいいだろう」

 エイケンの言葉にサイが頷いた。

 「じゃぁ、各自荷物をまとめてついてきてくれ。あぁそれと、セナは身内だからいいが、お前らには入国に必要なものを書いてもらうぞ」

 「なにか書類が必要なの?」

 「あぁそうだ」

 エイケンの言葉にセナが訪ねると、エイケンは懐から紙を取り出しながら答えた。

 「アディオンとスカーレットは申請書な」

 「うん」

 「わかりました」

 「それでサイは申請書だ」

 「いらん。入国のほうをよこせ」

 「ちっ……ダメだったか……ほらよ」

 エイケンの取り出した紙を受け取ったアディオンとスカーレットが、何かを書きこみ始め、サイは受け取った紙をクシャッと握りつぶし、地面に投げつけるように落とした後、踏みつぶしながらエイケンに手を差し出し、不機嫌を隠さずに言った。

 「へぇ、出入国の管理だけじゃなく、結婚まで管理してるのかい?」

 「まぁな、ちなみに別れる時も必要だぜ?」

 「へぇ、何度か行ったことあるけど、ボク知らなかったよ」

 「おじさん!まさか……戸籍を!?」

 「ん?あぁそうだぜ?セナ」

 アディオンが感心したように言い、セナの焦ったような問いかけに、ニヤリとしてやったりの顔をした。

 「すごいね……」

 「へへっ、まぁな!」

 セナが感心し、尊敬のまなざしでエイケンをみると、少し照れ臭そうに、まんざらでもないかのような笑顔をエイケンがみせた。

 「それにしても、まだ諦めてなかったんだねぇ?」

 「う゛っ……」

 そんな雰囲気をぶち壊すように、いたずら心満載といった顔をしアディオンがエイケンに言うと、うって変わって、エイケンは気まずそうな顔をし、言葉を詰まらせた。

 「ん?アディオンさん、何をですか?」

 「ふふふっ。それはねぇ……」

 「わぁぁぁぁ!アディオン!言わなくていい!!」

 セナが不思議そうな顔をして尋ねると、アディオンはチラチラとエイケンをみながら面白そうにもったい付け、それをエイケンが顔を真っ赤にして慌てて制した。

 「セナ様、エイケン様はで師匠にずっと求婚し続けているんですよ」

 「えぇ!?じゃぁ、もしかしたらサイさんは、僕の叔母になるかもしれないのっ!?」

 「なんでそうなるん……」

 「そ!そうだぜ!セナ!!」

 スカーレットの言葉にセナが驚き、的外れな回答を述べると、呆れたようにスカーレットが否定をしようとして、我が意を得たりとしたエイケンに遮られた。

 「ほら!サイ!セナの身内にもなれるし!なっ!?」

 「ふむ。たしかにそれは魅力的な話だ……」

 「おぉ!?」

 「だが、それならば最初からセナ殿の嫁になるほうが早かろう?」

 「ぐぅっ」

 エイケンの満面の笑みでの提案にサイが答えると、エイケンはぐうの音をあげた。

 「師匠……さすがにお嫁さんは……年の差が……はぐっぅ!」

 「スカーレット!?」

 そのやり取りを見て呆れたようにいうスカーレットに、サイが残像すら残さない速さで鳩尾に肘を撃ちこみ、急に倒れこんだスカーレットにセナが驚きの声をあげた。

 「ふふふっ。十分楽しんだし、そろそろ行こうか」

 「他人事だと思いよって……まぁいい、そうだな、そろそろ行こう」

 「あぁ、そうだな」

 「いや、ちょっと!スカーレットは!?」

 アディオンが面白かったといい、サイとエイケンが同意した。

 「セナ殿、すまないがスカーレットを担いでついてきてくれ」

 「それくらいじゃ死ななないから大丈夫だよ?あぁ、それとセナ君の重りもちゃんと持ってきてね?」

 「重りってあれのことか?ありゃ船にはのせらんねぇだろ?沈んじまう。向こうで用意するから置いてけよ」

 「しかたない向こうでまた作ろう」

 「そうだな」

 「ちょ!まってくださいよ!!」

 心配するセナをよそに3人がどんどん話を進め、エイケンがきたほうへ歩き始めたので、セナは自身の荷物とアディオンの荷物を片手でもち、スカーレットを背負って後を追った。

 
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