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第4章 ジルネイ編

首相

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 セナ達がジルネイ共和国の首都ジュネイについた翌日の朝

 「おはようございます」

 「セナ様おはようございます。どうぞこちらにお座りください」

 セナがアディオンの紹介で泊った宿の1階にある食堂へ入ると、店主のリリが笑顔で席を勧めてきた。

 「ありがとうございます」

 勧められるまま席に着いたセナが礼を言った。

 「当宿はどうでしたか?ごゆっくりお休みになられましたか?」

 水の入ったグラスをセナの元へ置きながらリリが尋ねてきた。

 「はい。室内が4つ、ドアで仕切られていたので静かに休めました」

 セナがほがらかにいうと、リリも笑顔を浮かべた。

 「それはよかったです。セナ様が日ごろお食べになっている物とは比べられませんが、当宿は食事もなかなかの評判を頂いておりまして、お口に合えばいいのですが是非お食べ下さい」

 「はい。ではお願いいたします」

 「かしこまりました。少々おまちください」

 リリの言葉にセナが朝食を願うとリリは満足気に頷きキッチンへと向かった。

 「おっ?居た居た。セナ君おはよう」

 「セナ様~、おいて行くなんてひどいですよ」

 食事を待ってすぐにアディオンとメディーが食堂に現れ挨拶をかわすと、セナと同じテーブルに着いた。

 「セナ様お待たせいたしました。ってアディオンあなたもいたの?」

 「ありがとうございます。すごくおいしそうですね」

 「今来たところだよ。それよりボクたちにも朝食を頼むよ」

 「はいはい。かしこまりました」

 リリがセナへ朝食の乗ったプレートを運んでくるとアディオンへと声をかけ再びキッチンへと戻っていった。

 「ん?セナ君どうしたんだい?食べないのかい?」

 「いえ、せっかくだから、お二人の料理が来てから一緒に食べようかと」

 「気にしないでください。冷めちゃう前に先に召しあがってください」

 アディオンの言葉にセナが答えると、申し訳なさそうにメディー言った。

 「いえ、せっかくですから一緒に食べましょう」

 しかしセナがそういうのでアディオンとメディーは顔を見合わせ困ったかのように笑いあったが、結局リリが二人の食事をもってくるまで、セナに待ってもらうことにした。

 「あっ、そうだ。今日の予定だけど、朝食を取り終わって準備ができ次第、首相に会いに行くから」

 「えっ?アポとったんですか?」

 「うん。昨日この街に着いた時点でね」

 「いつのまに……」

 アディオンが今日の予定をいうと、セナ達はアディオンのそつのなさに驚いた。

 それから3人で朝食を食べ終わり、部屋で身支度を整えた後、ジルネイ共和国首相官邸へと向かった。

 「おとまり下さい。本日はどのようなご用命ですか?」

 官邸前にいた騎士に声をかけられた。

 「今日の午前中に首相のリレイに会う約束をしてるんだけど?」

 「失礼ですがお名前を頂戴しても?」

 「ボクはアディオン、こっちがセナで、この子がメディーだよ」

 アディオンが騎士にアポイントを取っていることを伝え名乗った。

 「えっ?アディオン様!?……はい。確認取れました。お通り下さい」

 名乗りを聞いた騎士が驚きながらアディオンを見た後、紙を見て何かを確認し通行の許可を出した。

 「ありがとっ。さぁ、行こうか」

 アディオンが騎士に右手をあげ、軽い感じで礼をいうと、セナ達を引き連れて官邸内へと進んでいった。

 「ここに来たことがあるんですか?」

 迷わずスタスタと歩いていくアディオンに、セナが声をかけた。

 「ん?何度かね?さぁついたよ」

 何度目かの階段を登り切り、数ある部屋の一つの前で立ち止まりアディオンが、セナとメディーに言った。

 コンコン

 「はい。あら?アディオン様、ご無沙汰しております。リレイ様がお待ちしております。どうぞこちらへ」

 「やぁ、メル久しいね。」

 アディオンがドアをノックすると、扉から出てきたメルと呼ばれる女性がアディオンに柔らかな笑顔を浮かべ挨拶をし、奥の部屋へと案内した。

 コンコン

 「リレイ様。アディオン様がお付になられました」

 「ありがとう。入ってもらって」

 メルがドアをノックし、アディオン達の到着を知らせると部屋の中から返事が返ってきた。

 「やぁ、リレイ久しぶり。相変わらず眉間に皺寄せて頑張ってるみたいだね?」

 「余計なお世話よ……あなたこそ、変わりないじゃない。それで?急に顔なんて出して何のようなの?」

 部屋に入ると、窓際の大きな机に座った、栗色の髪を後ろでまとめあげ、黒ぶち眼鏡をかけたリレイにアディオンが声をかけた。

 「あぁ、今日は君に会わせたい子がいてね?連れてきたんだよ」

 「会わせたい人?それこそ珍しいわね?」

 アディオンが来訪の理由を述べると、リレイは眼鏡をあげてアディオンを見ながら言った。

 「ほら、セナ君挨拶して」

 「あっ、はい。初めまして、私はリネア王国の王都で冒険者をしております。セナと申します」

 「私はメディーと申します。リネア王国で獣医などをさせていただいております」

 アディオンの催促にセナとメディーが名乗り一礼をした。

 「これはご丁寧に、私はジルネイ共和国首相を務めさせていただいている、リレイと申します。お二人とも歓迎いたしますわ」

 セナ達の挨拶に立ち上がりリレイが挨拶を返し握手を求めてきたので、メディーとセナは笑顔で握手をした。

 「え?あなた……」

 「ふふふっ、気づいたかい?」

 メディーと握手をし、次にセナと握手をしたリレイが驚いた顔をしセナの顔を見つめながら言った。

 「え?どうしたんですか?」

 リレイとアディオンの様子にセナが戸惑いながら尋ねた。

 「この感覚……剣王に似ている?」

 「ん?そうなのかい?さすがのボクもそこまではわからないよ」

 セナの疑問に答えることなくリレイとアディオンが会話を交わしていた。

 「あのっ!お二人で何のお話をしてるんですか!?」

 不安げな顔をし、オロオロするセナを見かねてメディーが声を大きくリレイとアディオンに尋ねた。

 「ん?ああ、ごめんごめん。なんでもないんだよ、ただリネアの英雄は剣と魔法を使いこなせる変わった子だって話をしていたのさ」

 「え?この子がそうなのっ!?」

 アディオンの言葉にリレイが驚き何度もセナとアディオンを交互に見ながら言った。
 
 「そうだよ?そして、リネアの未来を変えた子さ」

 「国の未来を?……どういうことよ」

 アディオンが胸を張り言うと、リレイが眼鏡をクイっとあげて、厳しい目つきで言った。

 「それも伝えるために来たんだよね。とりあえず座ってお茶でも飲みながら話そうか?」

 「え?えぇ、そうね。いつまでも立たせたままで、すみません。こちらにおかけになってください」

 アディオンの言葉に我に返ったリレイがセナ達に席を勧め、全員すわると、メルが人数分のお茶を持ってきた。

 「せかして悪いけど、さっきの話はどういうことなの?」

 お茶を一口飲んだリレイがアディオンに声をかけた。

 「ズズズっ。ん?それはね……」

 お茶を飲みもったい付けるようにアディオンは、セナと保護した子供たちのことを詳しく話、そしてリネア王国が学校を立てることを、詳しい内容は言わず話し始めた。

 
 

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