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第3章 ―旅情初編―

合流

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 翌朝、セナ達は起きると朝食の準備を始めた。これには騎士たちにも協力を仰ぎ、セナ達、子供たち、そして騎士たちの分も作り、そして全員で食べた。

 「それでは、セナ様マルンでお待ちしております」

 マインがセナへと挨拶をし、次いでコニーたちも挨拶をした。

 「姉っちゃ達の言うごどどご、ちゃんと聞ぐんだよ?えね?」
※(お姉さん達の言うことを、ちゃんと聞くんだよ?いいね?)

 リリスが馬車の中を覗き込み、子供たちに声をかけた。

 「姉っちゃも、あどがらぐるんだよね?」
※(お姉ちゃんも、あとからくるんだよね?)

 不安げな表情で、女の子の一人がリリスに言った。

 「大丈夫、ほがの皆もづれで絶対行ぐがら、ちゃんとまってでね」
※(大丈夫、ほかの皆もつれて絶対行くから、ちゃんとまっててね)

 「絶対だよ?」

 少女の言葉に、リリスは笑顔で頷いた。

 「じゃぁ、皆さん子供たちをお願いします」

 「はい」

 セナの言葉に、マインたちが返事をし、馭者を務めるメディーが馬を動かした。

 「達者でな!」

 スレッガーが馬車に向かって声をだすと、騎士たちもそれぞれ声をかけていった。

 「身体どご大事さ行ぐんだよ!言うごどちゃんと聞いで、え子にするんだよ!」
※(身体を大事に行くんだよ!言うことちゃんと聞いて、いい子にするんだよ!)

 馬車を走って追いかけながら、リリスが子供たちに手を振り声をかけた。子供たちは泣きながらも、うんうん頷き、見えなくなるまで手を振っていた。

 「行ってしまいましたね……」

 「……はい」

 エリスが少し寂しそうに言うと、リリスや騎士たちも頷いていた。

 「無事に着いてくれればいい」

 スレッガーがつぶやくようにいい、セナ達も頷いた。

 「ここからは、僕たち大人が頑張る番です。あの子達がこの国に来て本当によかったと、心から思ってもらえるように頑張らなければなりません」

 「私達も恥じぬよう精進いたします」

 セナの言葉にスレッガーが敬礼をすると、騎士たちも表情を引き締め敬礼し職務へと戻っていった。

 「それじゃぁ、僕たちもリリスさんのお兄さんたちを探しに行きましょうか」

 「そうですね」

 「セナ様、エリスさんありがとうございます。おねがいします」

 セナの言葉にリリスが礼を言い、セナ達は再びジルネイの国境へと向かった。

 「ご武運を!」

 国境をこえる際、スレッガーと騎士が綺麗に列をなし敬礼してセナ達を見送った。

 そして、ジルネイの国境検問所へとたどり着くと、昨日対応した騎士が立っていた。

 「セナ様ご苦労様です。少女の分50ギルをお支払いいただければ、そのままお通り頂けます」

 「昨日の、はい、ありがとうございます。では、これで」

 セナは騎士にリリスの入国分の料金を手渡し検問所を後にした。

 「リリスさん?お兄さんとはいつ頃別れたんですか?あと、ジルネイのどの辺に向かうと言っていたんですか?」

 セナがリリスに兄の行方を尋ねると、リリスは思い返すように考え答えた。

 「えっと…別れたのは2日前です。兄たちは検問所からあまり離れていなく、人が多そうなカダルの街を目指すと言ってました」

 「ならジルネイの首都へ向かう一本道を南に進めばありますね。別れてから二日程度だとそこまで離れていないと思いますし、合流できそうですね」

 リリスの言葉を聞き、エリスの先導の元、移動を始めた。

 「お兄さんたちは歩いているんだよね?」

 「はい」

 「なら急げば結構早い段階で追いつけるかもしれない」

 セナ達はリリスの言葉を聞き、馬の足を速めた。

 そして道中、昼食を取りさらにカダルという街を目指し馬を進めた。

 「あっ!あれは!」

 そして、日がわずかに西に傾き、昼食をとった場から3時間ほどたった頃、リリスが道の先を指さし叫んだ。

 「いたの!?」

 「たぶんあれです!」

 エリスの問いに、リリスが興奮気味に答えセナ達は急いで、先を行く集団へと近づいた。

 「おーい!兄っちゃ~!皆ぁ~!!」

 リリスが声を張り上げ呼ぶと、先を行く集団が足を止めセナ達のほうへ振り向いた。そして、セナ達は集団へとたどり着いた。

 「あれ?リリスが?なんでこさいるんだ?他の皆は?」
※(あれ?リリスか?なんでここにいるんだ?他の皆は?)

 集団を引き連れていた青年が、驚きながらリリスへと声をかけた。

 「皆は無事だ、このふとたぢにだすけでもらって、リネアにいるよ。兄っちゃ達も助げでぐれるっていうがら、迎えに来だんだ」
※(皆は無事だ、この人たちにたすけてもらって、リネアにいるよ。お兄ちゃん達も助けてくれるっていうから、迎えに来たんだ)

 リリスが嬉しそうに答えると、青年は驚きながらも探るような目でセナ達をみた。

 「怪しむのも仕方ないが、我々は君たちの力になりたいだけだ」

 エリスが青年の様子を察し、真剣な目でいうと、リリスが焦りながら二人の間に入ってきた。

 「兄っちゃ、このふとはエリスさんって言ってB級冒険者なんだよ!そいで、こぢらの方はリネア王国の英雄様なんだよ!」
※(お兄ちゃん、この人はエリスさんって言ってB級冒険者なんだよ!それで、こちらの方はリネア王国の英雄様なんだよ!)

 リリスが焦りながら言い、その後これまでの経緯も説明した。

 「そんた事…セナ様、エリスさん、妹だぢどご助げでぐれでどうも。それど疑ってわりでした」
※(そんな事が…セナ様、エリスさん、妹たちを助けてくれてありがとうございました。それと疑ってすいませんでした)

 話を聞いた青年が、土下座をしながら感謝と謝罪をした。

 「頭をあげてください。君の立場を考えれば当然のことなんですから…ね?」

 セナが優しく青年の背中に手を置き、のぞき込むように顔をみながら笑顔でいうと、青年は涙を流しながら立ち上がった。

 「どうも。この恩は命さ代えでもお返しいだします!だんて、厚がましいお願いんだども、この子達もどうがお助げぐださい!」
※(ありがとうございます。この恩は命に代えてもお返しいたします!なので、厚かましいお願いですが、この子達もどうかお助けください!)

 涙を袖でゴシゴシ拭きながら青年がセナへと、深々と頭を下げ懇願した。

 「そんな風に思わないでいいですよ?皆が笑って安心して暮らせるように、微力ながら私たちが協力しますから」

 セナは青年の肩に手をあて、言い聞かせるかのように優しくゆっくりと声をかけた。

 「ありがとうございます!ありがとうございます!」
 
 「セナ様…ありがとうございます!」

 セナの言葉に何度も礼をいう青年とリリスに、セナとエリスは柔らかな笑顔で答えた。そして、セナはエリスにお金の入った袋を手渡した。

 「エリスさん?近くの町か村へはどれくらいで行けますか?」

 「そうですね…たしかカダルの前にあるオキギスという少し大きな村があったはずです。ここからだと多分、遅くても片道2時間でつくはずですが?」

 セナの質問にエリスが地図と記憶をたどりながら答えた。

 「じゃぁ、申し訳ないんですが、そこに行って子供たちが乗れる馬車をこれで手配してきてもらえますか?」

 「了解しました」

 セナの指示にエリスが頷き馬へと跨った。

 「エリスさん、馬車のまま国境を越えて、そのままマルンに向かいますので、場合によっては購入しちゃってください」

 「はい!おまかせを!」

 セナの言葉を聞き、エリスは少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔になり頷いて近くの町へ向かった。そして、セナはエリスを見送り、みえなくなると子供たちへと声をかけた。

 「今、お姉ちゃんが馬車を手配しに言ったから、皆はここで待ってもらえるかい?」

 セナの言葉に子供たちが、どうしていいのかオロオロし、青年とリリスをみた。

 「セナ様の言うことを聞いてここで待とう」

 青年の言葉に子供たちが頷き、道からすこし離れた場所に腰を掛けた。

 「それで今更失礼だけど君の名前をおしえてもらえませんか?」

 子供たちと一緒に腰を下ろしたセナが青年へと尋ねた。

 「あっ!も、申し訳ありません。私はリリスの兄でロイと申します」

 「ロイ君か、改めましてセナと言います。よろしくね?」

 名前を聞いたセナが笑顔で手を差し出し、ロイが笑顔で握り返した。

 「さて、往復最低でも4時間はかかるらしいし、簡単な物しか用意できないけど、皆でご飯をたべながら待とうか?」

 握手を終えたセナが立ち上がりながら子供たちに声をかけると、子供たちはロイの顔を見た。そしてロイが笑顔で頷くと、歓喜の声をあげ喜んだ。

 「セナ様!私も手伝います!」

 はしゃぐ子供たちを見て笑顔でリリスがセナへと申し出ると、ロイも立ち上がり手伝いを申し出た。

 「じゃぁ、僕たちで作ろう!」

 セナがリリスとロイに笑顔でいうと、二人は頷きあい三人は、はしゃぎながら周りにあつまる子供たちと、和気あいあいの調理をはじめた。

 
 

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