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第2章 リネア王国 ― 【王都リストニア編】
主従の治療
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セナの治療が行われていた一方で、メディー達の戦いも始まっていた。
「よし!迅風よ、痛くはないか?」
全身、傷だらけの迅風に聞くことなのか?とメディーはマーカス見て思ったが、どうやら、迅風の前足と後ろ足の付け根に取り付けた、太い帯のような物の当たり具合を見ていたようだった
「ふむ!大丈夫そうだの!よし!あげてくれ!」
「「はい!」」
マーカスの言葉に、若い錬金術師が返事をし、天井の梁に固定してある2つの滑車を使い、迅風を持ち上げ始めた。先ほど、巻き付けた帯のようなものは、このための器具である。
「ブルルル」
「迅風、少し我慢してね?あなたたちは寝かせて治療できないから」
両足が地面から少し離れ、不安げに鼻を鳴らした迅風に、メディーが優しく声をかけた。
「マーカス様?寝かせられないって、なんで吊るすんですか?」
「うむ、メディーの話では、馬や馬型の魔物も、長時間寝かせると、腹の中が動かなくなって、ガスがたまり、腐って死んでしまうそうじゃ。じゃから、あのように腹を避けて吊るし、足の負担を減らして治療するそうじゃ」
「ほぉ~、すごいですねぇ」
「まぁ、本来なら滑車をもって厩舎に行けばいいのだがなぁ、あの大きさでは、ここの設備くらい、しっかりした物でなければ、持ち上げることもかなわぬじゃろ?」
「たしかに…私が知ってるバトルホースの一回り…いや、二回りはデカいですもんね」
「おじい様!無駄話してないで、手を貸してください!」
マーカスと錬金術師達の会話を遮り、メディーが額に汗をかきながら迅風の傷のチェックをしていた。
「出血もそうだけど…魔力と体力の枯渇による衰弱か…ひどいね」
「メ、メディー様。もうよろしいですか?」
迅風の全身を、くまなくチェックしたメディーに、足を少しもちあげた錬金術師が、プルプル震えながらいい、メディーの了承を得て手を離した。
「いくつか深い傷があるから、そこをまず治療します! 迅風を眠らせるので、迅風が眠ったら、おじい様?頼んでいた器具を取り付けてくださいね!」
「うむ、まかせるがよい」
メディーの言葉に、マーカスが力強くうなずいた。
「迅風?この草には痛み止めと、眠りを誘う効果があるの。食べて?」
メディーが出した乾燥した草を、クンクン臭いを嗅いだ後、迅風はぱくりと食べた。これまでの屋敷での飼育や、治療により、メディーは迅風から、それなりの信頼を得ていたため、疑うことなく食べた。
それを理解したメディーは、嬉しそうに迅風を撫でた。
「ありがと。少し眠っててね?その間に必ず、手当を終わらせておくからね?」
メディーが優しくなでながら言うと、迅風はゆっくりと瞳を閉じていき、やがて寝息を立てた。
「ん。触っても反応ないし、いいようね? これから本格的な処置に入ります。申し訳ありませんが皆さんには、今一度お手伝いをお願いいたします」
「まかせい!」
「はい!」
メディーの言葉にマーカス率いる錬金術師たちが返事をした。そして、メディーの的確な指示に従い、次々と処置をこなしていった。
そのころ、セナの治療は、一進一退のような感じとなってしまっていた。
「し、師匠!やはり血が足りない!脈が弱まってきました!」
「くっ!諦めない!今、ボクの研究室に、秘蔵のポーションを取りに行かせているから!それまでに何とか処置を終わらせるんだ!」
スターシャが焦りながら現状をいい、苦い顔をしながらも、驚異的なスピードで処置をしながら、アディオンが答えた。
「ヒール交代します!」
「お…お願い…します」
限界までヒールをかけていた治療士が息絶え絶えなほどバテながら、礼をいって交代していった。なお、交代した治療士は治療室から出てすぐ壁に背を預け、へたり込んで眠りについた。
「んー!!せめて少しだけでも輸血できれば!」
「ないものねだりをしていてもしょうがない!高圧剤をあと0.3ml投与して!」
「はい!」
スターシャの苛立ちながらの願いに、励ますように声をかけるアディオンが指示を出した。
バン!
「スターシャ様!血を分けてくれる方が来てくれました!」
「えっ!?ほんとにっ!?」
「治療中に埃を入れないように頼むよ?それと、提供者には、すぐ検査に入ってもらって!」
レイファが興奮し、勢いよくドアをあけ叫び、スターシャが笑顔を浮かべていると、アディオンが冷静に指示をだした。
そして、治療士の一人が部屋を出て、血液提供者のエリスの検査をはじめた。
「アディオン様、提供者の検査おわりました。問題ありません」
「やった!」
「そっか!とりあえず300CC頂いて、提供者の体調を見てくれるかな?」
「はい!」
検査をした治療士からの言葉に、スターシャが喜び、アディオンも笑顔で話をした。
「さぁ…セナ君?皆、君のために手を貸してくれている。頑張っておくれよ?」
アディオンがセナを優しい目でみながらいい、治療を続けた。
「よし!迅風よ、痛くはないか?」
全身、傷だらけの迅風に聞くことなのか?とメディーはマーカス見て思ったが、どうやら、迅風の前足と後ろ足の付け根に取り付けた、太い帯のような物の当たり具合を見ていたようだった
「ふむ!大丈夫そうだの!よし!あげてくれ!」
「「はい!」」
マーカスの言葉に、若い錬金術師が返事をし、天井の梁に固定してある2つの滑車を使い、迅風を持ち上げ始めた。先ほど、巻き付けた帯のようなものは、このための器具である。
「ブルルル」
「迅風、少し我慢してね?あなたたちは寝かせて治療できないから」
両足が地面から少し離れ、不安げに鼻を鳴らした迅風に、メディーが優しく声をかけた。
「マーカス様?寝かせられないって、なんで吊るすんですか?」
「うむ、メディーの話では、馬や馬型の魔物も、長時間寝かせると、腹の中が動かなくなって、ガスがたまり、腐って死んでしまうそうじゃ。じゃから、あのように腹を避けて吊るし、足の負担を減らして治療するそうじゃ」
「ほぉ~、すごいですねぇ」
「まぁ、本来なら滑車をもって厩舎に行けばいいのだがなぁ、あの大きさでは、ここの設備くらい、しっかりした物でなければ、持ち上げることもかなわぬじゃろ?」
「たしかに…私が知ってるバトルホースの一回り…いや、二回りはデカいですもんね」
「おじい様!無駄話してないで、手を貸してください!」
マーカスと錬金術師達の会話を遮り、メディーが額に汗をかきながら迅風の傷のチェックをしていた。
「出血もそうだけど…魔力と体力の枯渇による衰弱か…ひどいね」
「メ、メディー様。もうよろしいですか?」
迅風の全身を、くまなくチェックしたメディーに、足を少しもちあげた錬金術師が、プルプル震えながらいい、メディーの了承を得て手を離した。
「いくつか深い傷があるから、そこをまず治療します! 迅風を眠らせるので、迅風が眠ったら、おじい様?頼んでいた器具を取り付けてくださいね!」
「うむ、まかせるがよい」
メディーの言葉に、マーカスが力強くうなずいた。
「迅風?この草には痛み止めと、眠りを誘う効果があるの。食べて?」
メディーが出した乾燥した草を、クンクン臭いを嗅いだ後、迅風はぱくりと食べた。これまでの屋敷での飼育や、治療により、メディーは迅風から、それなりの信頼を得ていたため、疑うことなく食べた。
それを理解したメディーは、嬉しそうに迅風を撫でた。
「ありがと。少し眠っててね?その間に必ず、手当を終わらせておくからね?」
メディーが優しくなでながら言うと、迅風はゆっくりと瞳を閉じていき、やがて寝息を立てた。
「ん。触っても反応ないし、いいようね? これから本格的な処置に入ります。申し訳ありませんが皆さんには、今一度お手伝いをお願いいたします」
「まかせい!」
「はい!」
メディーの言葉にマーカス率いる錬金術師たちが返事をした。そして、メディーの的確な指示に従い、次々と処置をこなしていった。
そのころ、セナの治療は、一進一退のような感じとなってしまっていた。
「し、師匠!やはり血が足りない!脈が弱まってきました!」
「くっ!諦めない!今、ボクの研究室に、秘蔵のポーションを取りに行かせているから!それまでに何とか処置を終わらせるんだ!」
スターシャが焦りながら現状をいい、苦い顔をしながらも、驚異的なスピードで処置をしながら、アディオンが答えた。
「ヒール交代します!」
「お…お願い…します」
限界までヒールをかけていた治療士が息絶え絶えなほどバテながら、礼をいって交代していった。なお、交代した治療士は治療室から出てすぐ壁に背を預け、へたり込んで眠りについた。
「んー!!せめて少しだけでも輸血できれば!」
「ないものねだりをしていてもしょうがない!高圧剤をあと0.3ml投与して!」
「はい!」
スターシャの苛立ちながらの願いに、励ますように声をかけるアディオンが指示を出した。
バン!
「スターシャ様!血を分けてくれる方が来てくれました!」
「えっ!?ほんとにっ!?」
「治療中に埃を入れないように頼むよ?それと、提供者には、すぐ検査に入ってもらって!」
レイファが興奮し、勢いよくドアをあけ叫び、スターシャが笑顔を浮かべていると、アディオンが冷静に指示をだした。
そして、治療士の一人が部屋を出て、血液提供者のエリスの検査をはじめた。
「アディオン様、提供者の検査おわりました。問題ありません」
「やった!」
「そっか!とりあえず300CC頂いて、提供者の体調を見てくれるかな?」
「はい!」
検査をした治療士からの言葉に、スターシャが喜び、アディオンも笑顔で話をした。
「さぁ…セナ君?皆、君のために手を貸してくれている。頑張っておくれよ?」
アディオンがセナを優しい目でみながらいい、治療を続けた。
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