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第2章 リネア王国 ― 【王都リストニア編】

厄介な依頼①

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 次の日の朝。日課を終えたセナが部屋で錬金術を勉強していた。

 コンコン

 「おはようございます。朝食の準備ができております」

 ノックと共に、部屋へ入ってきたレイファに言われ、資料などをマジックバッグへ入れたセナが、挨拶をした。

 「おはようございます。レイファさん。じゃぁ、行きましょうか」

 セナはそう答え、その後、レイファと二人で食堂に向かった。

 「エミル様おはようございます。あれ?ギルス様はお仕事ですか?」

 「おはようございます、セナ様。主人は城へ向かいましたわ。なにやら国王様に伝えたいことがあると言って、急いで向かってしまいましたの」

 「そうなんですか…。アリアのことで何かあったのかなぁ」

 セナの疑問にエミルが答え、セナはアリアのことで進展があったのではないかと思案した。

 「いいえ。そうではございません。昨日、セナ様が戦った魔物たちについて、少々、気になることがあるそうで、その関係でギルス様は登城いたしました。」

 セバスがそう話、セナが不思議そうな顔をしていた。

 「本来ならば、あの森に、あそこまでの規模の群れは、あり得なかったのでございます。それに、今回は、ゴブリンとオークの混成ということで、ギルス様が原因があるのであれば調べてほしいと、国王様に進言しに行かれたというわけでございます」

 セバスが補足したのを聞き、セナがそうなんだと納得した。

 「まぁ、難しい話はこれでおしまいにいたしましょう?昨日のことだって、もうセナ様がすべて切り伏せてしまったんですもの」

 エミルが笑顔でそういい、セナとセバスが苦笑した。

 その後、食事を終えたセナは、屋敷にある、とある部屋の前に来ていた。

 コンコン

 「マーカス様?セナです」

 「おぉ。セナ殿。入ってくだされ」

 セナがドア越しに名乗ると、部屋の中から声が聞こえ、声の指示どおり、セナが部屋へと入室した。

 「失礼し致します。マーカス様、おはようございます。本日もよろしくお願いいたします」

 「ふぉふぉふぉ。おはよう、セナ殿。あいかわらず固いのぉ」

 セナの挨拶に、朗らかな笑顔で答えた人物は、ほっそりとした小柄で、髪は白髪をオールバッグにした。年のころでいえば70歳代くらいの男性だった。

 マーカスと言われた、その男性は、リネア王国錬金術協会、会長。マーカス=フォルギアだった。

 「それでは、さっそく始めようかの」

 「はい、よろしくお願いします」

 マーカスが切り出し、セナが返答した。

 「それでは前回の宿題をだしてもらおうかの」

 「はい。こちらです。どうでしょうか?」

 マーカスから宿題を提出しろと言われ、セナは、マジックバッグから数本の金属でできた棒を取り出して、マーカスへと手渡した。

 「ふむ。儂が混ぜ込んだ金属をそれぞれにきっちり分けて取り出してあるの。これなら合格じゃ」

 「ありがとうございます」

 マーカスから合格をもらい、セナは笑顔で答えた。

 コンコン

 「誰じゃ?」
 
 「レイファです。」

 「おぉ!なんじゃ!レイファちゃんか!ずずずいーっと入ってこられるがよいぞ!」

 日ごろ、なぜかマーカスのところ近づかない、レイファが挨拶をして入室してきた。

 「講義中申し訳ございません。ギルス様からの至急の命により、セナ様をお借りしてもよろしいでしょうか?」

 レイファが無表情でマーカスに一礼しながら言った。

 「ギルス殿が?ふむ。それならば、仕方ないのぉ。じゃぁ、セナ殿の代わりにレイファちゃんが」

 「ありがとうございます。では、セナ様?さっさと行きましょう」

 マーカスが最後まで言い切る前に、レイファがセナに柔らかな笑顔でいった。

 「ちょっ!レイファちゃん?随分つれいないのぉ。年寄りは大事にせんといかんぞ?」

 「黙れ。エロ爺……。さ。行きましょうか。セナ様」

 マーカスが両手をワキワキさせながら、レイファにいうと、レイファは氷のような目でマーカスに言い放った後、セナへ慈愛に満ちた顔で話しかけた。

 「さぁ、ギルス様がお待ちです。こんなところに長くいてセナ様にマーカスエロ菌がうつったら大変です。」

 「あっ…。はい。そ、それでは、マーカス様。今日はこの辺で…。ありがとうございました。」

 「う、うむ。自習をおこたらんようにな…。レイファちゃんまたきてね!」

 「黙れ。腐れ外道。こほん。それでは失礼いたします」

 セナとマーカスが挨拶をしレイファが不敬すぎる物言いで一礼した後、セナとレイファはマーカスの部屋を後にした。

 その後、無言で2人は進み、ギルスの私室へとたどり着いた。

 コンコン

 「ギルス様。セナ様をお連れ致しました」

 「うむ、はいってもらってくれ」

 レイファが入室の許可を取り、2人で部屋にはいった。

 「失礼します。セナです」

 「おぉ。セナ殿。講義の最中にすまんな。実はな?昨日のことを王に伝えた所、森に異変がないか調査をすることになった…のだが、あの森はダグラス=マグワイヤー伯爵の管轄でな。
 貴族というのは、その…。色々、面倒ごとが多くてな、表立ってできなくてな?それで、調査は冒険者ギルドへの依頼ということになったのだ。」

 ギルスが少々回りくどい言い回しで、セナへと説明をした。

 「は、はぁ。そういうものなのですね」

 「あぁ、そこでセナ殿に頼みがあるのだ。国王と私からの指名で依頼を受けてほしいのだが」
 

 「え?国王様とギルス様の連名の依頼ですか?」

 「うむ。あくまで調査だが、先ほど言ったように、ダグラス殿を刺激するわけにもいかん。なので、少人数での隠密行動になる。それで、そのな?その話をした場で、ジェノスやサーシェスがセナ殿なら1人でこなせると自信満々で王に進言してしまってな?どうだろうか?受けてくれまいか?」

 「ジェノス様…。サーシェス様…。」

 「セナ様お一人でなんて…。危険すぎます!」

 セナがジェノス達の顔を思い浮かべ、遠い目をしていると、顔を蒼くしたレイファがそう進言した。

 「うむ。危険なのは承知しているが…。王がもうギルドに依頼をだしてしまってな…。どうだろうか?無理なら私が取り下げさせるが?」

 「え?いえ。やりますよ?ギルス様。その依頼お受けいたします。私の実力をしっている、ジェノス様とサーシェス様が、私ならやれるといわれるのであれば、やれると思いますので」

 「そうか!恩に着るぞ!セナ殿!」

 「大げさですよ。恩を感じるのは私のほうですよ。えっと、それではこれからギルドで受付してきます」

 ギルスが申し訳なさそうに言ったが、遠い目をしていたセナが我に返り、何でもないかのように答えた。

 その後、ギルドでは詳細が漏れる危険もなくはないと、ギルスから詳細を聞き。セナは準備のためギルスの私室をあとにした。
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