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第7章 大陸編

王とよばれる頂

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 「おい、それは私の獲物だ」

 「クゥーン!」
 
 結界をあけさせ再び中にはいったサイが走り寄ってきたケルベロスを見ていうとケルベロスは急ブレーキをかけたかのように止まり、お座りをしておとなしくなった。

 「それでいい」

 左手をケルベロスに向け満足げにサイが頷いた。

 「ほぉ!」

 「さすがサイだね!」

 「偉そうなふてぶてしさもあそこまでいけば驚愕にあたいするくらい尊敬するわ」

 その光景をみてアキラは興味深そうにアディオンはけらけらと笑い、リレイはぐったりしながら言った。

 「おい豚、待たせたな貴様を狩る時間だ」

 「くっ!何を好き勝手なことを!!貴様少しくらい私の好みだからと言って許さんぞ!」

 「……師匠あいかわらず……」

 「……不憫ですね」

 「もう呪われてるんじゃないですか?」

 「……ほぅ?貴様らの声しっかり聞こえているからな」

 「「「 ひぃ! 」」」

 ベルフェゴの言葉を聞き、スカーレット、エリス、コニーが複雑な表情で好き勝手いいあってるのを聞いていたサイが額に盛大に血管をうかばせ睨みつけながら言った。

 「そもそも私は魔王だぞ!貴様は何様で私にそのような態度をとっているんだ!」

 「ふむ、挨拶が遅れたな私は13英傑ナンバーズの1人とよばれているものだ」

 「それがなんだ!私は王だぞ!!」

 「あの!失礼ですがサイ様も王ですよ?」

 「なんだと小娘!うそを言うな!こいつは獣人であろう!」

 「はぁ~その子が言ったことは事実です。そのお方は拳王と呼ばれているのですよ」

 「ちなみに拳王様と呼ばれる前は獣王様と呼ばれていたすごい方なんですよ」

 「なんだと!?」

 メディーがサイも王だといい、補足するようにスカーレットとエリスが言った。

 「貴様も己の道をあるき頂きに到達した王だというのであれば…敬意を表し私の本気をみせてやろう」

 「え゛……し、師匠まさか……」

 「スカーレットどうしたの?」

 「まずい!魔王参謀様!ケルベロスを今すぐお戻しください!!」

 「ん?よくわからないが了解したよ」

 組んでいた腕をとき両手をひろげるようなしぐさをみせたサイをみて焦り始めたスカーレットの言葉を受けエイコはケルベロスを魔界へと戻した。

 「ふん、いい判断だな…では特別に私の真の姿をみせてやろう!」

 「な!貴様!!体に模様が!?」

 「待たせたな……」

 獣気を高め全身に巡らせていくとサイの体に黒い虎のような紋様が浮かび上がり見ると爪なども鋭く伸び口には立派な牙が生え瞳はネコ科の動物のようになっていた。


 「スカーレット……まさかサイ様は」

 「ええ、あれが師匠が獣王とよばれたゆえんよ」

 「獣化ができるなんて…しかも自我を保ってる……」

 スカーレットの言葉を聞きエリスは驚愕の表情で未だに目の前のサイを信じられずに見つめていた。

 「貴様!なんだその姿は!」

 「これが我が真の姿だ光栄に思いながら死ね」

 驚きながら指をさし言ってくるベルフェゴに淡々とサイが答えゆったりと獲物を狙うように歩き始めた。

 「くそが!」

 「どうした?ちゃんと狙わねばあたらんぞ?」

 「いつのまにそこに!」

 ベルフェゴがイライラしながら炎を放ったがサイが一瞬で移動しベルフェゴは我が目をうたがうように驚いた。

 「貴様!虎の獣人だろ!なんなのだ!そのスピードは!」

 「ふむ、私の種族は虎ではあるがただの虎族ではない」

 「なんだと!?」
 
 「我が種族それは雷虎族ライガーだ」

 「なんだそれは!」

 「な、なんと……」

 「ほぉ!!!」

 サイが淡々と自身の種族を伝えるとヤオとタオそしてエリスは驚き、アキラは眼鏡をはずし興奮しながらサイを見つめていた。

 「驚いたでしょ」

 「驚くなんてものじゃない!伝説でしかないとおもってたわ!」

 「あなた、そんなにめずらしいの?」

 「いたたたた、ごめんごめん!僕も初めて見るよ」

 スカーレットが意地悪く笑いながら言うとエリスは興奮したように言い、他の女をじろじろみてるなと暗にしらせるようにほほをエイコにつねられたアキラが苦笑気味に答えた。

 「ライガーとは伝承では、雷をあやつり雷の速さと強さをもつ虎のような生き物とされていて実在するとは思ってもみなかったよ」

 「ふぅ~ん、珍しいのね」

 「ああ、スカーレット君やエリス君もがそれを上回るよ」

 アキラが嬉しそうに言ったがエイコは他の女が褒められているように感じ不機嫌に興味なさげに頷いて聞いた。

 「一つ聞きたい、貴様らはその魔核を破壊されたら死ぬのか?」

 「抜かれたことも壊されたこともないのだ!知るわけないであろう!」

 「そうか…ではやってみよう」

 「はっ!やれるものならやってみよ!!」

 ベルフェゴは魔力を高めながらこわばった表情でいうとサイは獰猛な笑みをうかべた。

 「いくぞ!!『雷撃・虎破』」

 「がはっ!がはっ!ぐぅ……」

 雷属性の獣気をまとったサイがベルフェゴの鳩尾に掌底をたたきこむと反応できなかったベルフェゴは吐血しながらも倒れず耐えてみせた。

 「ほぅ?さすが王をなのるだけのことはある…敬意を表し我が最大の拳で葬ってやろう」

 「サイ!てめぇ俺にやらせろ!」

 「うるさい!だまれ!……いくぞ!!」

 『真檄・獣王烈震』

 「がぁぁぁ!!!ぐふぅ……ぐはぁ!!」

 バチっと放電したサイが残像さえ残さずに3発拳をたたきこむとベルフェゴは驚いた顔をしたまま直立し、よく見ると小刻みに震えていて口や目鼻から緑の血があふれ出し最後にたまった血と石のようなものが口からあふれ出し倒れた。

 「ちっ!さすが魔王殿でも破壊できない代物ということか……」

 ベルフェゴから吐き出された石をみて苦々しい顔をしたサイからだんだんと紋様が消えていった。

 「ベルフェゴ様ぁぁぁ!!がっ!?な……なにを……ベルフェ……ゴ……様」

 「ん?」

 「サイ!なんかやべぇ!さっさと出ろ!」

 「メディー!サイがでたら結界をつよめて!!」

 倒れたベルフェゴに駆け寄った敵兵がベルフェゴの体に触れた瞬間くるしみだしガタガタと震えそして干からびたように息絶え、異状に気づいたエイケンとリレイが叫びサイはとりあえず結界からでた。

 「ベルフェゴ様!」

 「ひぃ!おたすけくださ……」

 結界内にのこっていた敵兵が次々ベルフェゴからでた蔦のようなものにつかまり干からびて行った。

 「あらら……全員干からびちゃったね」

 「あの気持ち悪いのは何かしら」

 「知らん、知る気もおきん」

 「腹と口からでてるみてぇだな」

 「うわぁ気持ち悪さがパワーアップしてしまってますねぇ」

 アディオンやリレイなどが気持ち悪そうに結界内でうねうねしているものを見て言い合っていた。

 「魔核は食べないみたいですね」

 「気持ち悪いですわ…ヤオさん、タオさんアイリーンもあれはご存じないのですか?」

 「ありませぬ」

 「ありませんわ」

 「あれに似たようなものを魔界で1度」

 「え?」

 カトリーヌが尋ねるとアイリーンが気持ち悪そうに答えた。

 「あれはなんなんですの?」

 「あれは欲望の芽と魔界で呼ばれていたものですわ」

 「欲望の芽……」

 「簡潔に申し上げますと男性からは精気を奪い女性には自身の種を植え付けるのですわ」

 「え゛……」

 「腹内で育った芽が母体となる女性から栄養を吸い取りきると体を突き破り発芽するものなのです」

 「こわ!ん?でもあの豚さんは男ですよね?なんで発芽したんでしょうか」

 「わかりかねますわ」

 コニーの疑問にアイリーンは興味なさげに答えた。

 「うげっ!おきあがったよ!?」

 「気持ち悪さ倍増ね」

 「うむ、アイリーンの言葉が真実であるならば女は近づかぬ方がよいだろうな」

 「んじゃエイケンあのウネウネぶった切ってきてよ」

 「げっ!きもちわりぃよ」

 「ず、ずずずずずーー」

 「ひぃぃぃぃ!!きもちわるっ!なにあれ!きもちわるすぎですよ!!!」

 アディオンの言葉に心底いやそうな顔をしたエイケンだったが起き上がったベルフェゴが蕎麦をすするように蔦のようなものをすすり飲み込んでいき腹からでていたものも合わせるように腹に入っていくのを見て女性たちは顔を蒼くした。

 「げふぅ!ぐへへへ…危なく死ぬところであったわ……」

 「おぃおぃ……もうなんか気持ち悪すぎてかける言葉がねぇぞ」

 「ベルフェゴ様おひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 「なんだ?礼儀をわきまえ美しいからとくべつにゆるしてやるぞ?ゲッフゥ」

 「……ありがとうございます……先ほどの蔦のような物、あれは少し昔に魔界で欲望の芽と呼ばれていたものではありませんか?」

 「ん?なんと呼ばれていたかはわからないが確かに魔界に一部をことならばある」

 「……お答えいただきありがとうございます」

 汚いものをみるような蔑んだ目で尋ねたアイリーンだったがベルフェゴの答えを聞き怒りに震えながらも礼をいった。

 「おいアイリーンどうした?」

 「エイケン様…私ども吸血鬼も多数が欲望の芽の犠牲になったのでございます…生き残ったのは極わずか、しかし吸血鬼は子をなすことがございません……血を吸われればだれでもなれるというものでもなく……また望まぬ相手から血を吸う行為は欲におぼれた愚かな行為とされており……結局は絶滅の危機に瀕することとなっております」

 「……そんなひどいこと」

 アイリーンの言葉にエリスが目を見開いてショックをうけていた。

 「エリス?」

 「ごめん…私の一族もひどい迫害をうけ獣人であることを隠しそれぞれ逃げてくらしてるの…もう自分の同族がだれでどこにいるかなんてわからない……」

 「わたしも似たようなものよ」

 「ああ」

 マインに声をかけられたがエリスの悲しそうな顔でいうとスカーレットも同じ顔で同意し、サイは苦々しい顔をしてうなずいた。

 「ちっ!おい豚!てめぇついてるぜ?」

 「どこがだ!」

 「セナがいたらてめぇ今頃まともに死ぬこともできてねぇからな…だがよ?いまはあいつの気持ちもわかる気がするぜ……」

 「貴様なにをいっているのだ?」

 「あぁ?てめぇが心底きにいらねぇって話だよ!!」

 4人の表情を見て心情を察したエイケンが深いため息をついたかとおもうと愛刀をベルフェゴにむけ鬼人化した。

 「なっ!貴様鬼だったのか!」

 「ああ、俺はこいつと同じ13英傑ナンバーズで剣王ってよばれてる」

 「きさまもケンオウなのか!」

 「ああ…同じ王だ俺の相手もしろよ」

 「なっ!」

 エイケンが剣を数回ふると四陣結界が切られヤオが驚いている中、エイケンはゆっくりと愛剣を担いで中へと入っていった。

 「アキラさんこれを」

 「うん、たしかに」

 中に入ったエイケンが結界が修復される前に魔核を蹴り上げるとアキラの手元に飛んでいきアキラがしっかりと受け止めた。

 「あ!貴様!!私の魔核を!」

 「うっせぇよ!てめぇ

 「な、なんのことだ?」

 「隠してもわかるんだよ!てめぇまだ魔核をもってんだろ?」

 「くっ!」

 「ほぉー、そこに1つはあるってことか」

 とんとんと剣で肩をたたきながら鋭い視線でにらみつけると動揺したベルフェゴは無意識に魔核がある胸あたりをさわってしまいエイケンはそれを見逃さなかった。

 「ちがう!」

 「別に違ってもなんでもいい……そこをきってみりゃぁわかることだ」

 「くっ!きさまも私をみくだしおって!!」

 「エリス!特別授業だ!俺のとっておきの奥義をみせてやる!」

 「え!?」

 「サイ、スカーレットおめぇらもみとけよ?……いくぞ腐れ外道の豚野郎」

 「やれるものならやってみろぉぉぉぉ!!」

 名前をよばれた3人はエイケンを見つめていた。

 「おせぇよ……『業火炎嵐ごうかえんらん』」

 「……かはっ!か、からだがぁぁぁ!!」

 剣を超前傾で変則的な正中に構えたエイケンが技を発動させると目にもとまらぬ速さでベルフェゴの背後に走り去っており時間差でベルフェゴの左肩から斜めに袈裟切りされて刃があたった魔核が体から吹き飛んでいき、切られた所からブスブスとベルフェゴの体が燃え出した。

 「雷属性だったのに切口は嵐属性?」

 「え?意味が分からない……」

 「なるほど……さらに高みにのぼっておったか」

 エリスとスカーレットが混乱している中、サイだけは一瞬おどろいたが自身より高みに上っていたエイケンに不敵な笑みをうかべ満足そうにしていた。

 「師匠!あれは?」

 「エイケンは雷属性をまとい、刃だけに嵐属性をのせていた」

 「なっ!?す、すごい!!」

 サイの説明をきき、スカーレットが目を見開き言葉をうしないエリスは驚愕していた。

 「やっぱあの血族はとんでもないわね」

 「あっはっは!そうだね!見た目と暑苦しさ以外はやっぱりセナ君とおなじだと実感するよ!」

 「うっせぇよ!……ふん!さすがにもう魔核はねぇみてぇだな、それでどうよ?ご自慢の芽も燃えちまってのばせねぇ、魔核をうしなって王のメッキがはがされた気分はよ!」

 「ぐっ!はぁはぁはぁ……くそが!」

 「ちっ!もういい。アキラさんあとは頼むぜ?」

 「ん?いいかい?」

 「ええ……あんな下衆に近寄りたくもないわ」

 「エイコありがとう」

 エイケンが魔核を拾いアキラに声をかけると迅風がゆっくりと降りていきアキラは背からおり結界からでたエイケンと笑顔でハイタッチをし代わりに結界の中に入った。
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