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第7章 大陸編

豚は足が速い

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 「アディオンお願い」

 「おっけぇ!おいっしょーーーー!!」

 リレイの言葉でアディオンが思いっきり飛び上がり魔力を両足にあつめ緑に輝くまま地面にストンピングをするとまるで地震が起こったかのように地面が揺れ直径5メートル以上のクレーターを作った。

 「うぉ!なんなんだ!」

 「サイ裏から逃げられないでね」

 「わかっている」

 「がはっ!」

 地面が揺れている中、なにごともないように雷属性をまとい敵の後ろに回り込んだサイが最後尾にいた一番でかい男に渾身の拳を叩き込むと男はブスブスと焦げながら吐血をし倒れ動かなくなった。

 「どうやら君は…私と同族みたいだね」

 「な、なに?」

 「隠さずともわかるんだ…君はなにを研究しているんだい?」

 「なっ!?なぜそれを!?」

 「私の目がね?君が一番うまそうだといっているんだよ」

 「だから貴様はなにを!う、うわぁぁぁ!!」

 アキラが一人の細身の男のまえにゆったりと近づき寒気がするような笑顔を浮かべながら右手をその男にかざすと敵の男が光に変わっていきアキラの目に吸い込まれていった。

 「ほぅ…ベルフェゴ君はそのような才能があるのか…んー、悩ましいがしかたない」

 吸いこんだ男の記憶をたしかめたアキラがベルフェゴをみて一瞬ニタリと笑ったが目が合ったエイコが顔を横に振ったたため惜しそうにしながらも諦めたようだった。

 「貴様らいったい何者なのだ!いい加減にしろ!!」

 「俺らが何者かさっき説明しただろ?」

 「私たちは貴様らを皆殺しにする者たちだ、理解したのならば貴様らが誰になにをしたのか後悔しながら狩られてしね」

 「どいつもこいつも愚弄しおって!!!」

 「うっさい!もういい!私が全員塵も残さず消してやる!」

 激怒するベルフェゴだったがずっと我慢していたエイコがとうとう我慢の限界を超え魔核が2つになった憤怒の力を一気にたぎらせた。

 「おい!なんだこのふざけた魔力は!」

 「おぃおぃおぃおぃ…どこまであがるんだよ!」

 ベルフェゴと隣にいた威勢のいい兵が留まるところがないエイコの魔力に驚きから恐れおののき後ずさりをした。

 「ベルフェゴ様これはやばいですよ!」

 「に、にげま…がっ……」

 「ひぃ!」

 逃げ出そうとした女の兵が一歩動いた瞬間、サイが超高速で拳を打ち付けると全身が細かく振動し体中から血が噴き出し倒れそれをみた隣の兵が短い悲鳴をあげ腰を抜かした。

 「おい、デブ。ご自慢の兵が30人きっちまったんじゃねぇか?」

 「私はデブではないわ!ふくよかとよべ!」

 「うるさい、がなるなデブ」

 「くっ!」

 「げっ…もういいだろ、全員やっちまおうぜ」

 「そうだな」

 さげすむ目でサイにみられながらののしられたベルフェゴは少しほほを染めながら言葉だけは悔しそうにした、そしてそれをみたエイケンは気持ち悪そうに終わらせることを提案した。

 「ちっ!こんな野蛮な奴らなど相手にできん!」

 「あ!ベルフェゴ様!!」

 ベルフェゴが威勢よく言うと近くにいた兵数名がベルフェゴの元にいった瞬間、ベルフェゴが転移していった。

 「そんな!ベルフェゴ様!!」

 取り残された兵の数は半数以上で全員が絶望した顔でへたり込んでしまった。

 「あなた」

 「ああ、なぁ君たちこちらの魔王に忠誠を誓うのであれば助けてあげるがどうする?ちなみにうちの魔王様は部下を見捨てるようなことはしないよ?」

 エイコの言葉にアキラが頷き取り残された兵たちに声をかけた。

 「断ればどうなる…」

 「んー、君たちにめぼしいものを感じないからただの無駄死にか、よくて実験台か餌になるかかな」

 「くっ!」

 「自害は止めないし戦って死にたいのであれば塵も残さず殺してあげよう、さぁ選びたまえ」

 ニタリとわらったアキラの顔を見た敵兵たちは顔を蒼くし全員がエイコへ忠誠を誓った。

 「じゃあ、その背中に刻んだ紋章が魔王エイコへの忠誠の証だ」

 「裏切ればどうなる…」

 「その紋章は思考と行動に連動していてね…頭で裏切りや逃走を考えるだけで全身に激しい痛みが襲い、最終的に爆発して死んでしまうくらいだね」

 「そうか…では…主に捨てられた我らをお救い頂きありがとうございます。我ら19名これより魔王エイコ様に終生お仕えすることをここに誓います」

 「あっそ、せいぜい死なないように頑張りなさい。とりあえずあとは城のものにきいて あなたお願いね」

 「ああ」

 アキラの返事を聞いたエイコが指を鳴らすと忠誠を誓った兵とアキラが魔王城へと転移していった。

 「ちっ!不完全燃焼だな」

 「うむ」

 「大丈夫よ、さっき手に入れた駒から詳しい話をきけば場所はあの人がしってるもの」


 「ああ、そうか」

 「あのデブのちんけな魔力で転移できる距離ならすぐにいって壊滅してやるわ」

 「俺らも連れてけよ?」

 「その時の状況と気分次第ね」

 エイコとアキラが淡々と話し合いセナとヴァルキューレたちは取り残されたようにたたずんでいた。

 「まぁいいや、一回仕切り直しだ帰ろうぜ」

 「うむ、そうだな。さらばだセナ殿」

 「おう!セナまたな!」

 「セナ様またお会いしましょう」

 「それじゃセナ君、マインもお疲れ様!」

 「じゃあ、戻るわよ?あ、セナちゃんまたね!」

 「う、うん。エイコお姉さん、叔父さんも皆さんもありがとうございました」

 「はぁ~~ん!!来たかいがあったわ!」

 エイコがセナを抱きしめ別れの挨拶をするとセナもエイコを抱きしめエイコは蕩けながらナンバーズとともに転移していった。

 「セナ様…とりあえずブレイダーへご報告を」

 「そ、そうですね」

 我に返ったヤオに催促されるようにセナはギルスたちの元へともどっていった。

 =========================================

 「そ、そうか…ではすでに帰ってしまわれたのか」

 「はい」

 「礼もできずに心苦しいがひとまず被害が最小限に戦がおわってなによりだ」

 セナから報告を聞きギルスが笑顔で戦いの終わりを集まったブレイダー兵たちに伝えその日マルンはお祭り騒ぎになっていた。

 =========================================

 「アルドラの教皇はどれほどの他大陸とのつながりがあるのですかね」

 「わかりませぬが全大陸とお考えいただき動くのがよいかと」

 「そうですよね、でも魔王ばかりきてますが人族などはどうなってるんですかねぇ」

 「それは我らも不思議におもっておりまする」

 「まぁ今回なによりも驚いたのが魔王ですのにあっさりお逃げになられたことですわ」

 「カトリーヌ一つ教えてあげましょう」

 「なんですの?コニー」

 「本来、豚さんは足が速い生き物なんですよ!」

 「そうなんですの!?ってなんのお話をなさってるのよ!」

 「え?ああ、そうですね!あの魔王は豚さん以下ですよ!豚さんだって群れや子を守りますからね!」

 「いえ、そういうことではなくってですわね…はぁ~…まぁいいですわ」

 マルンでの戦いの翌日、セナ達全員は一度リストニアにある邸宅へともどってきており夕食を全員で食べながら色々な話をしていた。

 「それで皆は明日からどうなさるおつもりか」

 「私は一度国に戻りお父様に此度の戦いのことをお知らせしようと思っておりますわ」

 「私は明日スターシャ様のところに行きアディオン様との修行の経緯をお伝えして少しの期間、治療院も手伝いたいと思っております」

 「私はグラニールとともにドラニスタへ戻ります」

 「では私は迅風とホーシーを通ってジルネイへ行きます!」

 「メディー、荷馬車でいいから用意してくれるなら一緒にジルネイに連れて行っててもらいたいんだけど?」

 「私は当然、先生と魔王様の元へ向かいますよ!」

 「じゃあ、カトリーヌとコニーは明日僕が送るね」

 「お願いします!」

 「セナ様とヤオさんタオさんはどうなさいますの?」

 「んー……」

 「セナ様、一度ごゆっくりなさってはいかがかと」

 「そうですわね、セナ様一度荷の整理などもございますしごゆっくりいたしたらいかがでしょう」

 「たしかにそうですね、では少しゆっくり休憩しましょう」

 それぞれの予定を聞いた後、時間の許す限りみんなで近況を報告しあったり談笑していた。

 ===================================

 「え?逃げられたの?」

 「そうじゃないわよ、逃がしてあげたのよ。ね?」

 「ええ、お義理母さん僕が取り込んだ男の記憶に色々なことがありましてね、あそこで倒してしまうより本拠地に我々が乗り込んだほうがいいと判断したんですよ」

 「そう、アキラさんがそういうのなら仕方ないわね」

 ドラニスタではエイコとアキラそしてエイケンがエイシャへと顛末を説明していた。

 「乗り込むときは当然俺も行くぜ?」

 「本当だったら私だって行きたいわ」

 「さすがにおふくろはダメだろ!」

 「わかってるわよ、行けるならさっきだってラミと先陣きっていってるわよ!」

 「マルンが焼け野原になるじゃねぇか!」

 「うるさいわね、セナちゃんが悲しむことをするわけないじゃない!エイコ、エイケン、アキラさんも誰がなんて言おうととセナちゃんは家族なのそしてセナちゃんは天使なの…その可愛い天使のセナちゃんをあそこまでやった相手なの…わかってるわね?」

 「わかってるぜおふくろ…きっちり落とし前付けてくっからよ」

 「ええ、母さんの気持ち痛いほどわかるわ……安心して?……あいつら塵も残さないから!」

 「塵どころか魂さえも残してあげるつもりはありませんよ!あはははは」

 「そうそれでいいの、あなたたちなら私の気持ちがわかってくれて必ずやりとげてくれると信じてるわ」

 「お、おう」

 エイシャとエイコそしてアキラとのやり取りを見たエイケンはドン引きしながらもなんとか頷くことができた。

 「エイケン君、向こうはこちらの魔大陸ほどの魔素ではないようだ、それに大した距離でもなさそうだし連れて行きたい子がいたら僕が視て大丈夫そうなら連れて行くがどうする?」

 「ああ、ならサイたちと小娘どもに声をかけてみるか」

 「急ぎなさいよ?聞いたわねアイリーン」

 「はい!」

 エイコの言葉に慌てて出てきたアイリーンがカーテシーを決め消えていった。

 「あ!サイたちにも連絡してもらえばよかったな」

 「あんたじゃないんだからあの子がちゃんと連絡してるわよ」

 「お、おう」

 「エイコ、グラニールも連れて行ってほしいそうよ」

 「いいわよ、どうせならまとめて面倒見るわ」

 「そうだね、向こうについて移動の手段があるのなら助かります」

 こうして数日後、魔王エイコひきいるのちのセナ親衛隊の初陣がきまった。
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