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第7章 大陸編

蒼き炎・黒き雷

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 「迅風様!お力をお抑えくださいませ!このままでは!」

 「きゃ!!あ!結界が!!」

 轟鳴いた迅風が爆発的に風の魔力を高めていきそれは際限なく上がり続けメディーの結界を内側から砕き始め、それを防ごうとしたアイリーンの結界すらミシミシと音を立て壊れ始めていた。

 「ガァァァァァァァ!!!!」

 「迅風!これ以上はダメよ!身体が!!!」

 怒りに我を忘れタガが外れた迅風は自身の身体がもたないほどの魔力を出しそれはまだまだ上がり続けていた。


 「これは?」

 「セナ様!迅風を!迅風をお止めください!このままじゃあの子死んじゃう!!」

 「ヤオさん!タオさん!」

 転移してきたセナとヤオ・タオが異様な魔力に驚いているとアイリーンは歯を食いしばり結界をはり、メディーは額から血を流しながらもセナの元へ這いながらすがりつき必死に迅風を止めてほしいと訴えてきた。
ヤオとタオが結界を貼り終えるとセナは迅風のもとへと歩を進めた。

 「迅風……少しおちついて?僕がきたよ?もう大丈夫だから」

 「ブルルルルル…ガァァァァ!!」

 セナが優しくゆっくりと迅風に近づくが迅風は我を忘れ怒り狂っておりセナの言葉が耳に入っていないようだった。

 「……迅風……ほら……落ち着いて……ね?」

 迅風の前にたったセナが興奮する迅風に抱き着きゆっくり落ち着かせるように声をかけた。

 「グルルルルル」

 「え?……わかりました……やってみましょう……」

 暴れる迅風を抑え込むかのように抱きしめていたセナの目がそれぞれ輝き、セナが頷くと嵐・雷・闇と風の龍気、魔力、燐気を発動させた。

 「セ、セナ様なにを?あぁ!!迅風が!セナ様!おやめください!迅風が!!セナ様!!!」

 未だにダメージで起き上がれないメディーがセナの力でどんどん傷を増やしていく迅風を見て号泣し叫ぶようにセナに願ったが苦々しい顔をしたセナはさらに力をこめはじめた。

 「迅風拒否をしないで、僕は君の味方じゃないか」

 「グゥ!グルル…ブルルルルル…」

 「そう、落ち着いて…ゆっくり自分の力にするんだ…僕と君はこうやってずっと助け合ってきたじゃないか」

 「ブルルルルル…」

 「あぁ!!じ、迅風ぇぇぇぇ!!」

 迅風はセナの言葉にゆっくりと落ち着きを取り戻し痛みに耐えながら鼻を鳴らしセナに顔をつけるとセナと迅風の力が混ざり合い始め完全に混ざり合うとセナと迅風が力にすっぽりと覆われ外からは見えなくなりメディーはセナが迅風を殺してしまったのではないかと涙を流しながら絶望の声を上げた。

 「くぅ!申し訳ございません…もはや限界ですわ…」

 「くっ!我らもこれ以上は!!」

 セナと迅風の力がどんどん膨れ上がりとうとうアイリーンとヤオとタオの結界が崩壊したがその力が外に漏れたことで力の強さに驚いた魔物たちは驚きと恐怖で動けずにいた。

 「くっ!すみません!村の方がたをお守りください!」

 「心得ましたわ」

 結界が崩壊するとメディーは悲しみの心を押し殺しながら必死に村人たちの保護をアイリーン達に頼んだ。

 「メディー!結界を!!お二人も!!」

 「わかっておりますわ!」

 「くっ!わかりました!」

 力が臨界に達したと判断したヤオが焦りながら属性化をし全開で結界をはりほかの3人にも指示を飛ばした。

 「はぜますぞ!!!」

 「きゃぁ!!!」

 ヤオの言葉とほぼ同時にセナと迅風の力が爆発したかのように弾け結界を貼っていた4人は吹き飛ばされたがなんとか結界で爆発の直撃だけは防いだ。

 「みな大丈夫でござりまするか!」

 「え、ええ、村の方々も大丈夫ですわ」

 いち早く体制を立て直したヤオがあたりを見渡すとアイリーンが答え、他の2人も無事だった。

 「迅風…よくがんばったね」

 「ブルルルル……」

 「あ…」

 爆発の中心地だった場所でセナが優しく迅風の顔を抱きしめ迅風も心穏やかにセナの抱擁を受ける姿を見たメディーが驚きながらも二人が無事だったことに涙をポロポロと流した。

 「ここは僕が守るから君は全開でやっていいよ?」

 「ブルルルル……」

 「迅風…傷が消えて…え?」

 セナの言葉に首を縦に数回ふった迅風がカッポカッポと歩く姿を見てメディーがいつの間にか消えた迅風の傷に驚いている中、迅風は大きく息を吸い込み始めた。

 「ヒヒィーーーーーーーン!!!」

 「きゃ!え?ああ…セナ様…」

 「僕が結界を貼ったから大丈夫だよ」

 迅風がぐっと体をかがめ鳴き声とともに飛び上がると同時に爆発的な風がおきたがすぐにそれはセナの結界によって遮られた。

 「グギャ!?」

 「なんと…蒼い炎が」

 高く飛び上がった迅風が空中に留まると4つの足元から蒼い炎が噴き出しておりさらに鬣としっぽも蒼い炎でできているかのようになっていた。

 「綺麗…」

 「私いま驚愕しておりますわ」

 「どういうことですかな?アイリーン」

 「はい、あの炎は間違いなく魔界の炎ですからですわ…」

 「な、なんと…」

 「魔界の炎をこちらの世界で発現させるには並みならぬほどの闇の魔力が必要なのですわ…」

 「で、では迅風は…」

 「もはや先ほどまでの迅風様とは別格な生き物となってしまわれたと思いますわ」

 「なんと…」

 「ア、アイリーンさん!では迅風は魔界の炎で浮いてるんですか!?」

 「い、いえそのような効果は聞いたことがありませんわ」

 メディーが痛みも忘れ迅風から目をそらすこともできずアイリーンに尋ねたがさすがのアイリーンも理解できずに困惑していた。

 「あれはただの魔界の炎じゃないんですよ」

 「え?セナ様ではあれは!?」

 「んー、少しニュアンスが違うんですが、簡単に言うとあれは闇の嵐属性なんです」

 「え!?」

 「ニュアンスが違うとはどういうことですか?」

 「うん、僕たちの属性化は自分の力をそれぞれの属性に変化させますよね?」

 「そうにございますな」

 「彼がやっているのは自分の魔力で魔界の風と炎をこちらに呼び出しまとめ上げ嵐属性のようにした力をつかっているんですよ」

 「な!そ、それではあれは純粋な魔界の炎と風なのでございますかっ!?」

 「そうですね」

 「アイリーンがそんなに驚くほどすごいことなんですね!?」

 「メディーさん…驚くなどという次元ではありませんわ…魔界から契約なしで物体を呼ぶことすら尋常ではありませんのに…迅風様は現象を召喚なさっておりますのよ…」

 「よくわかりませんが…ないものを呼び出し使っているということですかね?」

 「ええ…しかも魔界の炎ちょっとやそっとでは消えません…風とて適応しない物は命にかかわるものですわ」

 「なんかよくわかりませんがとりあえずすごく強くなったのはわかりました!」

 「はぁ~…そうですわね」

 ぐっと両手をにぎりいったメディーのことばに額に手を当て大袈裟にため息をついたアイリーンがこたえた。

 「ブルルルル……ヒヒィーーーーーーーン!!」

 空に留まる迅風が地上に目線を送り自身の命で村人を守り死んでいったバトルホースたちをみ、魔物をにらみつけ上空で2本足で立ち上がり鳴き声をあげた。

 「迅風なにを!」

 迅風の前に大きな蒼と緑の入り混じったような大きな炎の球が出来上がるとそれはいくつにも別れそのわかれた炎が横たわるバトルホースたちに触れると遺体がすべて燃え始めメディーが声を上げ他の人々が驚く中、迅風はただその光景をみていた。

 「ヒヒィーーン!!」

 「え!?」

 バトルホースの遺体すべてが炎に包まれると迅風が一鳴きするとバトルホースを燃やしていた炎が馬の形になり迅風の元へと駆け上がり周囲が驚き固まっている間に迅風と魔物たちの間に炎の馬の群れができあがっていた。

 「ブルルルル……ヒヒィーン!!」

 迅風の合図ともとれる鳴き声で炎の馬たちはいっせいに魔物へと駆け出し触れた魔物たちを次々燃やしていった。

 「す、すごい…」

 「あのような炎の使い方など…私も始めてみましたわ」

 「我らもでございまする…」

 「あれは迅風の固有能力みたいですね」

 「な、なんと…」

 「あの…魔物が燃え尽きるたびにあの馬たち大きくなっていませんか…?」

 「!?…た、たしかに…」

 「たぶんあの炎は命と魔力などをすいとっているのでは…」

 メディーが目をこすりながら自身の勘違いかとたずねるとヤオがそれをみとめ額から汗を垂らしアイリーンが自身が感じる力のながれを言葉にし驚愕していた。

 「あ!魔物たちが!」

 「恐怖で逃げ始めましたな」

 「そうですわね」

 「皆さんなに落ち着いてるんですか!?」

 「メディー大丈夫だよ」

 「なにがですか!?」

 「逃げ切れないとわかっているから迅風も追っていないんだ」

 「え?きゃ!!」

 魔物が悲鳴のような鳴き声を上げながら散り散りに逃げ始めメディーがあせるなかヤオ、タオそしてアイリーンは落ち着いておりセナが指さした瞬間、黒い雷が逃げ惑うすべての魔物に降り注ぎ全滅させた。

 「グルワァァァァァァ!!!」

 鳴き声が遠くからきこえわずかの間に上空が陰におおわれ全員が魔物が居た場所よりもさらに高い空を見るとグラニールが翼を広げホバリングしていた。

 「グラニール!来てくれたんですか!」

 ゆったりと高度をおとしてきたグラニールにメディーが嬉しそうに両手を振って迎える中、グラニールと迅風が同じ高さになると2頭は鼻を寄せ合いまるで再会の挨拶をしているかのようにしたあとそれぞれ力を解き放ちどこまでも響くような鳴き声をあげた。

=========================================

 「そ、それでその炎は迅風の中に取り込まれたということなのね」

 「はい!すごすぎですよね!」

 「え、ええ…ほんとうにね…」

 報告を聞いたメルが驚きを隠せずに疲れたようにため息を吐き椅子へともたれかかった。

 その後生き延びたホーシーの民がジルネイには蒼き炎と黒き雷の守り神がついていると話し、そのことは瞬く間にジルネイ全土へと広がっていった。
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