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第7章 大陸編

剣王

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 「本隊がくるまでに敵を押しかせぇ!!」

 「おおー!!」

 帝国指揮官の声に兵たちは声を上げ戦場はさらに熾烈と化していった。

 「右陣もこれでなんとかなりそうですわ…」

 コニーを休ませながら戦況をみていたカトリーヌとりあえず安堵の息をはいた。

 「お?帝国もなかなかやりやがるな…どれ俺もそろそろ、ちっと本気だしてやるかぁ」

 息を吹き返したように勢いづく帝国兵をみてエイケンはニヤリと笑いながら燐気を体にまとった。

 「てめぇらこっからはちっと本気でいくからよ!もう少し離れてろ!」

 「へ?は、はい!総員剣王様から離れろ!」

 「はっ!」

 自身の後塵を追いかけてくる帝国兵に言葉をかけたエイケンが燐気の属性を付与させた。

 「ちっ!まだすこしきついな!本番じゃどうかよ!」

 ドラニスタの兵との訓練では危険すぎてつかえなかった嵐属性を付与した燐気は爆発的な威力をもたらしエイケンの周りは敵兵が次々と塵とかして燃えてなくなっていった。

 「お、おそろしい…切られた場所から燃えながら塵となってしまうとは…」

 圧倒的なエイケンの力に帝国軍の指揮官は冷や汗を流し恐れおののいた。

 「なにをやっておる!相手は一人ぞ!囲って手数でおせ!」

 敵軍の指揮をとる漆黒にかがやく鎧を全身にまとい巨大な戦闘斧をもつ老兵が指示を出すと敵兵はエイケンをぐるっと囲み一斉に襲い掛かった。

 「なめんなよ?俺の剣に死角があるとおもうなよ?」

 襲い掛かる無数の兵をみながらエイケンは火と風の属性のバランスを変えた。

 「なっ!一瞬でだと!?」

 バチっという放電をした瞬間エイケンの体がぶれるようにみえ、次の瞬間襲い掛かった敵兵が一瞬ですべて切り伏せられそれをみた老兵は驚きを隠せなかった。

 「苦労したんだぜ?こっちも色々調べてよ?属性ってのは同じ組み合わせでもどっちかの強さが変われば上位の属性がかわるってことを知ったんだ。だったらよ甥っ子にできて俺にできねぇ道理はねぇだろ?」

 「なんと!いつのまに!!」

 まだまだ老兵との距離があったがエイケンは直線上の敵をすべて切り伏せ老兵の後ろに回り込み刀を肩にあてながら声をかけ、まだ先にいたはずのエイケンに後ろから声をかけられた老兵はおどろき距離をとった。

 「爺さんがこの軍の頭みてぇだな?年寄りは無理せずさっさと帰ったほうがいいぜ?」

 「ぬかせ!こわっぱが!わが斧の錆にしてくれるわ!」

 エイケンがめんどくさそうに声をかけると顔を真っ赤にした老兵は身の丈ほどある巨大な斧を片手で軽々持ち上げエイケンにむけ怒鳴り散らした。

 「元気な爺さんだなぁ。いいのか?黙ってても生い先みじけぇ人生、ここで終わっちまうぞ?」

 「はっ!老いたとはいえこのザルバス敵を目の前に背をむけるなどするわけがなかろう!」

 刀をザルバスにむけたエイケンの言葉を鼻で笑い飛ばし両手で斧をもち高々と振りかぶった。

 「そうか爺さんは武人か、すまなかった無粋なことをいっちまったな」

 「ほぅ…礼儀を知るものだったとはな……こちらこそ失礼つかまつった。儂は西の地より遣わされエターニャ神皇国に助太刀にまいったザルバスと申す」

 「俺はドラニスタに在を置き、この大陸で13英傑ナンバーズと呼ばれているエイケン=タチバナだ」

 異様な雰囲気に周りの兵が手出しできずにいる中、ザルバスの言葉を聞きエイケンはただの兵ではないことをしり頭をさげるとザルバスはニヤリと笑いお互いに一度武器をおろし名乗り合った。

 「では尋常に」
 
 「ああ」

 「「いざ勝負!!」」

 斧を振り上げたザルバスと刀を横なぎにふるったエイケンが同時に動き出し一瞬のうちに交錯した。

 「見事なり」

 「おう!」

 斧を振り下ろす間もなく胴を払われたザルバスが斧をゆっくりと力なくおろし笑顔をうかべいい前のめりに倒れた。そしてザルバスが魔力や特別な力をつかってことなかったことにたいし礼儀として技だけの勝負にこだわり燐気すらつわずに戦ったエイケンは満足げにうなずいた。

 「なっ!?ザルバス様が!!」

 「うおぉぉぉぉ!エイケン様が勝ったぞ!!!」

 一部始終を見ていた双方の兵たちは対照的な反応をしこれにより戦況は一気にかわり帝国軍が敵軍を圧倒し始めた。

 「カトリーヌ様!エイケン様が敵将を一騎打ちで打ち破りました!」

 「さすがですわ!今が好機ですわ!!」

 「ぶがっ!いたい!」

 「はっ!!」

 嬉しそうに息を切らし報告に来た兵のことばにカトリーヌが立ち上がりいまだ倒れていいたコニーが地面に頭を打ち付け目を覚ます中、兵は自軍の勢いそのままにかけていった。

 「いたたたたっ!お?さすがエイケン様ですねぇ。盛り返してるどころか逆転しちゃってるじゃないですか」

 「なにを暢気なことを、エイケン様が敵将をうちとったんですわ。指揮官を失った今が好機なんですのよ?」

 へたり込みながら頭をおさえたコニーが戦況をみて暢気にしているのをカトリーヌは深いため息をはきジト目でみていった。

 「では畳みかけましょう。複合魔法は負担が大きいのでもう使いませんが私とベヘモートさんの力はあんなものではありませんよ?」

 「なっ!?なんという数ですの!?」

 立ち上がり再び眼帯をはずしたコニーが杖を掲げるとバスケットボールほどの火の玉が数十という数上空に出来上がった。
 
 
 「逃げるな!相手は剣士だ!距離をとれ!弓と魔法で攻撃しろ!!」

 「数が多いですがただのファイヤーボールですよ。では!いけ!!」

 「うわぁー!!なんだ!?」


 ザルバスがやられ指揮系統を失った敵兵は烏合の衆と化し戦場から逃げる者、自棄になりむやみに攻撃するものなどが溢れかえる中、一人の中隊長の言葉に魔法と弓でエイケンを攻撃しようと周りを取り囲んだ兵にコニーが放った無数のファイヤーボールが降り注いだ。

 「あぶねぇなぁ!コニーの野郎、俺にまで当たったらどうすんだ!」

 「一体どこから魔法を撃っているのだ!?」

 「いた!いました!敵本陣より攻撃されておりま…うわぁ!」

 紙一重で降り注ぐ火の玉をかわすエイケンと必死にどこから攻撃されているのか探す敵兵が混乱する中、コニーの炎の弾幕はやむことがなかった。

 「敵本陣からだと!馬鹿をいうな!どれほどの距離があると思っているんだ!」

 「くそっ!せめてお前は道連れだ!やれやれ!」

 本来ならば考えられない射程距離の魔法を見て驚く兵と自棄になり周りの兵と共にエイケンだけでもともう一人の兵の指示で矢と魔法を同時にいくつも飛ばした。

 「んなもん、俺に届くわけがねぇだろ」

 「なっ!?ぐはっ…」

 飛んでくる矢と魔法をみて深いため息を吐きエイケンが刀を横一線にふるうと斬撃が飛びすべての攻撃と兵を切り伏せた。

 「別に飛ぶ斬撃なんざセナあいつだけの技ってわけじゃねぇんだぜ?」

 刀を肩で担ぎエイケンがつまらなそうに答えた。

 「くそ!一旦ひけ!増援がきたら態勢を立て直すぞ!ひけひけ!!」

 「おい!おめぇら、逃げるなら追わねぇ。ザルバス殿の亡骸をもっていってきちんと埋葬してやれ」

 エイケンは息絶え横たわるザルバスを指し逃げる敵兵に声をかけた。

 「そんな役にも立たなかった老いぼれなどいらん!死ねばただの屍、肉の塊だ!」

 「てめぇらの頭じゃねぇのかよ」

 「しらん!急によそからきてあれこれ口うるさく命令ばかりしくさったただの老害だっ!」

 「そうかよ…爺さんあんたの気持ちは部下に届いてなかったみてぇだ…」

 エイケンの言葉に答えた若い兵が憎し気にザルバスを睨み唾を吐きかけた様を見て、自身もエリスという弟子を取りドラニスタでは兵の訓練もみていたエイケンは、若い兵が戦場で死なぬようにあれこれと言っていたであろうザルバスを憐み偲んだ。

 「とりあえずは終わりましたわね」

 「ふぅ~そのようですね。しかし2陣3陣とこないとは限りませんよ」

 「ええ」

 その後もエイケンは降参を促しながらも残党を排除し、コニーはやむことのない火の玉を振らせ続けエイケンとコニーたちが介入し半日少々…ストラトス帝国防衛戦はひとまずの勝利を得た。
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