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第6章 小話

とある歌姫のお話

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 「おじい様…私セナに置いてかれてしまったけど…どうやって帰ればいいのかなぁ」

 「神官騎士団長もきまったし近々俺らも撤収すっから、最悪帝国まで嬢ちゃん送るぜ?」

 「カインさんありがとうございます」

 「ほっほっほ!心配はいらんと思うがのぉ」

 セナがリネアに転移して少々時間がたち落ち着きを取り戻したアリアが今後のことでため息交じりに不安を口にする中、イースだけは髭を撫で余裕そうに笑って座っていた。

 「なんだよ、じいさんアテでもあるのかよ」

 「アテもなにもセナ殿が近々迎えに来ると思うておるだけじゃよ」

 「はぁ?」

 「来てくれるかな?」

 「うむ。急いで帰ったのはブレイダーで預かっている子らを親に早くあわせてやりたいからじゃろうて」

 「そっか、話を聞いてからソワソワしてたのはそのせいだったんだ」

 「うむ、たぶんの。2~3日もしたら迎えに来るじゃろうて、それまでゆっくり待っていておあげ」

 「はい!」

 セナの姿を思い出し納得したアリアが満面の笑みで頷いた。

=========================================

 「失礼いたします」

 「どうしました?」

 3日後、神官がペドロの執務室にノックとともに入室し、その姿が少々焦っているようだったのでペドロが不思議そうに尋ねた。

 「はい。それが特別神官騎士団長のリネア王国英雄セナ様ご一行がおこしに」

 「え!?すぐに通してください!それとアリアにも連絡を!」

 「か、かしこまりました」

 おもわぬ相手のはやすぎる訪問にペドロもとりみだしながら神官へと指示を出しセナをまった。

 「失礼します」

 「セナ様!ひどいですよ!」

 「すいません…あは…あはははは」

 しばらくして神官がセナを連れてきて一目見たペドロがセナへとつめよるとさすがのセナも悪かったと思ったのか目線をそらして乾いた笑いでごまかした。

 「はぁ~まぁいいです。それより褒章金は本当につかってしまっていいのですか?」

 「もちろんです!すべて使い切ってしまってください!」

 「わかりました…それと今アリアを呼んでおりますので…ご覚悟をおきめになられたほうが」

 「え゛っ!?」

 「セナっ!!」

 あきらめたように頷いたペドロだったが次に言った言葉でセナが今度は絶望したような顔をした時、勢いよくドアが開かれものすごい剣幕でアリアが入室してきた。

 「や、やぁアリア」

 「やぁじゃない!ひどいよ!置いてけぼりにするなんて!!」

 「いやぁ流れでつい…ごめんごめん」

 「なんの流れよ!もう!!…はぁ~…それで?子供たちは無事にご両親にあえたの?」

 「ん?うん。嬉しそうだったよ」

 「そっか…なら今回だけはゆるしたげる」

 「ありがとう」

 深いため息とともに尋ねられたことにセナが嬉しそうに答えるとアリアは怒る気力をなくした。

 「それでセナ様はアリアを迎えに?」

 「それもありますが、転移できてしまったので子供たちと前回の僕たちの入国料をお支払いにきたんですよ」

 「ふふっ、そんなものは要りませんよ。今後エターニャは従来の入国の審査だけで誰でも来れて誰でもでれる国になったんですよ」

 「え?そうなんですか?」

 「はい。アマリウス様は慈愛と豊穣の神ですから人々からわざわざ足を運んできてくれた方々の不利益になることはやめにしたのでございます」

 にっこりと笑い答えたペドロにセナはある種の尊敬の念をこめた目でみていた。
 
 「完全に化けましたな」

 「ええ、立場と周りが人をかえるといういい例ですわ」

 「ははは…ひどい言われようですが返す言葉もないですな」
 
 ヤオとタオの言葉に苦笑しながら頭を掻きペドロがいった。

 「おおセナ殿、思ったより早かったのぉ」

 「イース様この間は突然申し訳ありませんでした」

 「いやいや、楽しませてもらったよ」

 騒がしい執務室の様子を見に来たイースがセナを見ると朗らかに笑っていった。

 「イース様はまだしばらくこちらに?」

 「うむ。むこうはカトリーヌがおるでな任せて大丈夫じゃからのぉ。こちらの新教皇が決まるまではおることになりそうじゃ」

 「そうですか」

 「セナ殿は今後どのようなことを?」

 「私は一度リストニアにもどり子供たちのことをギルス様にご報告してからジルネイに行こうと思ってます」

 「そうか…ふむ。ならばアリアもつれていってやってくれんかのぉ」

 「え?でもアリアだって忙しいのでは?」

 「国王あてに文を書くのですまんがわたしてくれんか?アリアの国外への移動の願いじゃ」

 「わかりました」

 「おじい様ほんとうにいいの?」

 「うむ1カ月ほど自由にしてよいよ。それに色々見て回るのは知見を広めるのにもいいことじゃて、ジルネイならばそうそう何も起こらんじゃろうしな」

 「ありがとうおじい様!」

 「ほっほっほ!しっかり見て回っておいで」

 「はい!セナよろしくお願いいたします!えへへへへへ」

 イースの言葉にペドロも頷き自分も許可をいただけるように文を書くといってくれアリアは嬉しそうにセナの腕につかまった。

 「では、あまり皆さんのお邪魔をするのもあれなので我々はいきます」

 「セナ様、あたらためて色々ありがとうございました」

 「セナ殿、アリアをよろしくたのむぞい」

 「はい」

 「叔父様!おじい様!いってきます!!」

 アリアが満面の笑みで手を振りながらセナの転移で消えていった。


 「いってしまわれましたね」
 
 「あの子がもどってきたときのためにがんばろうぞ」

 「はい」

 転移していったアリアの立っていた場所を眺めながら少しさみしそうにいったペドロにイースは檄を飛ばし二人は教皇選出などのために仕事に戻った。

 

 

 
 
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