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第6章 小話

とある家族のお話

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 「はぁ~…。セナ様お体なおっだがなぁ」

 「そんたにお強い方だばぎっと大丈夫よ」

 「んだな。信じでまってあげなさい」

 エターニャ神皇国、聖都シルティアのすぐ近くの村で不当奴隷とされていた両親や同じ村の人々と合流したリリスが日に何度も空を見てため息をつき同じことをいっていた。

 「リリスがあそごまで心配するなんて余ほどの方なのね」

 「んだな」

 「皆も手紙無事さ届いだがな」

 「はははっ!まだだろ、こごがらリネアまで半年はかがるんだ」

 ブレイダー家にいる皆も早く家族に会わせてあげたいと、気のはやるリリスの頭を撫でながらリリスの父が笑顔を浮かべた。


 ===============================


 「只今戻りました」

 「おかえりなさいませ。随分とお早いお帰りでございますね」

 「はい。急いで知らせたいことがありまして」

 「さようにございますか、ギルス様は執務室におられます」

 「ありがとうございます」

 王都のブレイダー邸へシルティアから戻ったセナを出迎えたセバスがギルスの元へとセナを案内した。

 「ギルス様、セナ様がお越しです」

 「ん?もうもどったのか。わかった通してくれ」

 「失礼します」

 「もう爺を送ってきたのか、随分早い帰りだな」

 「はい。実は至急お願いしたいことがありまして」

 「ん?願い?」

 「はい。実は…」

 執務室に通されたセナがシルティアでの出来事とリリス達の村人のことを伝えた。

 「なんと!ではあの子らをエターニャへ向かわせねばならんな!長旅になる故、準備をしてやらねば!」

 「馬車を1台いただければ私が転移で送ろうとおもってます」

 「そ、そうか…無理はせんようにな」

 「はい」

 「時にセナ殿」

 「なんでしょう」

 「荷を満杯につんだ大き目な馬車も一緒に転移するとしたら何台いけそうか」

 「え?んーそうですね距離が結構あるので…5台…積荷の重さ次第では3台くらいだと確実だと思います。それが?」

 ギルスの問いにセナが不思議そうな顔をした。

 「あの子らは一時でも我が家の家族となった者達だ、それを手ぶらで行かせるわけにはいかんだろ。転移ならば食料だって傷まず運べるのであれば持たせれるだけ持たしてやりたいと思ってな」

 「!?いいんですかっ!?」

 「私がセナ殿にたのんでおるんだがな」

 「ありがとうございます!!」

 セナの言葉にギルスが苦笑しながら答えるとセナは満面の笑みで礼をした。

 「セバス準備を、セナ殿もたのむ」

 「はい!」

 「はっ!かしこまりました」

 ギルスの言葉にセバスも嬉しそうに答え準備の為、セナとともに準備のために退室した。

 「あらセナ様もうお帰れになられてたんですの?」

 「はい実は…」

 廊下を歩いていたセナにエミルが声をかけるとセナはこれまでの話を聞かせた。

 「まぁ!そういうことでしたの!セナ様、レイファもおつれください」

 「え?」

 「レイファ、セナ様について行ってあの子たちに用意していた物を手伝って差し上げて」

 「わかりました。セナ様お手数ですがよろしくお願いいたします」

 「それは構いませんが用意していたものとは?」

 「はい。エミル様があの子たちがご両親にお会いする際に着用するお召し物をご用意してくださっていたんです」

 「そうだったんですか」

 「当然ですわ。なのですからせっかくご両親にお会いするんですもの、それくらいのことしかやってあげれないのが心苦しいくらいですわ」

 驚くセナにエミルは当然だと答えた。

 「短い間ですがまた一緒に旅ができますね」

 「!?そうですね…お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします」

 嬉しそうに微笑んだセナにレイファが驚いたが取り繕うように表情を硬め深々と一礼した。

 「では準備をはじめますわよレイファ!」

 「はい!」

 のちほどとあいさつを交わしそれぞれが準備に奔走を始めた。

 「メディー!皆さんも」

 自室にもどるとメディーをはじめ全員が待機していたため今後の予定を説明した。

 「それならいい馬車があるのですぐにセバスさんと合流して準備します!」

 「私たちもメディーを手伝います」

 「おまちください!マイン殿はセナ様がお作りなられていた各種ポーションの準備を手伝ってください」

 「わかりました!」

 「ではコルネ、我らは子らに持たせる当面の資金の準備をしましょうぞ!」

 「了解」

 「皆ありがとう!よろしくおねがいします!」

 「「「「「「 はい! 」」」」」」

 セナの指示をまたず各々が協力し合って動き始めるのをセナは頼もしさを感じ嬉しそうに頭をさげた。

 「では明日の朝いちばんでセナ殿が皆をご両親の元へ届けてくれる。みな今までさみしい思いに耐えよく頑張った!ご両親にあったら思いっきり甘えるがいい!さぁ!たくさん食って明日元気な姿をみせてやれ!」

 日が暮れる前に準備はできたが子供たちの負担も考え翌日の朝の出発とし、ブレイダー家は子供たちを送る豪華な夕食をふるまった。

 「どうしたの?たべないの?」

 「セナ様…明日でセナ様ともギルス様どエミル様、それに皆にももう会えねぐなるの?」

 一人の女の子がいちおうフォークをもってはいるがまったく食事に手を付けずに悲しそうに尋ねた。

 「そんなことはないよ。ちょっと距離はあるけど会いたくなったらいつでも遊びに来てね?」

 「ええの?」

 「もちろんだよ!」

 セナの言葉に女の子が嬉しそうに笑うと他のメイドたちや執事たちも優しく嬉しそうな微笑みでうなずいていた。

 「おいは一生懸命勉強して身体も鍛えで大人になったらここの騎士団になるんだ」

 「そうなのかい?」

 「んだ!ガルハルト様みだいながっこえ騎士になって今度はおいがみんなどごまもってけるんだ!」

 「セナ様!おいはセバス様みだいな何でもできるがっこえおどなになりだい!」

 曇りもなく純真無垢な笑顔をうかべ元気にあこがれの人物のようになりたいという男の子たちにセナも嬉しそうな笑顔をうかべていたが突然名前を呼ばれた二人は照れくさそうにしていた。

 「お、おいは…おいはギルス様みだいにでっかぐでがっこえふとになりだい」

 「一番チビなのにが?」

 「あははははっ!!」

 一人の小さな男の子が勇気を振り絞っていうと周りの男の子たちがからかって笑った。

 「友達の夢は笑っちゃダメだよ?それにギルス様が大きいのは身体だけじゃなくて心の方が大きいからかっこいいんだよ」

 「むずがしくてわがんねぇけど、セナ様もギルス様どごかっこえで思ってらの?」

 「もちろんだよ最高にかっこいいと思ってるよ」

 「そしたらおいと一緒だね!」

 「あははははっ!そうだね!一緒だね!」

 にっこり笑っていった男の子の言葉にセナは驚いた後に楽しそうに笑って答えた。

 「ですってよ?あなた」

 「ぐほっ!ぶほっほっほ…そ、そうか」

 セナたちの会話を聞いていたエミルがわざとらしく平静をよそおっていたギルスに声をかけると耐え切れずワインにむせた。

 「おいはエミル様みだいに優しくてきれいになってセナ様のお嫁さんになりだい!」

 「ええ!?」

 ふんす!と気合をいれて一人の女の子がいい、それを聞いたセナが盛大に驚いた。

 「バカが!エミル様はギルス様ど結婚してらがらセナ様どは結婚でぎねぁよ!」

 「あっ!そっが!あははははは!!」

 一人の男の子がつっこむと女の子はそうだったと笑い飛ばした。

 その後もたのしく食事をすませ明日に備えて子供たちを休ませた。

 ==================================

 「おい!リネアの英雄様がお越しになられてるみたいだぞ!!」

 「今、村長が対応しているようだぞ!」

 「え!?セナ様が!!??」

 翌日、リリスのいる村が朝から騒がしくなにごとかと思っていると村人たちの会話が耳に入りリリスは村の入り口へと全速力で駆け出した。

 「このたびはご足労いただきありがとうございます。何もない村でセナ様をおもてなしできる場所すらありません、むさくるしい場所で申し訳ありませんが我が家で気のすむまでお休みいただければと」

 「いえ、こちらのほうこそ急な来訪でご迷惑をおかけしてしまって、今日はこの村にいる獣人の方々に用がありまして」

 「セナ様っ!!!」

 自己紹介をしたセナを恭しくもてなしていた村長と恐縮しているセナの元にリリスが息を切らせてかけよった。

 「リリス!元気そうでなによりだよ!」

 「セナ様!もうお体が大丈夫なのですか!?」

 「うん。おかげさまでね。それでシルティアでリリスがここで村の人たちと合流したと聞いてみんなを連れてきたんだよ」

 「え!?」

 「姉っちゃ!!」

 「皆!!」

 セナの言葉の後、馬車からとびだした子供たちがリリスへとかけよるとリリスは大粒の涙をボロボロとこぼしみんなを抱きしめた。

 「セナ様、むこうが彼らが住まう場所になっておりますゆえ、ご案内いたします」

 移動しながら村長の話をきくと、もともと優しく獣人への扱いに心を痛めていた村長がペドロの発言後すぐに獣人の保護を宣言し村で色々な場所から来た獣人を保護していたようだった。

 「母っちゃ!父っちゃ!みんなも!!早ぐ来で!!」

 もともとの村人と協力し居住区をあらたに広げた場所にたどり着くとリリスが嬉しそうにあたりを走り回りながら全員を呼び出した。

 「リリス、どうしたの?そんたにあわでで」

 「セナ様が!皆どごつれでぎでぐれだんだよ!」

 「え?」

 「母っちゃ!!」

 「エルム!!」

 リリスの言葉に集まった人々が驚いていると、エルムとよばれた女の子が自分の母親をみつけ泣きながら抱きつき、それを皮切りに次々と子供たちは自分たちの親の元へと飛び込んでいった。

 「村の人たち全員ぶじだったんだね?」

 「はい!女の人や体の弱い人、年寄りを逃がすために父っちゃだぢがわざとつかまってうまくやってたみたいで」

 「そっか」

 リリスから詳しい話をきき、そのごリリスの両親をはじめとする子供たちの親たちに泣きながら感謝されたセナが困っているとヤオやタオ、レイファをはじめとしたついてきた者たちが馬車の中身を説明し村全体で宴会が開かれることになった。

 「セナ様…このご恩は一生忘れません。一生懸命精進し必ずセナ様のお役にたてるようになりましたらセナ様の元へお伺いいたします」

 楽しそうに盛り上がる宴会を見て朗らかに笑っていたセナの元にきたリリスが決意を秘めた目で話した。

 「リリスそんなことは思わなくてもいいよ。これからが大変なんだみんなで力を合わせてがんばってね?力になれることがあればいつでもいってくるんだよ?」

 「セナ様…」

 優しく微笑みリリスの頭をなでながらセナが言うとリリスはボロボロと感激の涙をながした。

 「リリス、ギルス様から言伝です。もし村の人々でリネアに移住したいという人たちがいたらブレイダー領でいつでも受け入れる。家や仕事なども相談に乗るとのことなので皆さんにその旨おつたえしてね」

 「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 レイファのことばにリリスが驚いた後なんども頭をさげつづけた。

 「せっかくみんなが揃ったんだ楽しんでおいで」

 「は、はい!」

 セナの声で頭を下げるのやめたリリスがセナたちの優しい目をみて嬉しそうにうなずき村の人々の輪へとかけて行った。

 「さて!ここにいても気を使わせるだけだから僕たちはシルティアで一泊してかえろうか」

 もう一度、リリス達を見て安心したようにうなずいたあとセナがきりだすと、全員がうなずいたためセナたち一行はそっとシルティアへと転移した。
 
 「おい!ほんとうにかえってしまわれたんじゃないかっ!?」

 「なんてことだ!!」

 「…セナ様ありがとうございました」

 そして少したってセナたちがいないことに気づいた大人たちがあわてて探し回る中、リリスはセナが気を使ってくれたことに気づき感謝の祈りをささげた。
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