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第6章 エターニャ神皇国編

英雄もどる⑤

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 「んー……」

 「セナ様なにをお悩みに?」

 晩餐会の翌日の朝、日課をおえたセナが腕を組みなにかをかんがえているのをお茶を出しながらヤオが訪ねた。

 「昨日国王様から自分の旗印を用意して知らせる様に言われたじゃないですか」

 「そういえばそうでございますな」

 「全然おもいつきません」

 セナは理由を告げがっくりとうなだれた。

 「ふむ。そういうものは一目見てセナ様だと誰しもがわかるものがいいと思いますゆえ、まずはセナ様を表すものをお考えになられてはいかかですかな?」

 「僕をですか…んー、そもそもそんな特徴あるかなぁ」

 「大いにおありになられるかとおもいますが、たとえばブレイダーでしたら剣と盾となっております」

 「たしかにブレイダーって感じですよねぇ」

 「そうだ!色々な人に僕と言えばと尋ねてみます!」

 「それも一つの手ですわ」

 セナの言葉にタオも頷き、セルジオの準備ができるまでセナ達は色々な人へ尋ねることにした。

 「というわけで皆はどうおもう?」

 「んー特徴が大渋滞なセナ様ですからね。悩んでしまいますね」

 「私は、やはり一番印象にあるのはセナ様の刀ですね」

 「私もです」

 メディー、エリス、マインにたずねたセナにメディーは頭をかしげ、エリスとマインは初めてセナに助けられたことを思い出していた。

 「そうだよね、やはり我らはセナ様と言えば刀ですね」

 「なら私は迅風一択ですよ!」

 二人が納得したように刀だというとメディーは間髪入れずに迅風を押した。

 「ちなみにお二人は?」

 「我らはグラニール殿ですわ!ね?ヤオ殿!」

 マインの問いに迅風に対抗するかのようにタオが答え、ヤオに他の選択肢を選ばせなかった。

 その後も朝食をとりおえセルジオがまだ少し準備に時間がかかるとなり、セナは冒険者ギルドや治療院、王国騎士団の詰め所などに顔をだし聞いて回った。

 「だいぶイメージが集まりましたね」

 「ええ、思っていたより皆のイメージが同じことに驚いておりますわ」

 「優しい、英雄、刀、迅風、グラニールあたりはやはり多かったですね!中には魔王様とこたえる一部の変態もいましたが」

 メディーが興奮気味にはぁはぁと息遣い荒く魔王様!とこたえた男どもを思い出し身震いしながら答えた。

 「あとは街の女性は歌姫の剣と答えておりましたな」

 「ふぐっ!」

 ヤオの言葉にセナはクッキーをのどに詰まらせた。

 「あとはモテない冒険者の一部からはハーレム王とよばれてましたね!」

 「い゛っ!?」

 セナに聞こえ逆鱗にふれることをおそれセナに聞こえない様にいった冒険者たちの言葉にセナは驚きを隠せなかった。

 「色々話をお聞きになりましたが結局一番多かったのは……」

 「ブレイダー家でしたね!」

 「マークはもういらないのでは…」

 圧倒的な回答がブレイダー家という事実にセナはもはや自身の印はいらないのではないかと思った。

 「そういうわけにはいきますまい、ではブレイダー家の印をもとにしてみてはいかがでしょう」

 「そういうことなら私に任せておいてください!案をいくつかデザインしておきますからっ!」

 「じゃあ、メディーに任せるよ。よろしくお願いします」

 「はい!お任せください!!」

 セナの言葉にメディーが胸をたたいて頷いた。

 「セナ殿、我らまですまんな」

 「いえ!こちらから声をかけさせていただいたので」

 朝食時にセルジオをマルンへ送り届ける際、一緒にマルンへいかないかとギルスとエミルに声をかけたセナにギルスが嬉しそうに礼をいった。

 「セナ殿、それでは頼む」

 「セバス、ガルハルト!留守は頼んだぞ!」

 「おまかせを」

 「御意に!」

 「じゃあ、メディー、エリスさん、マインさんいってきます!」

 「お気をつけて!」

 セナがリストニアに残る3人に声をかけると一瞬でその場から消えた。

 「さてと!迅風の散歩がてら私は工房へいきます!」

 「私は治療院へいくわ」

 「私もメディーと工房へいく、マーカス様がおすすめの武器屋に紹介状を書いてくれるそうだから」

 セナを見送った3人がそれぞれの目標のために動き始めた。

 ===============================

 「つきました」

 「ありがとうセナ殿」

 「本当に一瞬ですわね…」

 「ああ、瞬きし終えるとマルンだった」

 マルンのブレイダー家にある執務室に転移したセナの言葉に一度体験しているセルジオは余裕で礼をし執事を呼ぶ中、エミルとギルスは驚きで見慣れた部屋をキョロキョロと見渡していた。

 「おかえりなさいませ!」

 その後、セナ達一行をマルンのブレイダー家につかえる者すべてが出迎えそのまま馬車を準備させ街の状態をみてまわり、マルンの町の人々が自分たちが知らない間にギルスやエミル、それにセナまでがマルンにいることに驚くのをセルジオとギルス、エミルはいたずらが成功した子供のように嬉しそうに笑顔で手を振り答えていた。

 「セナ殿、我らは明日の夕方にもどればいいのでライズのところでゆっくりしてきてくれ」

 「はい!ありがとうございます!もう夕方ですが今からいっておどろかせてやろうとおもいます!」

 「くっふっふ!ああ!気を付けてな!」

 「はい!ではいってきます!」

 ギルスとセナの会話を聞いていたブレイダー家につかえる者達は、いたずら好きなところまで同じなんだと改めてセナもブレイダーなんだなと変なところで再確認しあう中、セナはライズの元へと転移した。

 「無事につけてよかったですわ」

 「ビルバーンさんとアカシカさんが座標で位置を補正してくれたおかげです」

 エルの村は壊滅状態で街並みが変わっているため本来なら転移できないが、目に宿る二人が地図をもとに位置をサポートすることでセナ達は無事に転移できた。

 「あれ!?セナ様じゃねぇですか!歩きできたんですかい?」

 エルの村の門番をつとめる男が歩いてくるセナに驚きながら声をかけた。

 「いえ、飛んできました。ライズはいますか?」

 「飛んで?まさかそんな冗談を、ん?でもセナ様だから飛べてもおかしくねぇか!まあいいや!ライズなら家にいると思いますぜ?あいつの新しい家はあの丘の赤い屋根です」

 「あ、ありがとうございます」

 「へい!ゆっくりしていってくださいよ」

 冗談でいったセナの言葉を信じた村人になんともいえない複雑な心持でなんとか礼を言いセナは後ろでくすくすと笑うヤオとタオを引き連れライズの家へと向かった。

 「はーい!誰だい?ノックなんて慣れないことし…へ?」

 「夕飯時にすいません」

 ライズの家のドアをセナがノックすると、何も知らないリズがエプロン姿でドアをあけセナが立っているの見て驚き固まった。

 「お久しぶりですリズさん。ライズはご在宅ですか?」

 「……あ、あんたぁーー!!」

 「っんだよリズ。んな声出して……はぁ?」

 驚くリズにどこか満足げにセナが声をかけると腰をぬかしかけたリズが助けをもとめるかのようにライズを呼びめんどくさそうにあらわれたライズがセナを見て固まった。

 「やぁライズ。久しぶり遊びにきたよ」

 「はぁ!?なにが、やぁライズだこらっ!てめぇはいつもいつもいきなり現れやがって!」

 「あはは!おどろいた?飛んできたかいがあったよ」

 「おどろいたわ!ってか飛んできたなんだよ!」

 「あんた、セナ様なんだよ?飛べるようになってたって不思議じゃないよ」

 「ん?ああ、それもそうだなセナだしな。まぁよく来たな!あがれよ!」

 「う、うん。ありがとう」

 あっさりと信じた二人をみて周囲の持つ自身への認識を聞くのが怖くなりながら肩を震わせる二人を引き連れライズ宅へと入った。

 「飯まだだろ?食ってけよ」

 「ありがとう、土産がてらに色々な場所の名産を買ってきたんだ」

 「色々って神皇国と帝国だろ?ってどんだけだすんだよ!」

 ライズが夕食に誘いながらテーブルにつくと向かい合うようにセナが座り自身のバッグから次々と食材や料理を取り出し始め量に驚いたライズが止めに入った。

 「エターニャとストラトスのもだけど、こっちはドラニスタでこっちは魔大陸で買ってきたものだよ」

 「はぁ?ドラニスタはわかっけど魔大陸ってなんだよ」

 「あぁちょっとケガして魔大陸で治療してもらったんだよ」

 「今のおめぇが怪我するって魔王とでも戦ったんかよ」

 「いや、魔王様に治してもらったんだよ」

 「はぁ!?ぜんっぜん意味わかんねぇ!」

 セナの話を聞きライズが頭を掻きむしりながら叫んだ。

 「あんたうるさいよ!ココがびっくりしておきちゃったじゃないか!」

 「いてっ!だってよぉセナが怪我して魔大陸で治してきたっていうんだぜ?」

 「へ?セナ様が怪我!?大丈夫なんですか!っていうかセナ様が怪我だなんて魔王とでも戦ったんですか?」

 「い、いや……」

 「そう思うだろ?でもよ、その魔王様が治してくれたんだとよ!」

 「はぁ!?意味わかんない!」

 ぐずるココを抱きながらキッチンからでてきたリズがライズをはたき叫んだ理由をききライズとまったく同じリアクションをとったことにセナはなんとも言えない気分になりつつなんとか受け答えしようとした。

 「まぁあとで話すよ。それよりリズさんこれお土産です」

 「え?こんなに!?料理まであるじゃないですか」

 「おお、この馬鹿加減をしらねぇからあちこちから買いあさってもってきたんだとよ」

 「失礼なちゃんと加減してるよ」

 「どこがだよ!」

 「みたことない料理と器に食材もあるんですがどこで?」

 「ああ、帝国と神皇国あとはドラニスタと魔大陸です。どれもおいしいから二人にも食べさせたくって持ってきたんですよ」

 「あ、ありがとうございます」

 「いえいえ、いつも急にきて迷惑かけてますから」

 自分では一生いくことない国々の料理や食材を前にリズが驚きながらも礼をした。

 「あと……失礼ですが聞いていいですか?」

 「なんですか?」

 「セナ様…その目はどうなさったのかなと」

 「目?ああ!!セナおめぇ目が変になってんぞ!」

 「ん?ああ、これはケガで失明したんで龍眼と魔眼を移植してもらったんですよ」

 「し、失明!?だ、大丈夫なんですか!?」

 「ええ、もうすっかり、ケガする前より調子がいいくら、いたっ!なにするのさ!」

 「うっせぇ馬鹿野郎!てめぇがむちゃばっかりこいてるからだろうが!なにちょっとケガしただ!馬鹿たれ!」

 「その辺で一度おやめになられては?ココちゃんが悲しんでおられますわ」

 「は、はい。すいません」

 「すまねぇ……」

 タオの言葉にセナとライズがココを見て素直に謝罪した。

 「とりあえず経緯を私からご報告いたしますゆえ、夕飯にしませぬか?」

 「そうですね。この料理もありがたくいただきます」

 ヤオの言葉にリズがすでに作った料理をもってきてセナの出した料理と合わせて豪華な食事となった。

 「あっ!リースを呼ばなきゃ!」

 「あぁそうだな」

 「リース?」

 「おう!うちの家族だ」

 食事の準備が整い全員が席につくとリズが立ち上がり窓をあけた。

 「リースーー!」

 「ピィーー!」

 リズが空に向かって叫び少し経つと甲高い鳥の鳴き声が聞こえ純白のつややかな毛並みをしたテレゴノシスが一羽あけられた窓から家の中に飛び込んできて壁に設置されていた木の棒に止まった。

 「テレゴノシス!?」

 「おう!うちの新しい家族のリースだ!」

 「なんと……テレゴノシスに従魔の印が」

 驚くセナに自慢げにライズが紹介し首についた従魔の首輪を見てヤオが驚愕の表情をうかべた。

 「リース、ほらこいつが俺の親友のセナだ。ポーションをつくったやつだよ」

 「ピッ!?ピィ」

 「はじめまして、ん?いや気にしないで」

 ライズからセナを紹介されるとリースはマウントベアとの戦いを思い出しセナに頭をさげひとなきした。

 「ライズいつのまにテレゴノシスと?」

 「まぁ色々あってな!少しはゆっくりしていけるんだろ?飯を食いながらお互い話そうぜ」

 「そうだね」

 その日、ライズ宅では遅くまでワイワイと怒号と楽しそうな声が何度も響きあった。

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