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第6章 エターニャ神皇国編

震撼

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 「またれよ!」
 
 一触即発な両者に馬車から降りたイースがまったをかけた。

 「イース様!」

 「邪魔をしないでいただきたい神腕殿」

 イースをみたシルティアの兵が驚く中、ヤオがイースに冷たい目をむけた。

 「ここでの争いはセナ殿も望んでおらんようだし、ここは双方儂の顔をたてくれんかのぉ」

 イースはヤオの視線を無視し困惑した顔をしたセナをみたあと双方をみながら言った。

 「皆、気持ちはうれしいけどここは一旦おさえてもらえるかな」

 「…わかりました」

 「ちっ!命拾いしましたね!」

 セナがヤオ達に声をかけると納得いかない顔をしながらもエリスが頷いたがコニーは兵を睨みつけながらやられ役の悪党のようなセリフを言った。

 「すまんのぉ…ほれそなたらも武器をおさめられよ…この者達が暴れては儂では止められん。こちらの気が変わる前に収めるのじゃ」

 エリス達を見ながら一言謝罪したのち、兵をみてイースが引くように言った。

 「そんなイース様でも止められぬなど」

 「事実じゃよ?それにセナ殿が動けばこちらにおられるナンバーズの方々も敵になるぞ?そうなれば儂では実力的に止められん」

 驚く兵にイースが事実だと述べた。

 「それは…」

 「そもそも…この者達はB級冒険者のパーティーとドラゴニアの双爪じゃ、主ら相手にできるのか?」

 「なんとっ!?」

 「してお主らが優男と見下した者はリネア王国初代英雄でS級冒険者のセナ殿じゃが?」

 「リネアの英雄がこのような優男だと申されるのか?!」

 「え?待ってください!ではその後ろのバトルホースは…」

 「うむ。セナ殿の愛馬迅風じゃ」

 「あれが噂の悪魔の馬かっ!!」

 イースが何かを言うたび驚く兵がセナと迅風をみて蒼い顔に変わった。

 「あれが…悪魔王と愛馬の悪馬あくま…」

 「言われてみると禍々しくみえてくる…」

 後ずさりしながら兵がセナと迅風を交互に見ながらコソコソ話始めた。

 「あ、あの…もしかして悪魔王って…」

 「ぶっ!ぶぁっはっはっはっは!セナ!おめぇだよ!おめぇ!よっ!悪魔王!!あっはっはっはっはぁ!!」

 ショックを受けて尋ねたセナの背中をバンバンとたたきエイケンが涙目になるほど抱腹絶倒した。

 「あ…悪魔?禍々しい?…迅風のことですか?…神々しいではなくて?」

 額に盛大に血管を浮かべ、目じりがヒクヒクうごく笑顔をうかべたメディーが兵たちに尋ねた。

 「メディー?」

 「エリス…今回ばかりは止めないでください。あいつらをちょっと皆殺しにするだけですからぁ」

 わなわなと震えるメディーにエリスが声をかけると先ほどの笑顔のままメディーが言った。

 「いや…今回は止めない。セナ様と迅風は獣人達の救い主メシアとその使いだと思っている。やるなら一緒にやろうと声をかけただけです」

 「さすがエリスです。いいでしょう……一緒にやってやりましょう!!」

 メディーの言葉にエリスが首を横にふり止めに来たわけではないというと、メディーは満面の笑みでエリスの共闘を認めた。

 「なっ!?」

 「埒が明かん。さぁ行くぞ」

 血走るメディーをみてイースが困った顔をしている中、突然兵たちがバタバタと倒れ気を失い、その中心につまらなそうにイライラしているサイが立っていた。

 「神腕殿すまんな。しかし時間切れだ」

 「いいや…こやつらが死なずに済んだ。すまんのぉ」

 腕を組み無表情でいうサイにイースが申し訳なさそうに頭を下げた。

 「これでよし!さぁ!先に進みましょう!」

 その後、気を失っている兵たちはメディーが出したロープでつながれエリスやヤオたちにより門に吊るされ、満足げにその光景をみたメディーがさわやかな笑顔で馬車を進ませた。

 「おい!なんだ貴様ら…うげっ!」

 門から大聖堂正面にのりつけるまでの間に馬車を止めようとした兵は次々とサイにより殴り飛ばされ意識を失っていった。

 「時間の無駄だ…貴様らはただ道をあけろ」

 「皆さま大聖堂へ着きました」

 サイが大聖堂の入り口にいた兵を殴り飛ばすのを確認したメディーが馬車の中へ到着したことを知らせた。

 「もはや真っ当な話はできんな」

 「ああ…ただの侵略だな」

 「儂でももうどうなるのか…想像もつかん」

 「あはははははっ!面白くなってきたね!」

 「すいません…うちの馬鹿どもが…」

 馬車から降りたゲオルグ、レオ、イースが倒れた兵たちを見て諦めたようにいい、アディオンは面白い展開になってきたと上機嫌で、なぜかリレイが申し訳なさそうに3人に謝罪をしていた。

 「今ここで一番偉い奴はどこだ?」

 「きゃっ!?なにごとですか?」

 大聖堂に一行が入ると先頭を歩いていたエイケンがシスターへとデカい声で尋ねた。

 「驚かせてすまんのぉ。儂はリネアのイースと申すが」

 「え?イース大司教様ですかっ!?」

 「いかにも。それですまんが新たな教皇様がお決まりになられるまで、今はどなたが教皇代理を務めておるのかね?」

 「はい、それはペドロ様です。今は教皇執務室におられると思いますが、よろしければご案内いたしましょうか?」

 外での騒動に気づいていないのか若いシスターが無垢な笑顔でイースにいうとイースは嬉しそうに頷いて案内を頼むことにした。

 「え!?そ、それでは後ろにおられる方々は…」

 「うむ。リネア国王様、ジルネイ首相様、ストラトス皇帝様じゃて」

 「あわわわわ!そんなすごい方に私は…」

 「かまわんよ。よく案内してくれた感謝する」

 道すがらどういう用件できたのか等ニコニコしながらイースに尋ねていたシスターが同行者をたずねイースの答えを聞き顔を蒼くして恐縮するとゲオルグは優しい笑顔を浮かべ声をかけた。

 「もったいないお言葉をいただき光栄に思います」

 ゲオルグの言葉にカチコチに緊張しながらシスターが礼をいうのをみてセナ達は微笑ましい気分になっていた。

 「かわいい」

 「初々しいですわね」

 「確かに!」

 「そうだね」

 アリアがシスターの挙動を見て微笑み、カトリーヌは口元を隠し笑いをこらえ、エイケンがシスターを見ながら笑いアディオンも面白いおもちゃを見つけたような顔でシスターをみた。

 「あの…失礼ですが他の皆様はどのような?」

 「私たちはリネアで冒険者をしており、今回は主が皆様の護衛を賜ったので同行させていただいております」

 「ボクたちは暇つぶし!」

 「だな!」

 「一緒にするな私は弟子の成長を見るついでに来た」

 エリスとアディオン、エイケンとサイがそれぞれ答えた。

 「え?え?護衛と暇つぶしと成長を?」

 「混乱させて申し訳ない。こちらの方々はナンバーズのケンオウ、サイ様とエイケン様、4位アディオン様、5位リレイ様です。そしてこの方が我らの主、リネア王国初代英雄のセナ様です」

 それぞれの理由を聞き、混乱するシスターにエリスがセナ達を紹介した。

 「えぇぇぇ!!ナ、ナンバーズ様とリネアの英雄様までいらっしゃったんですか!?はわわわわ…もうすごすぎて申し訳ありませんが私の理解の範疇を超えてしまって…どうしたらいいか…」

 「ふふふっ、大丈夫ですよ。各国の王様もナンバーズの皆様も、そしてセナ様も皆、大変お優しく寛大な方々ですから」

 取り乱しわたわたするシスターを落ち着かせるようにエリスが笑顔で答えた。

 「あ、ありがとうございます…それで…お二人は?」

 「あら、ご挨拶が遅れましたわね。私はストラトス帝国第1皇姫のカトリーヌ=ストラトスと申しますわ」

 「皇姫様!?」

 「はい、そうですわ。そんなに固くなられずともよろしいですわ」

 「ありがとうございます…それで貴方は…」

 「私はリネア王国アマリウス聖教で歌姫をさせてもらっています、アリアです」

 「え?あなたが歌姫様ですか!?」

 二人の自己紹介を聞きシスターが驚いた。

 「あのってどういう意味ですか?…えっと」

 「あぁぁ!名を訪ねておきながら自分が名乗っておりませんでした!申し訳ございません!えっと私はコルネと申します」

 アリアの様子を見て自身がまだ名乗っていないことに気づいたコルネが焦りながら改めて挨拶をした。

 「コルネさんよろしくお願いします…それであのってどういう意味ですか?」

 「はい…あの大変申し上げにくいのですが…」

 「そこの者達またれ!!」

 コルネがアリアの問いに言いにくそうに答えようとした時、一行の背後から荒々しい声が飛んできた。

 「シスターコルネ!貴様らシスターを離せ!」

 「え?」

 一行が振り返ると20名ほどの神官兵が武器を構えており、コルネをみると怒りまるでセナ達がコルネを人質にとっているとでもいうような言い草をしてきた。

 「我らが誰かお判りになられていないようですが?」

 「黙れ!ペドロ教皇代理が貴様らは偽物だと仰せになったのだ!」

 「はぁ?」

 「事実貴様ら、シスターコルネを人質しているのが証拠!」

 「色々言いたいことはありますが…まずシスターを人質にはしてません」

 「嘘をつくな!事実…」

 「次に教皇代理はいつ私たちをお見かけになられそう判断なさったんですか?」
 
 「そ…それは…ええい!うるさい!教皇代理が偽物とおっしゃられたら貴様らは偽物なのだ!」

 「頭が痛いのぉ…」

 兵が激高し言った言葉に言った言葉にイースがこめかみを押さえ苦い顔をした。

 「皆さん偽物なのですかっ!?」

 「落ち着いてくださいシスターコルネ。私どものはあなたになにか強要したでしょうか」

 「あ、私がご案内すると申し上げました。国賓の皆様を疑うような発言申し訳ありません」

 「シスター!なにを偽物に!敵に頭をさげておられるのかっ!」

 「はぁ…まともなのはこのシスターしかいないんじゃないんですかね?」

 「そのようで」

 驚いたあと自身の行動を思い返し、失礼なことをしたと素直に頭をさげたコルネと未だ難癖をつけてくる兵を見ながらコニーがため息交じりに苦言すると同意したようにヤオが頷いた。

 「では、そちらは我等が偽物でシスターを人質に取り、教皇代理の部屋まで案内させていたと?」

 「そうだ!」

 「ではこちらのイース様も歌姫様も偽物だと?」

 「そ、そうだといっている!どこぞの老いぼれがイース様に成りすますなど!そもそも歌姫はここシルティアで選ばれるもの!他国の者がなるなど認められておらん!」

 「そうですか…ではそれはこの国の総意で間違いないか」

 「当たり前だ!」

 リレイの問いに兵は次々と感情的に答えた。

 「言質をとれたしもういいわよ?」

 「回りくどいな」

 「ふっかけるいい材料がどんどん増えていくねぇ」

 リレイの言葉にサイがうんざりしながら答え、アディオンは楽しそうにわらった。

 「言わせておけば!見ればこきたない獣までこのような場所に入り込みおって!」

 「獣人でも素晴らしい方々は沢山おられるのに…」

 兵がサイやエリスをみて激高するのを見てコルネが悲しそうな顔をしつぶやいた。
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