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第6章 エターニャ神皇国編

行ったり来たり

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 「ちょっと!カトリーヌ!セナから離れてよ!」

 「嫌ですわ、セナ様は命の恩人ですもの私がおもてなししてなんら問題はございませんわ」

 「あの…何度か行ったことがあるので僕は大丈夫ですよ?」

 「ほら!セナだって迷惑してるじゃない!」

 「そんなはずはありませんわ!」

 帝国の王都へ着き城の中をレオの元へと歩くセナ達だったが、カトリーヌはセナに助けられ王都に着くまでの間、ことあるごとにセナにくっつき、アリアをはじめとしたメンバーは最初は気を使っていたが1日たつ頃には呼び捨てで呼び合いこのような状態となっていた。なお、エリス達は今日の宿などの確保に動き、エイケンとサイは興味ないようでスカーレットと共に街にむかった。

 「お父様!」

 「カトリーヌ!無事でなによりであった!」

 レオの私室で入室の許可がおりるとカトリーヌは勢いよく部屋へはいるとベッドから起き上がったレオへ涙を流しながら抱き着いた。

 「よくぞ無事だった」

 「はい…リネアの方々のおかげですわ…」

 「そうか…少し話はきいておるが……セナ殿、此度の件感謝申し上げる」

 「いえ!たまたま出会って本当によかったです」

 うっすら涙をうかべ礼を言うレオにセナは嬉しそうに柔らかな笑顔をうかべた。

 「カトリーヌ、すまんが詳しくおしえてくれ…あぁセナ殿たちも聞いてくれるか」

 カトリーヌが落ち着きを取り戻したのを見計らいレオがいうと、気を利かせて退室しようとしていたセナたちにレオは一緒に聞いてくれと言ってきた。

 「はい…今回の一連の出来事は第2皇子お兄様の手引きによるものでした……」

 「えっ!」

 「ふむ…」

 「数年かけ入念に準備をしていたようで…お兄様の手引きによりお母さまの洗脳も…」

 カトリーヌの言葉にセナは驚いていたが、その部分の報告をうけていたのかレオは取り乱すことなく話を聞いていた。

 「王国への侵攻が失敗に終わり…教皇と教皇派と呼ばれていた人たちは一気に衰退し…追放や色々な罪を着せられ処罰されていっております」

 「ふむ…して?トーラスは」

 「お兄様は側近と残り少ない教皇派をひきつれアルドラへと亡命いたしました」

 「そうか…」

 「はい…それで私はお兄様も居なくなり…エターニャ側としては今回の件は帝国のせいとすることになったようで…私は帝国にそれを認めさせるための人質となるところだったのです」

 「ふむ…」

 「牢に幽閉される前日に…リネアの騎士団長ジェノス様のお手引きにより脱出するとができ…国境では潜入していたカイン様という方の部下の神官騎士がうまく抜けさせてくださいました」

 「そうか…リネアには国としても父親としても返せぬほどの恩を受けてしまったな」

 「あの…それでジェノス様達は?」

 「大丈夫です!今まで通りリネアからの使者しとして滞在なさっておられます」

 「そうですか…よかったです」

 「リネアにはセナ様がおられますからね」

 「ん?僕ですか?」

 ジェノスが無事だと聞きセナが安堵の息を吐いたがカトリーヌの言葉を聞くと不思議そうな顔をし首をかしげた。

 「シルティアにもリネアのブレイダー領での戦いの情報などがはいっていたようですし、そもそも武力で帝国をお一人で沈めたお方と向こうも認識していますから、下手にリネアの使者を扱うとセナ様がでてくると恐れているのですわ」

 「一人で沈めるとか…鎮めるじゃないんですよね?」

 「はい、沈めたと」

 「……そんな馬鹿な……」

 カトリーヌの言葉にセナが肩を落としショックをうけた。

 「まぁ…あの戦いを見た者はそう思うだろうな」

 「そんなにすごいのですか?」

 レオがセナの戦いを思い出し納得するとカトリーヌが興味津々で尋ねた。

 「あの…それで神皇国は今どのような感じに」

 「え?えぇそうですわね…今は新しい教皇を選ぶため候補者同士が水面下で色々動きあっている状態のようですわ」

 露骨にセナが話題をかえるとカトリーヌが我に返り答えた。

 「そもそもエターニャだけではなくアルドラも神皇国と名乗っているのがよくわからないのですが」

 「あぁ、それはこの世界の神は元々2柱でな」

 「え?アマリウス様だけじゃないんですか?」

 「ああ、もう一人の神アルドラだ」

 「元々は2柱を祀る宗教だったんだが互いの勢力が実権を握ろうと争いになってな」

 「その結果二つの宗教に別れ、争いに負けたアルドラ派の人々はアルドラの聖地とよばれる火山のある島に逃げ延び独立国家を名乗ったのです」

 「まぁ、しかし王国、帝国がそれを認めず未だ正式な独立国家としてはみられておらんのが現状だ」

 「なるほど…それがなぜ…」

 「わからん」

 話を聞いたセナの問いにレオも二つの宗教が接触したことに困惑していた。

 「お兄様はたぶんですが……アルドラ派に便乗してこの国を手に入れるおつもりだったのかもしれません」

 「だろうな…」

 カトリーヌが悲しそうな顔でいうとレオも思い当たる節があったのか頷き同意した。

 「だとするならば今のエターニャは王国や帝国の動きは気になるが対応できないというのが実情でございますな」

 「だろうな」

 「ふむ…セナ様?このことをリネアの国王へお伝えせねばなりませぬな」

 「そうですね…グラニールにお願いするのが一番早いですし…僕が直接話した方がいいですよね」

 ヤオの言葉にレオが頷くとヤオとセナはリネアに一度戻る決断をした。

 「アレスももうすぐ王国についている頃だろう」

 「え?王妃様戻られたんですか?」

 「あぁ、アディオンとリレイと共にな」

 「そうですか…では私たちも明日の朝にリネアへと戻ります」

 「うむ」

 レオからアレストラたちがセナがエターニャへ向かった翌日エルシーダが王国より遣わされそれにのりそれぞれの国へ一度もどったと聞いた。

 「お待ちになってください!」

 「どうした?カトリーヌ」

 「セナ様私もお連れください!」

 「え?」

 「叔父様と叔母様には私からも詳細を説明させてください!」

 「え?でもせっかく戻ったばかりじゃ」

 「そうだよ!セナにまかせてカトリーヌはゆっくりで休んだ方がいいよ!」

 セナ達が退室しようとするのを引き留めカトリーヌが願い出るとアリアが嫌そうな顔をし言った。

 「お願いいたします!」

 「え?でも…」

 「セナ殿…すまんがつれていってやってくれんか」

 「え?私はいいですが…」

 「お父様!セナ様ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

 「えぇーー」

 レオからも頼まれセナは困りながらも了承するとアリアは露骨に嫌そうな顔をした。

 「というわけで一度リネアに戻ります」

 「了解しました。それでアリアはどうするの?」

 「私も一度戻るよ!」

 「わかりました。では我々もですね」

 宿屋にもどり明日からの予定をエリス達に伝えた。

 「俺はここに残るぜ?」

 「え?そうなの?」

 「あぁ、サイとスカーレットおめぇらも残れ」

 「ん?」

 「なぜですか?」


 夕食時に宿屋の食堂で合流したエイケンたちに明日からの行動を知らせるとワインを瓶で飲みながらエイケンが言った。

 「セナわりぃが食ったらのコツを教えろ」

 「それはいいけど」

 「おめぇらがリネアに行って戻ってくる間、俺らはそれの特訓だ」

 「なるほど…貴様にしてはいい考えだ」

 「そういうことでしたら!」

 エイケンの考えを聞きサイとスカーレットも納得をしめした。

 「あ、あの!」

 「ん?なんだコニー」

 「その修行にエリスもまぜてくれませんかっ!」

 エイケンたちとセナの話に意を決したようにコニーが割って入り修行にエリスも混ぜることを願い出た。

 「なにをいってるの?コニー」

 「ここで修行して力をつけてもらうのよ!エリスはまだ強くなれるんでしょ?」

 「そういうことね?あのサイ様、私からもお願いします」

 「ちょっと!マインまで!」

 「私とコニーだって強さをあきらめたわけじゃないけど、私たちの中で今一番一気に強くなれる状況にあるのよ?」

 「しかし…アリアの」

 「王国まで行けば大丈夫!」

 「このままじゃ私たちのパーティーは確実にセナ様の足を引っ張るわ。強くなれる機会があるのならやるべきよ」

 「私たちは友達を守りたい!このままじゃ私達まで守られっぱなしじゃない!」

 いまだ納得いかないエリスにコニーとマインが自分たちの気持ちを伝えた。

 「ふむ、よく言ったお前たち。よかろう私が責任をもってこいつを強くしてやろう」

 「あぁそうだな。俺もおめぇらの心意気気に入った!一端の剣士にしてやっから安心しろ」

 「ありがとうございます!サイ様、エイケン様」

 コニーとマインの言葉を聞き二人が感心しエリスの修行を引き受けた。

 「頑張ってくださいね?エリスさん」

 「無理しちゃだめだよ?」

 いまだ決心がつかないエリスにセナとアリアが声をかけた。

 「わかりました。サイ様、エイケン様よろしくお願いいたします。コニー、マインありがとう。セナ様アリアご迷惑をおかけします」

 皆の気持ちに答えるかのように決意を秘めた目をしたエリスが全員に礼をし食事を終えた全員でレオから借りた闘技場へと向かった。
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