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第5章 ストラトス帝国編

違いがわからない

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 アレストラとアリアの護衛をエリス達冒険者とイース、並びにイースの護衛についていた神官騎士たちが行い一行が闘技場へとたどり着くと、そこには訓練をしていたリネア王国の騎士と帝国の兵士たちがおり一行を見ると俄かにざわつき端へとよけ始めた。

 「みんなご苦労様!今からちょっと激しめのことをやるから、観覧席へ移ることをお勧めするよ」

 「ちっ!邪魔だ木っ端ども!巻き添えくって死んでも知らねぇぞ!」

 パンパンと手を叩き言い聞かせる様に言ったアディオンの言葉にその場にいた者たちは理解できなかったようで、ざわめきや顔を見合う者たちばかりで動こうとしなかったため、エイケンが剣を地面に勢いよく刺し少々怒気をはらませてすごむと全員が顔を蒼くし焦ったようにその場から離れて行った。

 「うんうん!ほどよいギャラリーもいるし、いい感じになったようだね!」

 「まちなさいよ!…ハァハァハァ」

 競技場から去ったもの、そのまま観覧席に移り何が起こるのか見ているものがいる中、アディオンが満足げに頷きいざ始めようとしたところ、盛大に息を切らしリレイが現れた。

 「やぁリレイそんなに息を乱してどうしたんだい?」

 「どうしたもこうしたもないでしょ!あなたがセナ様達を連れてくるというからレオの元で待ってたんじゃない!」

 不思議そうに尋ねるアディオンに顔を真っ赤にしリレイが怒鳴るように言った。

 「いや、この後いこうとおもってたんだよ」

 「そもそも私も見たいといったはずでしょ!勝手に始めないでよ!」

 「間に合ったんだからいいじゃないか」

 「あなたねぇ…そういう問題じゃ!」

 「リレイ…うるさいぞ…始めるから離れていろ」

 淡々と話すアディオンにどんどん激高していくリレイを遮るように真剣な目をしたサイがいうと、リレイは平常心を取り戻し冷静に頷きアレストラたちの元へ移動した。

 「スカーレットから聞いただけだけど…イース様はどうみますか?」

 「わからん…属性変化がどうのという話じゃったが…見て見ぬにはなんとも」

 「そうですよね」

 合流したリレイがイースに尋ねるがイースはセナ達から目を離さず答えた。

 「さて、そろそろいいだろう」

 「まだだよ?はい二人とも」

 「あぁ?」

 サイがアディオンに尋ねるとアディオンはセナとエイケンに木刀を渡しエイケンが不満げに眉を片方あげ木刀をみた。

 「あくまで力試しだからね真剣は許可できないね」

 「ドラゴニアにいるときは真剣でやりあってたから大丈夫だ」

 「いや、ボクの勘が真剣ではだめだといってるからダメだね。飲めなきゃセナ君をつれてレオの元にいくよ」

 「随分だな…私がそれをゆるすとでも?」

 「許すでしょ?」

 「ちっ!…セナ殿、エイケン…木刀をもて」

 「あぁ!?なんでだよ!」

 「このままでは埒があかないからだ。いいからそれを使え」

 「くっくっく…それじゃぁ双方こちらに、命の取り合いじゃないからね?それと…」

 「それとなんだよ」

 「うん。セナ君、手を抜かないようにね?それは武人としての二人を侮辱するとともに君を信頼している子たちをも裏切る行為だと認識してくれ」

 「わ…わかりました…そもそも二人を相手に手を抜くとか自殺行為しませんよ」

 「ふふっ。賢明な判断だね。それじゃ双方離れて!じゃぁいくよ?…開始!!」

 アディオンの言葉を聞き、サイやエイケンのほかにアリアやタオ、ヤオなどの顔を見渡したセナが深くため息を一つ付き覚悟を決めた目をしたのを確認するとアディオンは満足げに微笑み開始の合図をした。

 「さぁ!セナ!かかってこい!」

 「我らを歯牙にもかけぬというその力とくと見せてもらうぞ!」

 木刀を構えたエイケンとファイティングポーズをとったサイがセナへ言った。

 「じゃぁ…叔父さん…サイさん…僕の最速最強の技でいかせてもらいます!」

 「おう!かかってこいや!」

 「望むところ!!」

 「氷結地獄コキュートス!」

 木刀を地面に当てセナが自身の力をこめると一瞬で地面と闘技場を囲う壁が凍り付いた。 

 「あぶねぇなぁ…」

 「だが…それでは我らはやれんぞ?」

 木刀で地面をたたき氷を破壊し自信が凍るのを防いだエイケンと、タイミングを合わせ華麗に飛び上がりエイケンが破壊し凍っていない地面に着地したサイが不敵に笑いセナを挑発した。

 「ここからです…」

 「リニアスラッシュは一度見たぞ?」

 様子を見ていたセナにサイが問いかけた。

 「いえ、あれではないです…いきますよ!」

 「楽しみだ!こい!」

 サイの言葉にセナが答えるとニタリとサイが笑いセナの攻撃をまった。

 「はぁーー!!!」

 「なんだ!この力!龍気?燐気も!魔力と混じってやがるのか!?」

 「おちつけエイケン!これが二つの属性変化だろう!来るぞ!」

 セナが魔力と龍気、燐気を雷属性へとし木刀をかまえた。

 「瞬雷…羅刹」

 バタ、バタ…。

 バチっとセナが放電するとともに姿が消えると同時にサイとエイケンが気を失い倒れ、姿を現したセナが技名らしきものをつぶやいた。

 「しょ…勝負ありのようだね…」

 その光景を見た会場すべてが何が起こったか理解できず静まり返る中、さすがのアディオンもやっとのことでセナの勝利を告げた。

 「セナ君…今…君はなにをしたんだい?」

 「説明はあとで、とりあえず当身をしただけですけどお二人を診てもらえますか」

 「そ…そうだね…うん…そうだね」

 自身の想像をはるかに超えたことが起こり困惑した目をしたアディオンにセナがいうと、自分を落ち着かせるようにつぶやいたアディオンがサイたちに駆け寄り観察すると魔力をながし二人を目覚めさせた。

 「うおっ!…ん?どうなった?…」

 「ふむ…どうやって負けた?」

 「ごめん…セナ君から当身と聞いた以外、まったくわからない」

 「そうか…」

 目を覚ました二人はエイケンが焦りながら立ち上がり身構え、サイは仰向けのまま目だけアディオンに向け冷静に尋ねた。

 「叔父さん!サイさん!大丈夫ですか」

 「ちっ!おめぇ強くなりすぎて差がわからねぇじゃねぇかっ!このやろう!がっはっは!完敗だ!」

 「うむ。すまんが色々きかせてもらうぞ?」

 「叔父さん!痛いよ!…はい。元々サイさんや叔父さんにも伝えるつもりだった力ですから」

 「いいのか?自分が苦労して身に着けた力を…いや…そうか…たのむ」

 エイケンがヘッドロックをし甥の強くなった姿に豪快にわらいぐりぐり拳をあてて喜ぶ中、サイがセナの言葉に目を丸くして驚いたがセナの顔を見て顔を軽く振ったあと笑顔でセナに頭をさげた。

 「師匠!大丈夫ですか!!」

 「うむ…ダメージは少ない安心しろ」

 「よかったぁ…」

 「前にお前が言っていたが…」

 「何をですか?」

 「不思議と悔しいとかそういった類のものがこみあげてこない…」

 「あぁ…私いろいろ考えたんですが…たぶん差がありすぎてどこか納得しちゃってるのではと…」

 「なるほどな…相手の強さがわかる差がなければ気持ちは生まれぬか…」

 顔を蒼くしサイへ駆け寄ったスカーレットの肩をかり立ち上がると少しすがすがしい笑顔でサイがわらった。

 「なにがあったの…」

 「わかりません…イース様は?」

 「次元が違いすぎてもう儂にもわからんよ…ただ双爪殿の言葉が真実だったとしか…」

 アレストラ、リレイ、イースがいまだに信じられないとばかりにつぶやきあった。

 「いえ、神腕殿…我らもあそこまでとは…思ってもおらず…」

 「我らもまだまだ修行がたりませぬ」

 以前みたセナが本当に感触を確かめていただけだと理解したヤオとタオが額に汗をにじませ驚きを隠せずに答えた。

 「完全に人の限界を超えてますね…」

 「人というより…生物の限界を超えてる…」

 「ですね…もう人や生き物ではないですね…」

 マイン、エリス、コニーも驚きを隠せなかった。

 「おい…ケンオウ様が負けたぞ…」

 「さすがにこれは…セナ様だからとかいう話じゃねぇな…」

 「あれが…リネアの英雄…」

 「あんな化け物と敵対したのか…この国は…」

 闘技場へ残り勝負を見ていた帝国の兵とリネアの騎士たちが勝敗にざわつき始めた。

 「ナンバーズの肩書も台無しだね!アッハッハッハッハ」

 「んなもんはどうでもいいぜ、それで俺が弱くなったわけでもあるまいし」

 「うむ、そんなことよりも更なる高みがあるとわかった高揚感が勝る」

 アディオンがエイケンとサイに笑顔でいうと首をコキコキならしたエイケンが興味無さそうに、サイは新たな力に全身が歓喜したように小刻みに震えているようだった。

 「して、セナ殿その力…我らに伝えるつもりだったということは、我等にも体得できるとおもっていると?」

 「はい。魔力とは別なのでほぼ間違いないと思ってます」

 「そうか!ならこれから」

 「ダメよ」

 「リレイ何故邪魔をする?」

 「はぁ~…あなたねぇ…セナ様が今回きたのは歌姫様の護衛よ?それにレオに会いに行かなきゃいけないのよ」

 「そんなもの後でもよかろう」

 セナの言葉にサイがより一層目を輝かせ手を取りどこかに行こうとするところをリレイにとめられ露骨に嫌悪感をあらわにした。

 「まぁまぁ、まずレオに会いに行こうよ、落ち着いてやったほうが何かといいだろ?」

 「じらされるのはあまり好きではないのだがな」

 「まぁいいぜ、さっさとレオに会いに行こうぜ!セナは消えたりしねぇしな」

 「しかたないな」

 アディオンとエイケンの言葉にサイが渋々納得した。

 「アレストラ様お待たせして申し訳ありません。アリアもエリスさんたちも予定外のことでごめん」

 「いえ、有意義でしたわ」

 「うむ。ナンバーズのケンオウ2人を瞬殺してみせたのだ。噂がすぐに広がりアリアに手を出そうとする馬鹿も減るであろう」

 「えぇ、それにリネアに対してもですわね」

 セナの謝罪にアレストラとイースがにこやかに答えた。

 「何をしている!さっさとレオの元に行くぞ」

 「はぁ~…皆さま申し訳ありません…」

 サイがイライラしながら全員に声をかけるとリレイがため息交じりに謝罪した。

 「あぁそうだ!歌姫ちゃんよぉ」

 「は、はい」

 「しばらくの間、俺らも一緒にいるからよ!よろしく頼むぜ!」

 「え!えぇ~!!こ、こちらこそ…不束者ですがよろしくお願い致します!!」

 何気なく声をかけてきたエイケンの言葉に盛大にうろたえながらアリアがペコペコと頭をさげた。

 「ねぇ…エリス?」

 「なに」

 「セナ様にヤオさんタオさん…それにケンオウ様2人が護衛って…」

 「自殺願望者でも手を出さないわね…」

 「そ、そうだな…」

 「私たちの仕事ってほんとにアリアとの世間話しか…ないんじゃ…」

 コニーが少し顔を蒼くしエリスとマインが肩をおとしながら答えた。

 「あっはっはっはっは!たしかに!世界一安全な場所はアリアのそばだね!」

 「私…王妃なのに…」

 アディオンがアレストラをちらっとみたあと大笑いするとアレストラはがっくりと肩をおとしたが、一同をひきつれなんとか皇帝レオの元へと移動したのだった。
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