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第5章 ストラトス帝国編
出撃!王国の剣!!
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セナが帝国を出発し2日がたった頃。
「セルジオ殿…今どこまで?」
「はい、小さな村を襲いながらですがあと1日2日でここに来るはずです」
「そうか…村の民たちの被害は…?」
「逃げ伸びた者たちはこちらに向かっているそうです…そのほかの者達は不明です」
「くっ…そうか」
「しかし…ここまで速いとは…」
「あぁ…斥候させていた隠密の報告をうけ、すぐに王都を出てこれだ…余ほどうまく隠れて準備したんだろう」
ブレイダー領の本拠地マルンにあるブレイダー邸でセルジオとギルスが深刻な顔をし敵の進攻め速度について話し合っていた。
「進攻ルート的にシュバイン領を東に進み我が領との境界を抜けてきたようですな」
「あの豚野郎が…北西の森林に隠れながら進行したか…」
「そのようです…そして…最悪なことに最初の被害を受けた村が…」
「あぁ…エルの村だな…」
「…はい」
セルジオとギルスは会った際、どこか緊張しながらもくったくない笑顔を浮かべていた自他ともに認めるセナの親友ライズの顔を思い浮かべ苦々しい表情を浮かべた。
「セナ殿に留守は任せろと言っておきながらこのありさまとは…して?エルの民は?」
「はい、先に避難させられた者たちの馬車を数台保護しこちらに向かっております」
「そうか!」
「しかしライズという名の者とその家族はおりませんでした…どうやら他のものを逃がす時間を稼ぐため数名の者達と村に残ったようです」
「くっ!」
セナの柔らかな笑顔が脳裏に浮かびギルスは申し訳なさ過ぎて、セナにどのように伝えればいいのかとため息をついた。
コンコン
「失礼します!!」
「どうしたのだ?そのように慌てて!」
重苦しい雰囲気をぶち破るように激しいノックとともに騎士が息を切らせて入室してきた。
「ほ…報告いたします!北の森の端よりスタンピードを確認!明日の未明にはこちらにきます!」
「なっ!なにっ!?」
慌てながら報告された内容に思わずセルジオ立ち上がった。
「すぐに王都と冒険者ギルドに知らせをだせ!それとジルネイ側にもだ!」
「はっ!失礼します!」
ギルスの指示に騎士は敬礼をし足早にさっていった。
「よもやオースチンがここまでのことを仕掛けてくるとはな…」
「なっ!?では…これは人為的におこされたと!?」
ギルスが顔をゆがめいうとセルジオは驚きを隠せなかった。
「あぁ…たぶんだが前回セナ殿が鎮めたスタンピードと同じ要領だろう」
「なんということだ…ここを抜かれては王都にまで被害が及んでしまいますぞ?」
「王都の守護はアムート殿に任せてあるので大丈夫だとは思うが…」
「なんとしても行かせるわけにはいきませんな…」
「あぁ…」
ギルスの推測を聞きセルジオは覚悟を決めた顔をした。
「せめてエミルとメイリーを避難させては?」
「ふっ…この話を聞けばなおさら残るだろう…」
「そうですな…エミルは一番ブレイダー家ですからな」
「くっはっはっは!ちがいない!」
二人は腰に手を当て気合をいれるエミルを想像し笑いあった。
「おそらくはオースチンの軍の進攻はスタンピードに合わせて同時にくるぞ?」
「北と西に兵をさかねばなりませんな…」
「増援は間に合わん我らでやるしかあるまい…民の避難と兵を休ませておかねばな…」
「そうですな…辞めたいものにはわずかだが資金をだしおくりだしてやらねばなりませんしな」
「あぁ…多少色をつけてやってくれ」
「かしこまりました…では…また動きがあれば」
「あぁ…セルジオ殿も休んでくれ」
「はい」
二人は微笑しながら部屋を後にした。
「あなたどうですか?」
「あぁ…あと1日、2日で迎え撃つことになるだろう」
「まぁ!ここまで攻められるのですか!?」
「明日の朝1番で出兵するが…新たにスタンピードもこちらに向かってると報告があった」
「えっ!?まさか…」
「あぁ…十中八九そうだろう…それで?その方らはどうする?」
「どういう意味ですの?」
ギルスが訪ねるとエミルは鋭い目つきで答えた。
「ふっ…やはり愚問であったか…」
「当然ですわ!このような事態では、なおのこと引くわけにはまいりませんわ!今こそ一丸となってブレイダーの力を見せるときですわ!」
「ふふふっ…あぁ!そうだな!」
ギルスはエミルの表情と言葉に勇気をもらい、心からエミルが妻でよかったと思った。
そのころリネア王国では…。
「うわぁ!ドラゴンだ!」
「ちげぇ!あれは!龍だ!しかも馬鹿でけぇぞ!」
「きゃー!神様ぁ!!」
上空を猛スピードで進むグラニールをみた者たちが恐れおののき騒ぎ、各領の軍が応戦の準備を開始したりしていた。
「…あとで各地を回って謝らなきゃ…」
「う…うん…私も一緒にいくね…」
それをグラニールの背からみていたセナが申し訳なさそうにいうと、肩に手をおきアリアも気まずそうに言った。
「愚か者どもが…セナ様がこれより世直しをしようとしているというに…」
「まったくですわ…それにグラニール殿の神々しさに恐怖するなど愚の骨頂ですわ…」
「ヤオさん?タオさん!?」
黒いオーラのようなものをまとった、ヤオとタオがブツブツといい。それにきづいたセナが焦って二人を呼んだ。
「このペースでいけば明日には着きますよね?」
「はい。明日の昼までにはマルンにつくかと思われます」
「グラニール…無理させてごめん…大丈夫かい?」
「グルワァー!」
セナの問いにヤオがこたえ、ここまで不眠不休で飛び続けているグラニールをセナが心配そうにみると、グラニールはまだ余裕だといわんばかりに咆哮をあげた。
「うわーー!もうだめだーー!」
「おかーーーちゃーーーん!!」
咆哮が響き渡ると下ではさらに混乱を招いた。
「………ありがとう…グラニール」
ひきつった笑顔でセナは優しくグラニールをなで言った。
そして…一夜あけた早朝マルンでは。
「出陣準備整いました」
「ガルハルトご苦労。それで?どれだけ残った?」
鎧をまとったギルスにガルハルトが声をかけるとガルハルトはニヤリと笑った。
「ん?どうした?」
「誰も抜けてはおりません」
「なに?」
「それどころか…退役した者達まで集まってきておりますよ?」
「なにぃ!?」
ガルハルトの言葉にギルスは焦って軍の元へと向かった。
「なんと…」
軍があつまっている場では、いつものブレイダー領の軍より多い兵が集まっていった。
「なぜこのようなことが?」
「ほっほっほ!みなこの領が、ブレイダー領が大好きなのでございます」
驚いているギルスに初老の騎士が声をかけた。
「なっ!?お前はバートン!」
「お久しぶりでございますギルス様」
「貴様は隠居しただろう!孫と娘はどうした!?」
「はい?家におりますが?」
「馬鹿者っ!いますぐ一緒に避難し守ってやれ!」
「はい…ですから守るためにここにまいりました…それに…ほかの民のほとんどが避難などしておりませぬよ?」
「なにっ!?兵たちはなにをやっていたのだっ!?」
バートンの言葉を聞き、ギルスが驚きガルハルトにたずねた。
「それが…みなブレイダーが悪に負けるわけないと…避難を拒否しまして…」
「なっ!?バカ者どもが!」
気まずそうにしながらも、どこか嬉しそうにいうガルハルトの言葉を聞き、ギルスは目に涙をうかべながら叫んだ。
「我ら老骨、壁くらいにはなれましょう?ほっほっほっほっほ!」
「馬鹿者!絶対死ぬなよ!?ん?あそこの者達は見慣れぬ恰好をしておるな」
まるで死に場所をみつけたとばかりに笑うバートンに檄をとばしていると、ギルスは兵の一角にみなれぬ恰好をした者達をみつけた。
「あー…あれは協定を結んだからと、たまたま視察にきていたジルネイに住む獣人族で……」
「なに?ジルネイに戻れなかったのか!なら街の中で保護を!」
頭をかきいいにくそうにいったガルハルトにギルスがいった。
「いえ…それが…我々と来たセナ殿が保護した子たちに会いにきてたらしく手厚く獣人を保護してるブレイダーは友だと……一緒に戦わせろと聞かず…」
「なっ!?どいつもこいつも!馬鹿ばかりか!ジルネイとの問題になったらどうするかっ!」
ガルハルトが気まずそうにいうのを聞いたギルスが声を荒げていると、それを聞いた獣人族のリーダーらしき人物がにこやかにギルスたちの前にきた。
「これはこれは…もしかして領主様ですかな?」
「ん?あぁ…私は国王よりこの地を預かっておりますギルス=ブレイダーと申します。失礼ですがそちらは?」
「おぉ!あなたがかの有名な王国の剣!お会いできて光栄です!おっと!これは失礼しました。私はジルネイ共和国の北端にあるアラムナットにすむ戦士長ディガインと申します。お見知りおきを」
ギルスの挨拶にディガインは嬉しそうに名乗り深々と一礼した。
「いや、こちらこそご丁寧なあいさついたみいる。それで…此度はこのようなことに巻き込んでしまい申し訳ない…貴殿たちアラムナットの方々はこのまま王都へ…」
「心遣い感謝いたしますがお断りします!我々も戦います」
申し訳なさそうにきりだしたギルスの言葉を遮り、ディガインが胸を張りニヤリとわらいながら言った。
「いや!気持ちはうれしいが…なにかあれば…ジルネイとの」
「戦士が一度戦場へでると決めたのです。責任はそちらにはありません、それにジルネイの首相には文をおくってありますゆえご安心ください」
「ほっほっほ!ギルス様?騎士も戦士も心持はかわらぬようですな」
「バートン…貴様まで…はぁ…これ以上はそちらを愚弄することになってしまう…ご助力感謝する!」
ギルスが深々と頭をさげるとバートンとディガインは笑顔で見合い頷いた。
そして、ギルスは騎士たちが並ぶ前に立つと挨拶をはじめた。
「こほん!皆よく集まってくれた!…あー…やはり堅苦しいのは性に合わん!自分の言葉で言わせてくれ!
誰も抜け出さず!来なくてもいい奴らまで来てくれた!勇敢で大馬鹿な者たちよ!心より感謝する!
敵は信念もなにも感じられない欲におぼれたただの下衆だ!そんな下衆に我らは負けるわけにはいかん!我らの家族を!我らの仲間を!そして我らの居場所を共に守ってくれ!」
「おーーー!!!」
ギルスの言葉にその場に集まった者たちは決意を秘めた目をしながらも嬉しそうに笑い雄たけびをあげた。
「敵を一歩たりとも進めさせるな!お前らが倒れなければ!後ろにいる者達も倒れん!正義は我らにある!今こそ王国の正義と剣を見せるとき!いくぞ!」
「進軍開始!すすめぇ!」
「おーーーー!!!」
剣を抜き天にかかげたギルスに合わせる様に全員が武器や盾を天に掲げガルハルトの合図とともに雄たけびをあげ
王国の正義と剣ブレイダー軍が進軍を開始した。
「セルジオ殿…今どこまで?」
「はい、小さな村を襲いながらですがあと1日2日でここに来るはずです」
「そうか…村の民たちの被害は…?」
「逃げ伸びた者たちはこちらに向かっているそうです…そのほかの者達は不明です」
「くっ…そうか」
「しかし…ここまで速いとは…」
「あぁ…斥候させていた隠密の報告をうけ、すぐに王都を出てこれだ…余ほどうまく隠れて準備したんだろう」
ブレイダー領の本拠地マルンにあるブレイダー邸でセルジオとギルスが深刻な顔をし敵の進攻め速度について話し合っていた。
「進攻ルート的にシュバイン領を東に進み我が領との境界を抜けてきたようですな」
「あの豚野郎が…北西の森林に隠れながら進行したか…」
「そのようです…そして…最悪なことに最初の被害を受けた村が…」
「あぁ…エルの村だな…」
「…はい」
セルジオとギルスは会った際、どこか緊張しながらもくったくない笑顔を浮かべていた自他ともに認めるセナの親友ライズの顔を思い浮かべ苦々しい表情を浮かべた。
「セナ殿に留守は任せろと言っておきながらこのありさまとは…して?エルの民は?」
「はい、先に避難させられた者たちの馬車を数台保護しこちらに向かっております」
「そうか!」
「しかしライズという名の者とその家族はおりませんでした…どうやら他のものを逃がす時間を稼ぐため数名の者達と村に残ったようです」
「くっ!」
セナの柔らかな笑顔が脳裏に浮かびギルスは申し訳なさ過ぎて、セナにどのように伝えればいいのかとため息をついた。
コンコン
「失礼します!!」
「どうしたのだ?そのように慌てて!」
重苦しい雰囲気をぶち破るように激しいノックとともに騎士が息を切らせて入室してきた。
「ほ…報告いたします!北の森の端よりスタンピードを確認!明日の未明にはこちらにきます!」
「なっ!なにっ!?」
慌てながら報告された内容に思わずセルジオ立ち上がった。
「すぐに王都と冒険者ギルドに知らせをだせ!それとジルネイ側にもだ!」
「はっ!失礼します!」
ギルスの指示に騎士は敬礼をし足早にさっていった。
「よもやオースチンがここまでのことを仕掛けてくるとはな…」
「なっ!?では…これは人為的におこされたと!?」
ギルスが顔をゆがめいうとセルジオは驚きを隠せなかった。
「あぁ…たぶんだが前回セナ殿が鎮めたスタンピードと同じ要領だろう」
「なんということだ…ここを抜かれては王都にまで被害が及んでしまいますぞ?」
「王都の守護はアムート殿に任せてあるので大丈夫だとは思うが…」
「なんとしても行かせるわけにはいきませんな…」
「あぁ…」
ギルスの推測を聞きセルジオは覚悟を決めた顔をした。
「せめてエミルとメイリーを避難させては?」
「ふっ…この話を聞けばなおさら残るだろう…」
「そうですな…エミルは一番ブレイダー家ですからな」
「くっはっはっは!ちがいない!」
二人は腰に手を当て気合をいれるエミルを想像し笑いあった。
「おそらくはオースチンの軍の進攻はスタンピードに合わせて同時にくるぞ?」
「北と西に兵をさかねばなりませんな…」
「増援は間に合わん我らでやるしかあるまい…民の避難と兵を休ませておかねばな…」
「そうですな…辞めたいものにはわずかだが資金をだしおくりだしてやらねばなりませんしな」
「あぁ…多少色をつけてやってくれ」
「かしこまりました…では…また動きがあれば」
「あぁ…セルジオ殿も休んでくれ」
「はい」
二人は微笑しながら部屋を後にした。
「あなたどうですか?」
「あぁ…あと1日、2日で迎え撃つことになるだろう」
「まぁ!ここまで攻められるのですか!?」
「明日の朝1番で出兵するが…新たにスタンピードもこちらに向かってると報告があった」
「えっ!?まさか…」
「あぁ…十中八九そうだろう…それで?その方らはどうする?」
「どういう意味ですの?」
ギルスが訪ねるとエミルは鋭い目つきで答えた。
「ふっ…やはり愚問であったか…」
「当然ですわ!このような事態では、なおのこと引くわけにはまいりませんわ!今こそ一丸となってブレイダーの力を見せるときですわ!」
「ふふふっ…あぁ!そうだな!」
ギルスはエミルの表情と言葉に勇気をもらい、心からエミルが妻でよかったと思った。
そのころリネア王国では…。
「うわぁ!ドラゴンだ!」
「ちげぇ!あれは!龍だ!しかも馬鹿でけぇぞ!」
「きゃー!神様ぁ!!」
上空を猛スピードで進むグラニールをみた者たちが恐れおののき騒ぎ、各領の軍が応戦の準備を開始したりしていた。
「…あとで各地を回って謝らなきゃ…」
「う…うん…私も一緒にいくね…」
それをグラニールの背からみていたセナが申し訳なさそうにいうと、肩に手をおきアリアも気まずそうに言った。
「愚か者どもが…セナ様がこれより世直しをしようとしているというに…」
「まったくですわ…それにグラニール殿の神々しさに恐怖するなど愚の骨頂ですわ…」
「ヤオさん?タオさん!?」
黒いオーラのようなものをまとった、ヤオとタオがブツブツといい。それにきづいたセナが焦って二人を呼んだ。
「このペースでいけば明日には着きますよね?」
「はい。明日の昼までにはマルンにつくかと思われます」
「グラニール…無理させてごめん…大丈夫かい?」
「グルワァー!」
セナの問いにヤオがこたえ、ここまで不眠不休で飛び続けているグラニールをセナが心配そうにみると、グラニールはまだ余裕だといわんばかりに咆哮をあげた。
「うわーー!もうだめだーー!」
「おかーーーちゃーーーん!!」
咆哮が響き渡ると下ではさらに混乱を招いた。
「………ありがとう…グラニール」
ひきつった笑顔でセナは優しくグラニールをなで言った。
そして…一夜あけた早朝マルンでは。
「出陣準備整いました」
「ガルハルトご苦労。それで?どれだけ残った?」
鎧をまとったギルスにガルハルトが声をかけるとガルハルトはニヤリと笑った。
「ん?どうした?」
「誰も抜けてはおりません」
「なに?」
「それどころか…退役した者達まで集まってきておりますよ?」
「なにぃ!?」
ガルハルトの言葉にギルスは焦って軍の元へと向かった。
「なんと…」
軍があつまっている場では、いつものブレイダー領の軍より多い兵が集まっていった。
「なぜこのようなことが?」
「ほっほっほ!みなこの領が、ブレイダー領が大好きなのでございます」
驚いているギルスに初老の騎士が声をかけた。
「なっ!?お前はバートン!」
「お久しぶりでございますギルス様」
「貴様は隠居しただろう!孫と娘はどうした!?」
「はい?家におりますが?」
「馬鹿者っ!いますぐ一緒に避難し守ってやれ!」
「はい…ですから守るためにここにまいりました…それに…ほかの民のほとんどが避難などしておりませぬよ?」
「なにっ!?兵たちはなにをやっていたのだっ!?」
バートンの言葉を聞き、ギルスが驚きガルハルトにたずねた。
「それが…みなブレイダーが悪に負けるわけないと…避難を拒否しまして…」
「なっ!?バカ者どもが!」
気まずそうにしながらも、どこか嬉しそうにいうガルハルトの言葉を聞き、ギルスは目に涙をうかべながら叫んだ。
「我ら老骨、壁くらいにはなれましょう?ほっほっほっほっほ!」
「馬鹿者!絶対死ぬなよ!?ん?あそこの者達は見慣れぬ恰好をしておるな」
まるで死に場所をみつけたとばかりに笑うバートンに檄をとばしていると、ギルスは兵の一角にみなれぬ恰好をした者達をみつけた。
「あー…あれは協定を結んだからと、たまたま視察にきていたジルネイに住む獣人族で……」
「なに?ジルネイに戻れなかったのか!なら街の中で保護を!」
頭をかきいいにくそうにいったガルハルトにギルスがいった。
「いえ…それが…我々と来たセナ殿が保護した子たちに会いにきてたらしく手厚く獣人を保護してるブレイダーは友だと……一緒に戦わせろと聞かず…」
「なっ!?どいつもこいつも!馬鹿ばかりか!ジルネイとの問題になったらどうするかっ!」
ガルハルトが気まずそうにいうのを聞いたギルスが声を荒げていると、それを聞いた獣人族のリーダーらしき人物がにこやかにギルスたちの前にきた。
「これはこれは…もしかして領主様ですかな?」
「ん?あぁ…私は国王よりこの地を預かっておりますギルス=ブレイダーと申します。失礼ですがそちらは?」
「おぉ!あなたがかの有名な王国の剣!お会いできて光栄です!おっと!これは失礼しました。私はジルネイ共和国の北端にあるアラムナットにすむ戦士長ディガインと申します。お見知りおきを」
ギルスの挨拶にディガインは嬉しそうに名乗り深々と一礼した。
「いや、こちらこそご丁寧なあいさついたみいる。それで…此度はこのようなことに巻き込んでしまい申し訳ない…貴殿たちアラムナットの方々はこのまま王都へ…」
「心遣い感謝いたしますがお断りします!我々も戦います」
申し訳なさそうにきりだしたギルスの言葉を遮り、ディガインが胸を張りニヤリとわらいながら言った。
「いや!気持ちはうれしいが…なにかあれば…ジルネイとの」
「戦士が一度戦場へでると決めたのです。責任はそちらにはありません、それにジルネイの首相には文をおくってありますゆえご安心ください」
「ほっほっほ!ギルス様?騎士も戦士も心持はかわらぬようですな」
「バートン…貴様まで…はぁ…これ以上はそちらを愚弄することになってしまう…ご助力感謝する!」
ギルスが深々と頭をさげるとバートンとディガインは笑顔で見合い頷いた。
そして、ギルスは騎士たちが並ぶ前に立つと挨拶をはじめた。
「こほん!皆よく集まってくれた!…あー…やはり堅苦しいのは性に合わん!自分の言葉で言わせてくれ!
誰も抜け出さず!来なくてもいい奴らまで来てくれた!勇敢で大馬鹿な者たちよ!心より感謝する!
敵は信念もなにも感じられない欲におぼれたただの下衆だ!そんな下衆に我らは負けるわけにはいかん!我らの家族を!我らの仲間を!そして我らの居場所を共に守ってくれ!」
「おーーー!!!」
ギルスの言葉にその場に集まった者たちは決意を秘めた目をしながらも嬉しそうに笑い雄たけびをあげた。
「敵を一歩たりとも進めさせるな!お前らが倒れなければ!後ろにいる者達も倒れん!正義は我らにある!今こそ王国の正義と剣を見せるとき!いくぞ!」
「進軍開始!すすめぇ!」
「おーーーー!!!」
剣を抜き天にかかげたギルスに合わせる様に全員が武器や盾を天に掲げガルハルトの合図とともに雄たけびをあげ
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※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
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