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第4章 ジルネイ編

主従な関係

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 それから半日後、セナは意識を取り戻した。

 「ん…ん?ここは?」

 「セナ様!?師匠!セナ様が目を覚ましましたよ!」

 セナを看病していたスカーレットがセナが目を開けたのを確認し、椅子に座り本を読んでいたサイへと声をかけた。

 「ん?…スカーレットさん?すいません…ここは?」

 「はい、ここはドラゴニアの医務室です」

 「セナ殿、目を覚ましたようだな。スカーレット皆を呼んで来い」

 「はい」

 いまだ状況がわからず、困惑した顔であたりを見渡していた。

 「失礼するよ」

 スカーレットが退室してすぐにアディオンが声をかけ入室してきた。

 「やぁセナ君。体調はどうだい?」

 「あ、アディオンさん。体調ですか?すこしだるい気がしますが特には…いたっ!いたたたたたっ!?」

 「あははははっ!無理はしない方がいいよ?」

 アディオンの言葉に答えながらセナが起き上がろうとすると全身が筋肉痛や打撲のような痛みに見舞われ声を上げた。

 「いちちちっ…あのアディオンさん?僕の身に何が起こったんですか?」

 「うん、それはもうすぐくるエイシャから聞いた方がいいよ」

 コンコン
 
 「失礼するぞ」

 アディオンとセナが会話をしていると、エイシャとエイケン、そしてヤオとタオが入室してきた。

 「よぉ、セナ!どうよ?」

 「叔父さん…なんか体中が痛いんだけど…」

 「痛てぇですんでるほうが、すげぇしちょっと自信なくしちまうな」

 「どういうこと?」

 入室するなりエイケンが気軽に声をかけセナはさらに困惑した顔をした。

 「セナ様…」

 「ちょ!?ヤオさん何を!?タオさんまで!?」

 エイケンが苦笑しているとヤオが声をかけタオとともに急に土下座をしセナは盛大に取り乱した。

 「この度は…私の軽率な行動によりセナ様を危険な目に合わせてしまい…大変申し訳ありませんでした」

 「この責につきましては、我らどのような沙汰でもお受けいたしますわ」

 「ちょっと!?二人とも何をいってるんですか?まず理由を教えてください!」

 ヤオとタオが目に涙を浮かべ床に額をつけながら深々と土下座し、セナは痛みを忘れ起き上がり二人を起こそうとした。

 「二人とも顔を上げてやめてあげてくれるかな?主治医としてこれ以上セナ君に無理をかけさせたくないんだけど?」

 アディオンが有無を言わせぬ笑顔でヤオとタオに腕組みしながら言った。

 「!?すみませぬ!」

 アディオンの言葉を聞き、二人が謝罪をし焦りながら立ち上がった。

 「二人とも落ち着け、セナ殿昨夜のことは覚えておるかね?」

 エイシャが二人を冷たい目で見ながらいった。

 「昨夜ですか?…たしか修練場でヤオさんと…あれ?そのあとどうなったんですか?」

 セナは昨夜の出来事を思い出し途中で記憶がないことに気づきエイシャへと尋ねた。

 「ふむ。では私から昨夜の出来事を説明しよう」

 「あ、お願いします」


  それからエイシャは昨夜のこと、ヤオとタオが行った術のこと、それによって変わったことを話した。
 ヤオとタオの命の契約のことには触れずに。

 「ということなのだが…セナ殿が此度の責について何らかの罰を与えたいというのならば、私とヤオとタオ3名謹んでその罰をうける所存だ」

 「姫なにを!」

 「まぁ当然そうなるだろうな」

 「あぁ、そりゃしかたねぇわ」

 エイシャの言葉にヤオが取り乱すが、サイとエイケンは納得しているようだった。

 「ヤオ?セナ君は一応他国の英雄だよ?君らがしたこととはいえ、この国で他国の英雄の命の危機になるほどの出来事が起こってしまったんだ。最高責任者が責を負うのは仕方ないことなのさ」

 「なっ!?」

 アディオンがヤオとタオに言い聞かせるように理由を教えると、ヤオは声にならず驚愕の表情を浮かべ、顔色はみるみる青くなっていった。

 「当然、リネアの国も事情説明と謝罪はするつもりだ」

 エイシャが凛とした顔で当然のことのように言った。

 「ちょっと待ってください!」

 するとやっと事情が呑み込めたのかセナがはっとした顔をした後、焦りながら声をあげた。

 「どうしたセナ?」

 「たしかに話を聞けば死にかけたんでしょうが…今僕は生きてます!」

 エイケンがセナへ尋ねると、セナは色々言いたかったように見えるが言葉が見つからなったようで勢いだけの言葉を口にした。

 「セナ殿…それは結果だ…今は起こった起因と経緯が問題になっている」

 セナの言葉にサイがいうとアディオンとエイケンが頷いた。

 「それは…ヤオさんとタオさんの今後の人生を僕に縛るほどの謝罪をうけたじゃないですか!」

 「あー、セナ…それについてはご愁傷様だな!あはははは!」

 「言いたくないけどほんとそうだよ…叔父さん…」

 エイケンがセナを拝みながら笑顔でいうと、セナは苦々しい顔をして小さな声で答えた。

 「…!やはり…我らの命で足りませぬか…」

 「いやいや!逆です!今後お二人の人生なんてでっかいものを持たされたと思うと…責任重大で…プレッシャーが…」

 ヤオが肩を落としセナへ申し訳なさそうな顔で尋ねるとセナは胃の付近をなでながらあおい青い顔でこたえた。

 「は?」

 「ふふっ!」

 セナの答えを聞いたサイが間抜けな声をあげ、アディオンはセナらしいと優しい笑顔を浮かべた。

 「わ、我らのことは奴隷や家畜…いえ、居ないものと思っていただいて構いませぬ!」

 「そういうわけにはいかないでしょ?」

 少しあっけにとられたヤオが答えると間髪入れずにセナが答えた。

 「それに言われるがまま、どんなことが起こるのかも確認せずやった僕にも責任がある」

 「それは二人の言い訳にはならぬよ?セナ殿」

 「いいわけじゃないですよサイさん。事実ですし、僕は冒険者です。自身の身に起こる危険性を確認せず安易に行動した結果だといっているんです」

 サイがセナの言葉に返すがセナは譲る気がないのか珍しく語気を荒らげ答えた。

 「あー…サイやめとけ…こいつがこうなったら意地でも折れねぇよ…」

 「ふふふっ…エイシンそっくりだな…」

 サイが何かをさらに言おうとすると、肩に手を置き、頭をかきながらエイケンが諦めた顔をし答え、それを聞いたエイシャがセナの父を思い出し懐かしそうに笑った。

 「それじゃぁ、セナ君はどうしたい?言っておくけど今回ばかりは、何もお咎めなしにはできないよ?」

 「二人にじゃなくて国に対して言ってくれな」

 アディオンの言葉にうなずいた後、エイケンがセナへ言った。

 「え?急にそんなこと言われても…」

 「えっと、まず今回の治療費の請求でしょ?それと迷惑料としてセナ君専用の飛竜を1頭、もちろん維持管理はそっちもちね!それから燐気と龍気を習得するまでの訓練指導と滞在費でしょ?あとは手続きなしで自由に出入国する権利…んーそれから…」

 「まてまてまて!なんでお前が言ってんだよ!」

 困惑するセナの横で腰に手を当てアディオンが偉そうにツラツラと条件を口にしだしエイケンが焦りながら止めた。

 「だが、妥当な線だと思うぞ?」

 「まぁそうだがよ!アディオンがいうから気に入らねぇ!」

 サイが納得したように言うと、エイケンが勢いよくサイへと振り返り叫ぶように言った。

 「ふむ。そこまではたしかに妥当な線だな、よかろう了承した」

 「おいおい!いいのかよっ!」

 「そのほかでセナ殿自身が望むことは何かないか?」

 エイシャが受け入れるよういい、エイケンが驚いたが、エイシャはそれを無視しセナへ優し気な目を向け尋ねた。

 「他ですか?…なにかですか?…んー…」

 「セナ君?二人の処遇は奴隷や家畜の居ないちゃんのままでいいのかい?」

 「!!」

 考え込むセナへアディオンが耳に口を寄せ小声で言った。

 「そうだ!なら図々しいですが…僕は旅を続けたいと思ってるんですが、よければヤオさんとタオさんについてきてもらえたらなと思います…仲間として…ダメですか?」

 「なっ!?仲間など…我らはそんな立場にはなれませぬ!」

 「ふふふっセナ君は やはりそうじゃなくっちゃね」

 「この二人を仲間にして旅って…お前…恐れを知らねぇ物好きだな…セナ…」

 セナの申し出にヤオが驚きながら言うが、アディオンは満足げに笑い、エイケンはあきれたような顔をして言った。

 「セナ様それはできませんわ!仲間とは対等の意。我らにそのような資格はございませんわ!」

 「ほぅ?セナ殿に一生奴隷のように仕えるといいながら、さっそく歯向かうか?」

 タオが焦ったようにいうが、サイが面白そうに口角をつりあげ二人に言った。

 「くっ!言葉に二言はありませぬが…それでは…」

 「ふむ。セナ殿の申し出はよくわかった…こちら側から言える立場ではないが…二人を従者として連れて行ってはもらえぬだろうか?」

 ヤオが苦々しい顔で言葉に詰まると、エイシャが妥協案を口にした。

 「セナ君?ここらが落とし所だとおもうよ?君も彼女らを困らせたいわけじゃないんでしょ?」

 エイシャの言葉にセナが何か言おうとしたところ、アディオンが止めながら言った。

 「…はい…わかりました…では、お二人を私の従者として…ください」

 「了承した」

 「重ね重ねの情けに感謝いたします」

 セナが渋々エイシャにいうと、エイシャは優しく満足げに了承し、ヤオとタオの二人は深々と頭をさげた。

 「セナおめぇ甘すぎんぞ?」

 「それは今にはじまったことじゃないさ」

 「それがセナ様ですから!」

 「ん?スカーレット貴様いつからそこにいた?」

 「えーっ!?ずっといたじゃないですか!ひどいですよ!師匠!!」

 エイケンがあきれたように話、アディオンが笑顔をうかべている横ですっかり忘れられていたスカーレットが憤慨した。

 「では、セナ殿 明日中には先ほどの話をまとめた書類を持ってくる、そこでセナ殿が間違いなければお互い署名をし、同じものをリネアにも送り報告とするがよいか?」

 エイシャが4人が騒ぐ中 セナへと話した。

 「書類は後々、そちらにご迷惑をおかけしないように作ってもらうことに異論はありません、しかしリネアには一切知らせずにしてください」

 「そういうわけにもいかんのだがな…」

 「S級冒険者で英雄が自身の身に起こることするら確認を怠って死にかけたなんて…恥ずかしいので」

 「ふふふっ相分かった…セナ殿…すまんな」

 セナが余計な心配をかけたくないのをごまかすために言っていると分かったエイシャたちは笑顔をうかべた。

 そして、アディオンがセナの状態を確認し、軽い打撲と筋肉痛が主な症状だと診断し、それぞれが診療室をあとにした。

 

 
 
 

 


 

 

 

 
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