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89話

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 「エヴァ様本当によろしかったんですか?」

 「ええ、もちろんですわ。放置しているよりそのほうが有意義ですもの」

 セイジュが色々調べモンドに頼み幾つかの植物の苗を大量に仕入れてもらいアメリアとエヴァの祖国に植栽できないか打診しようと相談するとエヴァが所有している土地を無償で提供され礼をしていた。

 「ありがとうございます。とりあえず地図上で植えてほしい場所と植物の種類、管理の仕方を記載したものを現地に送ります。植え付けには父が人をおくってくれるそうなのでご安心ください」

 「セイジュ様、ありがとうございます」

 セイジュの言葉にエヴァが笑顔で礼をした。

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 「ふふふん♪」

 「アヴィ随分上機嫌じゃない?」

 「それはそうよ!味わったでしょ?この葡萄酒!いままでのものとは別物よ?しかも瓶もラベルもこの高級感!」

 「そうね、たしかに高級感ある見た目と味わいね」

 「ええ!それに色も赤と白それにロゼというピンク色も素敵だし味わいも異なるの!機嫌もよくなるわよ!」

 「それで?量産できそうなの?」

 「もちろんよ!うちの人もスタークもいるし何よりセイジュ様がついておられるのよ?完璧よ!」

 試作品はセイジュが魔法を駆使し少量だけ生産したもので来年以降安定した生産を目指すためブルリック、スタークそしてセイジュがブドウ畑の場所や保存先の選定に忙しくしていた。

 「ダイナンで作られているこのハムとチーズにベーコンそれにヨーグルトもおいしいわねぇ」

 「ええ、私はこのソーセージが気に入ってるわ」

 「ふふふ、ヨーグルトとソーセージはこの地にこなければ食べれない物よ?これで観光地としての名物がまた増えたわ」

 「でもハムもチーズも葡萄酒もいづれソフィアの祖国でも作るのでしょ?」

 「ええ、でも味わいがまったく変わるのでシェアの奪い合いにはあまりならないみたいよ?」

 「はぁ~…そこまで考えているなんてさすがセイジュ様ね」

 「ええ、でも結局はカリーナが一番よねぇ」

 「ふふふ、何の話かしら?」

 「葡萄酒が売れれば売れるだけ瓶の製造をしてるホルマトロの需要が増えるじゃない」

 「葡萄酒を飲むグラスまで作るとは思わなかったわ!それにいつのまにか樽製造までしてるんですもの!」

 「ふふふ、セイちゃんがうちだけのけ者にするわけないじゃない。それに樽は孤児の子達にお仕事をとうちの人とハンスがセイちゃんと話してきめたのよ」

 アヴリルとケイシーにカリーナが朗らかかつどこか勝ち誇ったように微笑んだ。

 「ケイシーのほうも色々うごいているのでしょ?」

 「ふふふ…いつまでもうちが武骨なだけだと思わないでね?」

 「なによ?教えなさいよ」

 「ダメよ、うちの人からも止められてるんだから」

 アヴリルの追及をケイシーはのらりくらり躱した。

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 「これは!酒が進むな!」

 「ありがとうございます。これはサラミというハムの種類です。日持ちもするので場合によっては干し肉以上の需要が見込める可能性があるかもしれません」

 「なるほどな!それに貝を干したものがこのようにうまいとはな!」

 「はい、これはそのまま食べてもいいのですが水で戻してやれば柔らかくなりますし濃厚に凝縮された貝のうまみをつかえますので料理の幅がふえます」

 「お父様燻製にもできますし、どうでしょうか?」

 「ああ!セイよ、言うことなしだ!」

 「ありがとうございます」

 ホルマトロ家では試作した食品をいくつかならべてハスクとハンスが試食をした。

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 「はぁ~…日に日に食事がおいしくなっていきますね」

 「そうですね!スープもパンもお野菜もどれも最高においしいです!」

 「体系維持に苦労しますわ」

 「「ふぐっ!」」

 マーリンとメリダが嬉しそうに料理に舌鼓をうつのをみてカリンがボソッと呟くと二人は気まずそうに食べるのを止めた。

 「ほんとうに驚くことばかりだわ」

 「そうですね!」

 エヴァの言葉にマチルダも元気に頷いた。

 「ところでアンジェリーナ様はどちらに?」

 「はい、セイジュ様のお手伝いだそうでお二人でお出かけしました!」

 「ぐぬぬ!またアンジェったら抜け駆けして!」

 「隙あらばお二人になりますからね」

 肉の刺さったままのフォークを握り締め悔しがるメリダと冷たい目をしたマーリンが言った。

 ==============================================

 「みなさん喜んでくださってよかったですね」

 「ええ、セイお疲れさまでした」

 「はぁ~せっかく皆さん夏の長期休養ですのにあわただしく過ごさせてしまっており申し訳ありません」

 「なにをおっしゃってるんですの?セイは皆のために身を粉にして頑張っているのではありませんか、感謝しておりますのよ?」

 「そういっていただけると嬉しいのですが、正直自分でもこのような大事になっていくとは思っていませんでした」

 「まぁ!………セイ?がんばりすぎなんじゃありませんの?」

 「……子供のころ自分が作ったものをアンジェ様が喜んでくれて正直平民の僕が作ったものをそんなに喜んでもらえるとは思っていなかったのですが、その笑顔が忘れられずもっと、もっとと欲をだしたのがいけなかったんですかねぇ」

 「セイ……そのようなことを………」

 「僕はアンジェ様が嬉しそうにしてるのを見るのが好きでカリーナ様が優しくほめてくださるのも本当に大好きなんですよ。心が温かくなるし自分はもっと頑張れるって力をどれほどいただいてきたかわかりません。ハスク様にはそんな機会を与えていただき感謝もしてますし、僕を信頼してくださってるハンス様やアメリア様も大好きです……だけど……最近がんばればがんばるほど皆さんとの時間もなく……父や母にもあえず自分で言いだしたことの結果すらみえなくなってきて……もし失敗したらどれほど皆さんに迷惑をおかけしてしまうか……想像すると………」

 「セイ!」

 「うわ!?アンジェ様!?」

 力なく笑いうつむいたセイジュをアンジェリーナが力いっぱい抱きしめた。

 「セイ、セイが一人ならば失敗することもあるとおもいます。しかし今はセイには私たちが居りますわ!何の役に立つのかわからず、セイに頼ってばかりですが……でも!お父様もお兄様もブルリック様たちもおりますわ!みんなで知恵を、力をだしあえば必ずうまくやれますわ!」

 「アンジェ様」

 「それにもし、セイが失敗したら私も一緒に責任を取りますわ!」

 「え!?」

 「婚約した時の言葉……一生いっしょに居たいと言ったのは嘘偽りありません!ですからもし失敗して責任を取り命を絶つということがあれば私も一緒に絶ちます!」

 「そんなこと!」

 「いいえ!楽しかった、よかった時だけ一緒で苦労し絶望したときは知らぬ存ぜぬなどそのような甘えた想いで婚約したわけではありませんわ!どんな時のセイともご一緒したい……ですから私は婚約したんですわ!!」

 「アンジェ様………!!」

 「セイ!?なにを?」

 涙をポロポロながし必死に言葉を紡いでいくアンジェリーナをみてセイジュは自分の弱さに負けない様に両手で自身の頬を思いっきり叩いた。

 「つつ…アンジェ様を道連れになんてできませんからね…弱音など吐いている場合じゃありませんよ」

 「…セイ」

 「!!」

 涙目で決意を口にしたセイジュの言葉に感動したアンジェリーナは赤くなったセイジュの両ほほに手を添え優しく口づけをした。

 「…セイ、あなたは今のままでいいのです…強くあろうとせずともあなたはいつも優しく強いですわ」

 「…………あ、ありがとうございます」

 ゆっくりと唇を離しながらも真っすぐ見つめてくるアンジェリーナの言葉にセイジュはポロポロと涙を流し礼をし再び二人は優しく抱きしめあった。

 =======================================

 「セイ様おかえりなさいま…………」

 「ただいま戻りました。ん?メリダ様どうなさったんですか?」

 「セイ様?両ほほが真っ赤になっておりますし、お涙をお流しになられたようですが……」

 「え?あ、ああ!大丈夫です!」

 「…………そうですか………それよりもお口のお色が心なしかアンジェと同じ色をしておりますよ?」

 「い゛っ!?」

 「え?」

 「まさかアンジェの唇を奪いほほを………」

 「ち、ちがいます!そのようなことは!!」

 「そ、そうですわ!セイからではなく私からしたのですわ!」

 「アンジェ様!」

 「え?あっ!…………」

 いつも通り腕を組んで帰ってきた二人を出迎えたメリダだったが口が滑ったアンジェリーナの言葉に下を向きプルプルと震えだした。

 「メ、メリダ様?」

 「セイ様!アンジェが一番なのは納得できませんが我慢します!ですがアンジェというのは我慢できません!!」

 「え?んんん!!?」

 「メリダ!」

 心配そうに顔を覗き込んだセイジュにがばっと抱き着き口早に言うと同時にメリダはセイジュの唇をうばった。

 「ぷっはぁ!セイ様!これからはお出かけに行く際とお帰りになった際にはがキスをしてさしあげますからね!」

 顔を真っ赤にそめつつも満足そうににこやかに笑い宣言しながらメリダが立ち去っていった。

 ============================================

 「そうですか…お二人ともセイジュ様の純潔をそのようにお奪いになられたのですね」

 「ア、アンジェが抜け駆けするからつい………」

 「え?私のせいですの!?私はただセイを元気づけようと!」

 「セイジュ様、本日よりお目覚めとお休みの際は必ず私がしてさしあげますのでお声がけください……約束です」

 「え…」

 翌日、朝食の際にバレた二人をマーリンが氷のように冷たい目でみたあとほほを赤らめて優しいのにどこか有無を言わせぬ笑顔でセイジュへといい、その後合流したカリンやマチルダも毎日口づけをすると宣言した。

 「これでアンジェは毎日する約束をしましたね!」

 「え?」

 「そうですね」

 「アンジェリーナ様は隙あらばイチャイチャなさるので必要ないのでは?」

 「あはははは!」

 メリダの言葉に自分だけが約束をしていないことに気づいたアンジェリーナは急いで自分も約束しようと考えた。

 「わ、私だって約束いたしますわ」

 「ふーん、どのようなですか?」

 「そ、それは…わ、私かセイがしたいときにいつでもする約束ですわ!」

 「ぶっ!」

 勢いよく立ち上がり胸を張りどもりながらも勢いよく言い切ったアンジェリーナの言葉にセイジュは驚き盛大にお茶をふきだした。
 
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