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51話

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 「できた!!」

 闘技大会やアデラとコルグそれとそれに組みする一部の貴族が消え裏でアスク達が忙しくしている中、束の間の平和を味わうかのようにセイジュは父の仕事の手伝いとハンスのお供を数回繰り返し行く先々で興味をひかれた品を仕入れ工房であれこれと制作にいそしんでいた。

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 「おい!それはでかいから割らねぇようにきをつけろよ!」

 「わかってるよ!」

 「セイジュ様!山から沢山もってきたよ!」

 「お?沢山もってきたね!重かったでしょ?ありがとう」

 「えへへへへへ!」

 モンド商会で働いている男たち数名とセイジュに柔らかな笑顔で頭を撫でられ嬉しそうにわらった少しよれた服装をした子供と同じような子たち数十名がセイジュの指示にせっせと働いていた。

 「セイジュ坊ちゃん取り付け終わりやした!」

 「ありがとうございます!じゃあ皆もうひと踏ん張りしようか!」

 「はぁい!」

 =======================================

 「よし!ばっちりですね!」

 「へい!しかし熱っぃですね!」

 「セイジュ様…これはいったいどのような代物なのでしょうか…」

 朝早くから日が暮れるまで作業すること5日間、完成した達成感に浸るセイジュ達にシスターが困惑気味に声をかけてきた。

 「シスター様、この度は場所を提供してくださりありがとうございます!」

 「い、いえ!いつもモンド様にもセイジュ様にもお世話になっておりますので…それでそのぉ…」

 「ああ!これは温室です!この建物の中は気温を一定近くに保てるはずです」

 「そ、そうなのですか…す、すごいものなのですね」

 「シスター!これで一年中作物を作れるようになったんだよ!」

 「えぇぇ!?」

 「くっくっく!やっぱシスターよくわかってなかったんじゃねぇか」

 「お、お恥ずかしい…」

 「この建物の中には雪も雨もはいらねぇし温度がずっとあったけぇままだから野菜やら花やらずっとつくれんだよ!」

 「あぁ!なるほど!って、それはすごいですね!!」

 「あぁ!うちのセイジュ坊ちゃんは心優しい大天才の賢人で錬金術師様だからな!」

 「ちげぇねぇ!」

 日ごろモンドが寄付などをしている教会が運営している孤児院の裏にある土地を使い新しく制作したガラスを使い温室を作ったセイジュは手伝ってくれた孤児たちに5日分の報酬をしっかり支払い温室のことを説明し工房へと戻っていった。

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 「ハスク様並びにハンス様そしてモンド様、セイジュ様お忙しいところご足労いただきまして誠にありがとうございます」

 「いや大司教きにせんでくれ」

 「この度もホルマトロ公爵家並びにモンド商会様には大変おせわになっておりますれば感謝をお伝えいたしたく」

 「いや当然のことをしたまでゆえ礼にはおよばんよ」

 「ありがとうございます。この度の事業により孤児たちにも仕事ができ、かつ自足も可能になってまいりました」

 「私どもは…息子、セイジュの思い付きに公爵様がお力添えをしてくださった結果でございまして感謝されることでは…」

 モンドは教会からの感謝に恐縮しっぱなしで額の汗をふいていた。

 「そうですね、ハスク様やハンス様が温室の施工になれているだろうと最初に手伝ってくれた孤児たちを雇ってくださった事、収穫した野菜を正規で買い取っていただいているからだと僕…私も思っておりますので…」

 セイジュもモンドと同じように額に汗をうかべ必死に答えた。

 「ふふふっセイジュ様ったら相変わらず欲がありませんのね」

 「マーリン様、事実ですから…あの…」

 先ほどからセイジュの隣に座りニコニコと腕を絡めてきているマーリンに困惑の声をかけた。

 「セイジュ様が新しいガラスの作り方を開発なさり、温室なるものをお作りになりそれを当教会ゆかりの場所にはじめてお作りになられ冬の生野菜不足を解消なさったのですよ?それにホルマトロ公爵家に一年中花をめでることができる温室の庭をお作りなるとほかの貴族の方々からも注文がありそのすべてを孤児たちが仕事として請け負っておりますんですもの!まさしく豊穣と愛です!」

 腕に絡みついたままツラツラとこれまでのことをあげにこやかにセイジュをほめるマーリンにセイジュは赤面し動けずにいた。

 「ホルマトロ公爵家の皆様も公爵家所有の山を開放していただき感謝しております」

 「まさか落ち葉や枯れ枝が腐ったものが植物の栄養になるとはおもってもいなかった。当家としては山がきれいに整備されかえってとくをしておりますよ」

 その後、ハスク、ハンス、モンドが今後の孤児たちの雇用などについて教会側と話をするということで工房まで一緒に行くといったマーリンをハンスがうまく引き離してくれた隙にセイジュはさっさと退散した。

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 「セイげっそりしておりますが大丈夫なのですか?」

 「全然慣れずに今回もハスク様やハンス様に丸投げしてしまいました…」

 工房へ帰ってお茶をいれ一息ついているとセルジュを引き連れアンジェリーナが尋ねてきてセルジュは慣れた手つきで工房でお茶をいれアンジェリーナとセイジュへ出してきた。

 「お父様もお兄様も恩恵をこれでもかと頂いているのですからそれくらいは進んでするべきですわ!セイがきにすることではありません!」

 「え?いや…しかしですね…」

 「いいのです!セイはそのままで!」

 「は、はい!」

 「ふむ、よろしい」

 腰に手を当て顔をずいっとちかづけてきたアンジェリーナの迫力に負けセイジュはうなずくしかなかった。

 「アンジェリーナお嬢様」

 「なんですの?」

 「差し出口もうしわけございませんが、セイジュ様のご心労を考えますとハスク様からのご許可がおおりになられましたら今後セイジュ様がどなたかに招待された際の参加の有無などをお嬢様がお決めになってさしあげたらいかがではないでしょうか」

 「え!?そんなアンジェリーナ様もお忙しい…」

 「そうですわね!さすがセルジュですわ!帰ったら早速お父様にご相談してみますわ!」

 「いやさすがに」

 「セイはその手のことに疎いですからそうしましょう!…なにか異議でも?」

 「い、いえそうしてもらえると嬉しいですがアンジェリーナにそこまで甘えるのも…」

 「私がいいといっているのです!セイは安心してご自分がやりたいことに精進なさい!」

 「セイジュ様そのほうがよろしいかと…ホルマトロ公爵家が今後セイジュ様の窓口になりますれば下手な招待などすべて断ることも可能になりますので」

 「わ、わかりましたでは申し訳ありませんがご許可が下りたらおねがいします」

 「ええ、私に任せておきなさい」

 満面の笑みでどんと胸をたたいたアンジェリーナをみて頼もしさと優しさにうれしくなったセイジュは笑顔を浮かべた。

 「やはりアンジェリーナ様とご一緒しているときが一番楽しくおちつきますね」

 「なっ!?と、当然ですわ!!ほかの方々とはお付き合いの長さが違いますわ!!」

 柔らかな笑顔をうかべてしみじみいったセイジュの言葉に今日も今日とてアンジェリーナは顔をまっかにし盛大に照れていた。
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