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48話
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「セイ、そのようなことはしなくてもよいのでこちらに座りなさい」
「え?いやしかし」
「そうです!セイ様も本日の主役のお一人なのですから!」
「いえ、だいじょう…うわっ!」
「セイジュ様、こちらです」
「ちょ、ちょっと…」
「セイジュ様お飲み物です!どうぞ!!」
「あ、ありがとうございます」
闘技大会が終わり、国王から優勝の表彰をされそのままホルマトロ家で優勝祝賀会が開かれていて俺は手伝いをこなしていた方が気が楽なので厨房へ向かおうとしたがアンジェリーナたちに見つかりカリンに引きづられながら彼女たちの元へ連行されていった。
「くっくっく、モテモテじゃないか」
「ふっ、そのようですね」
「あのカリンがあのように甲斐甲斐しくエスコートするなど驚きですよ」
王城に残ったリカルド以外の兄たちは微笑ましくその光景を見ていた。
「それで?イーサンは口を割ったのか?」
「はい、子息は亡くなり、家も取り壊しで自身にも極刑は免れないと理解していたようですからもう庇い建てする必要もありません」
「そうか」
「コルグ元第2王子様はお怪我の具合は良好のようですがトラウマだったのかうなされているようでまだ私がいる時点では会話はできませんでした」
「セイのヒールで怪我は治ったが圧倒的な力の差と今後の自身に起こることを考えれば当然だな」
「ええ、それにあそこまでの怪我を一度に治されてしまえば副作用でそれどころではないでしょう」
「ふっ、そうだな。あとはアデラがどう動くか…しばし警戒を強めねばならんな」
「ええ、アデラについた者達もかなりいるようですし、できればこの機に一掃してしまいたいところですが…」
「後がありませんからな、なにをしてくるのか…」
「ああ、追い詰められたものがどのような行動をとるかわからん…」
ハスク達が執務室で今後の対策を話し合っていた。
「ふふっ…皆初々しくて可愛らしいわぁ」
「そうねぇ、まるで私たちの学生の頃のようだわ」
「貴方たちは伴侶さがしに必死になっていただけじゃない?」
「リナもラルもすんなり伴侶を見つけたからそんなことが言えるのよ」
「そうね、大半の者たちはそうそううまくはいかないのよ」
「………ラルは大丈夫かしら…」
「あのラルのことだから大丈夫だとは思うけど……」
「あのアデラが何をしてくるのか…」
「ええ、まさかこのままとはいかないと思うわ」
母親達3人も今後なりふり構わず何をしでかすかわからない相手に不安を募らせていた。
「もう!なんですの皆様!セイは我が家の客人なのですから私が御もてなしいたしますわ!」
「招待客どうしの交流の一環ですわ」
「カリン様のおっしゃる通りです!それにセイ様はいづれ私の御じいさまの領地を引き継いでくださるかもしれないお相手ですから!」
「なっ!?メリダ様!それはどういう意味ですのっ!」
「失礼ながらセイ様はどうお考えしても文官のほうがお似合いですから、ホマスとの相性の方がよろしいと思いますが?」
「カリン様!」
「え!?セイ様が来てくださったらグラドスはもっと強くなると思うのですけどどうですか!」
「マチルダ様まで!」
「ぐぬぬぬぬっ!皆様好き勝手おっしゃられて…!」
「くっふっふ!アンジェ、皆もその辺にしておいたほうがいい」
「お兄さま!」
「とうの本人が理解できずに困惑してしまっているからね」
あまりの怒涛の流れについていけず手渡されたグラスを持ったまま固まってしまった俺を見かねたのか苦笑しながらハンスが止めに入ってくれた。
「しかし闘技大会でセイジュ様の姿が大きく知られてしまったのも事実ですよ?」
「わがものにしようとする者たちが大勢寄ってくるでしょう」
「それはホルマトロを敵にしてまでかい?」
「セイジュ様がホルマトロの目に常に収まっておいででしたら不可能ですが」
「あはははは!たしかにそこは由々しき問題の一つだね!」
スタークとエドワードの言葉を聞いたハンスが苦笑しながら納得していた。
「カリンたちの敵は予想より多いと私は推測してますがね」
「噂によれば教会側も動く気配があると耳に挟みました」
「ほぅ!聖女候補でもセイにあてがうつもりなのかな?」
「もしそれが事実ならばいかなメリダ様とて中々きびしい状況になってしまいますね」
「最悪国外への流出になる可能性も出てきます」
「頭の痛い問題を思い出させないでくれ…ただでさえ旅に出たいといってるんだ」
「話は聞いております…それはもはやホルマトロだけの問題ではなくなってしまいますからね」
「そうですね」
「野心もなく色も効かない…ほんと困った子だよ!」
未だ静かにけん制し合い妹たちは話を聞き危機感を覚えていてそれをよそに兄たちは好き勝手話し合っていた。
「セイ様、少々ここでお食事でもご賞味なさっていてください。皆さまは少々あちらへ」
話を概ね聞いたメリダがアンジェリーナたちを会場の隅へとよびだし4人は顔を寄せ合い隅で密談をはじめた。
「先ほどのお話をお聞きになられましたわよね?」
「ええ」
「由々しき事態です」
「セイ様がどなたを選ぶのかはわかりませんが…国外へ行ってしまわれたりするのも…なによりも私たち以外が選ばれるのは非常に大問題です!」
「ええ…そうですね」
「そこで…私たち一時休戦し協定を結びませんか?」
「協定?」
「なるほど…いい案ですわ」
「カリン様はご理解できてらっしゃるの?」
「ええ、セイジュ様が私たち以外と親しくなるのを防ぐための協定ですわ、そして私たちは抜け駆けなしが一時休戦の意味…そうですわよね?メリダ様」
「そうです。私たちの中から誰が選ばれても恨みっこなしですが他からぽっと現れた方に奪われるなど我慢できませんから!」
「なるほど!団体戦をなさるおつもりなのですね!」
「マチルダ様…ま、まぁ簡単に言えばそういうことです」
「おぉ!私たちでセイジュ様をお守りできれば勝ちというわけですね!燃えてきます!!」
「セイを守る?…わたくしが…?」
マチルダの言葉を聞きアンジェリーナが何度も同じことをつぶやきながら何かを考え始めた。
「アンジェ様?」
「…わかりました。皆さまその協定を結びましょう…セイは必ずわたくしが守ってみせますわっ!」
「私たちです」
「そうですわ、わたくしたちでセイ様を必ず毒牙からお守りいたしましょう!」
「はい!」
置いてけぼりを食らい戸惑うセイジュの知らないところでセイジュ防衛協定が結ばれた瞬間だった。
「え?いやしかし」
「そうです!セイ様も本日の主役のお一人なのですから!」
「いえ、だいじょう…うわっ!」
「セイジュ様、こちらです」
「ちょ、ちょっと…」
「セイジュ様お飲み物です!どうぞ!!」
「あ、ありがとうございます」
闘技大会が終わり、国王から優勝の表彰をされそのままホルマトロ家で優勝祝賀会が開かれていて俺は手伝いをこなしていた方が気が楽なので厨房へ向かおうとしたがアンジェリーナたちに見つかりカリンに引きづられながら彼女たちの元へ連行されていった。
「くっくっく、モテモテじゃないか」
「ふっ、そのようですね」
「あのカリンがあのように甲斐甲斐しくエスコートするなど驚きですよ」
王城に残ったリカルド以外の兄たちは微笑ましくその光景を見ていた。
「それで?イーサンは口を割ったのか?」
「はい、子息は亡くなり、家も取り壊しで自身にも極刑は免れないと理解していたようですからもう庇い建てする必要もありません」
「そうか」
「コルグ元第2王子様はお怪我の具合は良好のようですがトラウマだったのかうなされているようでまだ私がいる時点では会話はできませんでした」
「セイのヒールで怪我は治ったが圧倒的な力の差と今後の自身に起こることを考えれば当然だな」
「ええ、それにあそこまでの怪我を一度に治されてしまえば副作用でそれどころではないでしょう」
「ふっ、そうだな。あとはアデラがどう動くか…しばし警戒を強めねばならんな」
「ええ、アデラについた者達もかなりいるようですし、できればこの機に一掃してしまいたいところですが…」
「後がありませんからな、なにをしてくるのか…」
「ああ、追い詰められたものがどのような行動をとるかわからん…」
ハスク達が執務室で今後の対策を話し合っていた。
「ふふっ…皆初々しくて可愛らしいわぁ」
「そうねぇ、まるで私たちの学生の頃のようだわ」
「貴方たちは伴侶さがしに必死になっていただけじゃない?」
「リナもラルもすんなり伴侶を見つけたからそんなことが言えるのよ」
「そうね、大半の者たちはそうそううまくはいかないのよ」
「………ラルは大丈夫かしら…」
「あのラルのことだから大丈夫だとは思うけど……」
「あのアデラが何をしてくるのか…」
「ええ、まさかこのままとはいかないと思うわ」
母親達3人も今後なりふり構わず何をしでかすかわからない相手に不安を募らせていた。
「もう!なんですの皆様!セイは我が家の客人なのですから私が御もてなしいたしますわ!」
「招待客どうしの交流の一環ですわ」
「カリン様のおっしゃる通りです!それにセイ様はいづれ私の御じいさまの領地を引き継いでくださるかもしれないお相手ですから!」
「なっ!?メリダ様!それはどういう意味ですのっ!」
「失礼ながらセイ様はどうお考えしても文官のほうがお似合いですから、ホマスとの相性の方がよろしいと思いますが?」
「カリン様!」
「え!?セイ様が来てくださったらグラドスはもっと強くなると思うのですけどどうですか!」
「マチルダ様まで!」
「ぐぬぬぬぬっ!皆様好き勝手おっしゃられて…!」
「くっふっふ!アンジェ、皆もその辺にしておいたほうがいい」
「お兄さま!」
「とうの本人が理解できずに困惑してしまっているからね」
あまりの怒涛の流れについていけず手渡されたグラスを持ったまま固まってしまった俺を見かねたのか苦笑しながらハンスが止めに入ってくれた。
「しかし闘技大会でセイジュ様の姿が大きく知られてしまったのも事実ですよ?」
「わがものにしようとする者たちが大勢寄ってくるでしょう」
「それはホルマトロを敵にしてまでかい?」
「セイジュ様がホルマトロの目に常に収まっておいででしたら不可能ですが」
「あはははは!たしかにそこは由々しき問題の一つだね!」
スタークとエドワードの言葉を聞いたハンスが苦笑しながら納得していた。
「カリンたちの敵は予想より多いと私は推測してますがね」
「噂によれば教会側も動く気配があると耳に挟みました」
「ほぅ!聖女候補でもセイにあてがうつもりなのかな?」
「もしそれが事実ならばいかなメリダ様とて中々きびしい状況になってしまいますね」
「最悪国外への流出になる可能性も出てきます」
「頭の痛い問題を思い出させないでくれ…ただでさえ旅に出たいといってるんだ」
「話は聞いております…それはもはやホルマトロだけの問題ではなくなってしまいますからね」
「そうですね」
「野心もなく色も効かない…ほんと困った子だよ!」
未だ静かにけん制し合い妹たちは話を聞き危機感を覚えていてそれをよそに兄たちは好き勝手話し合っていた。
「セイ様、少々ここでお食事でもご賞味なさっていてください。皆さまは少々あちらへ」
話を概ね聞いたメリダがアンジェリーナたちを会場の隅へとよびだし4人は顔を寄せ合い隅で密談をはじめた。
「先ほどのお話をお聞きになられましたわよね?」
「ええ」
「由々しき事態です」
「セイ様がどなたを選ぶのかはわかりませんが…国外へ行ってしまわれたりするのも…なによりも私たち以外が選ばれるのは非常に大問題です!」
「ええ…そうですね」
「そこで…私たち一時休戦し協定を結びませんか?」
「協定?」
「なるほど…いい案ですわ」
「カリン様はご理解できてらっしゃるの?」
「ええ、セイジュ様が私たち以外と親しくなるのを防ぐための協定ですわ、そして私たちは抜け駆けなしが一時休戦の意味…そうですわよね?メリダ様」
「そうです。私たちの中から誰が選ばれても恨みっこなしですが他からぽっと現れた方に奪われるなど我慢できませんから!」
「なるほど!団体戦をなさるおつもりなのですね!」
「マチルダ様…ま、まぁ簡単に言えばそういうことです」
「おぉ!私たちでセイジュ様をお守りできれば勝ちというわけですね!燃えてきます!!」
「セイを守る?…わたくしが…?」
マチルダの言葉を聞きアンジェリーナが何度も同じことをつぶやきながら何かを考え始めた。
「アンジェ様?」
「…わかりました。皆さまその協定を結びましょう…セイは必ずわたくしが守ってみせますわっ!」
「私たちです」
「そうですわ、わたくしたちでセイ様を必ず毒牙からお守りいたしましょう!」
「はい!」
置いてけぼりを食らい戸惑うセイジュの知らないところでセイジュ防衛協定が結ばれた瞬間だった。
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