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15話

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 「では、今週はこのように納品するよう頼むぞ」

 「はい!かしこまりました。ハスク様いつもありがとうございます!失礼いたします」

 「うむ」

 俺の作ったコンディショナーはカリーナとエスメラルダ王妃のおかげで瞬く間に貴族たちの間で話題になり、騒動となる前に俺一人の生産ではとハスクが父とともに商品化することになりうちの店で売り出すことになった。
 公爵家公認として公爵家が売り先を決め貴族にだけ受注生産することで価格も高めでありうちの店は右肩上がりで売り上げを伸ばし、公爵家は利益から幾ばくかの仲介料をとりなおかつ交渉の品としてもつかえさらに力をつけることができたそうだ。

それからさらに3年たち俺は13歳となっており右腕は私生活を送るのにはあまり支障のない状態まで回復していた。

======================================

 「できた!おばあさん達はよろこんでくれるかなぁ」

 「お?セイ治療院の時間か?」

 「うん、行ってきます」

 「ああ、気を付けてな!」

 父に見送られ俺は自分の小さな離れから木箱を両手でしっかりもち治療院へと向かうことにした。

 「ふぅ~意外と重いな…考えが甘かった…」

 治療院まで30分ほどでつくのだが中身が詰まった木箱は予想より重く俺はふっふと息荒く歩いていた。

 「やあ、セイ何をそんなに息を切らしてるんだい?」

 「へ?ああ、ハンス様こんにちわ。これから治療院へ行こうとおもっておりまして」

 「へぇ、それでその大事そうに持っている箱はなんだい?」

 「これですか?」

 俺は箱のふたを開け中身をみせて事情を説明した。

 「ふぅ~…それは今日治療院へもっていく約束をしているのかい?」

 「いえ?作っていたことも秘密にしてました。驚かせてあげようと思いまして」

 「そうか…うん、それは見たら驚くね…とりあえず今日はこのまま馬車に乗りうちに来てもらおうかな」

 「え?」

 =======================================

 「失礼します」

 「急にどうしたのだ?セイまで引き連れて」

 「ハスク様こんにちわ…」

 有無も言わせず笑顔のまま俺を馬車に押し込みそのまま公爵家へと連れ込まれ足早にハスクの執務室へと連れてこられた。
 
 「お父様、まずこれを見てください」

 「なんだ?随分いい香りがするが…ん!?これは……パン…なのか?」

 「そうです…天才君がやらかしたんですよ…歯の弱くなった老人たちに治療院で配ろうとしたそうですよ」

 「ぶっ!」

 「ハスク様!?大丈夫ですかっ!?」

 「大丈夫だ…はぁ~…セルジュはいるか?」

 「はい」

 「カリーナとアンジェそれと料理長を今すぐよんでくれ」

 「かしこまりました」

 セルジュが足早にさってからアンジェリーナたちが来るまでの間、2人はパンを凝視し沈黙しており正直俺は生きた心地がしなかった。

 「失礼いたしますわ」

 「失礼いたします。お呼びでしょうか?旦那様」

 体感的にはものすごく長く感じたがたぶん5分程度でアンジェリーナを引き連れたカリーナと何か不備でもあったのかとびくびくしているごっついおっさんがやってきた。

 「3人ともよくきてくれた」

 「あなた急にどうしたんですの?あら、セイちゃん、ハンスまで」

 「セイ、来ていたのに私のもとに来ないとかどういうことですの?」

 「す、すいません…僕もなにがなんだか…」

 「落ち着きなさい、まずこれをみてくれんか?アンドレもだ」

 ハスクが俺の木箱を差し出し3人が中身を覗き込んだ。

 「お父様、これは…なんですの?」

 「白くて柔らかいわね、それに香りがとても食欲を誘いますわ」

 「だ、旦那様…まさか…これはパンにございますか?」

 「「 え!?これがパン!? 」」

 「そうだ…パンだ…ハスク話してやれ」

 「はい…実はね?」

 ハスクは治療院に向かう俺と会ったところから詳しく話を3人にきかせた。

 「セイちゃん…相変わらずすごいのねぇ」

 「セイは優しすぎますわ」

 「流石にお母様もアンジェも慣れてるだけあるねぇ。くっくく」

 「ああ、女は強しだな…それよりアンドレ、一つ食してみてくれんか?」

 「え?よ、よろしいんですか!?」

 「ああ、お前が大丈夫だと判断せねば、ここにいる全員くちにすることもできん」

 「お父様!セイの作ったものなら大丈夫ですのに!」

 「アンジェ?お父様もハンスもそこはわかっておりますが、一応形式なのですわ」

 「で、では……こ、これはっ!?」

 憤慨するアンジェリーナをカリーナがなだめる中、アンドレ料理長が恐る恐る一口パンをたべ目を見開き、においをかぎ食べた断面をくまなく見た後瞬く間に1つペロッと食べてしまった。

 「どうだ?」

 「毒になる味も匂いもありません…それどころか…ふわふわで濃厚な味わいの食べたことのない品です…」

 「そ、そうか…なら我々が食しても問題なさそうだな」

 「はい…」

 まだ食べたそうに箱を見ながらアンドレがハスクの言葉にうなずいた。

 「セイ勝手に毒見させてしまってすまんが、我々にも1つ食させてくれんか?」

 「え?このようなものでよければおいくつでもどうぞ!」

 食べても大丈夫だと言われたハスクに待ちきれないと言いたげな表情で言われては断ることができず心の中で治療院のおばあさんたちに謝罪をした。

 「では、ほぉ!」

 「どれどれ?お?」

 「私もいただかせていただきますわ…ん~ん!!!」

 「もう!セイの作ったものならほんとは私からなのに……んんん!?」

 それぞれが一口食べ目を見開いたり歓喜の声をあげたりと今日も公爵家のリアクションは大げさだった。

 「セイ!おいしいですわ!!なんですのこれ!なんですの!?」

 「え?パンですが…」

 「そんなことわかってますわ!もう!!!」

 テンションがあがったアンジェリーナが俺につかみかかりながら食べかけのパンを見せながら地団太を踏んだ。

 「セイちゃん!私毎日これを食べたいわぁ!」

 「え?そんなにお気に召していただけるなんて嬉しいです」

 「もう!もう!セイちゃんったら!!」

 カリーナが輝く笑顔でほめてくれて俺は嬉しくなり笑顔で礼を言うとカリーナは俺を抱きしめてきた。

 「お母様!セイから離れてください!!」

 「カリーナその辺にしておけアンジェリーナが本気で泣く」

 ハスクの言葉でやっとカリーナが俺を離すとすかさずアンジェリーナが俺とカリーナの間に立って俺を背中に隠すようにしてた。

 「皆さんそのようにお気に召していただけたのなら作り方と必要なものを一度戻りとってきます」

 「よいのか?売り出せばかなりの利益がでるぞ?」

 「あの、よろしければその辺はあとでハスク様と父が…」

 「ふっ!そうであったな。ではそこのアンドレにおしえてやってくれるか?」

 「セイジュ様!よろしくお願いいたします!」

 「え!?こちらこそ…よろしくお願いいたします」

 がっちりと俺の腕をつかんで離さなずカリーナをにらみつけているアンジェリーナをよそに俺はぺこぺこと頭を下げ一度家に帰ることにした。

 

 
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