上 下
6 / 89

6話

しおりを挟む
 「アンジェリーナ様!大丈夫ですか!?」

 「えぇ、大丈夫ですわ」

 「誰だお前は」

 ぶつかった拍子に尻もちをついてしまったアンジェリーナに駆け寄り膝をつき声をかけた俺とアンジェリーナに短い金髪ツンツンヘアーの身なりのきれいな同じくらいの年頃の男の子が不機嫌そうに見下ろすように見ながら声をかけてきた。

 「これは失礼いたしましたわコルグ様」

 「アンジェリーナそれよりそいつは誰だ」

 相手はハンス様に会いに来た一人のコルグだとわかったが未だ不機嫌そうに俺を睨みつけている。

 「失礼いたしましたわ。こちらはセイジュと申すものです。セイこちらは第二王子のコルグ=ホーネット様です」

 「え?し、失礼いたしました!セイジュと申します」

 立ち上がりカーテシーをしたアンジェリーナの紹介で俺はすぐに膝をつき頭を下げて挨拶をした。

 「セイジュといったか?貴様はどこの家の者だ?」

 「は、はい。私の両親は街で雑貨屋を営んでおります」

 「あ゛ぁぁぁん?」

 俺の答えをききコルグが額に血管を浮かばせ怒り始めた。

 「貴様平民の身でなぜ公爵家にいる!しかもなんだその礼の仕方は!無礼だぞ!」

 「ひっ!も、申し訳ありません!」

 本来左ひざをたて右腕を胸にあて頭をさげるのだがあいにく俺の右腕は動かないので両腕がさがったまま頭をさげていることにコルグが激高した。

 「コルグ様、申し訳ありません。この者は右腕が不自由で動かないのですわ」

 「あぁ?そんなもの理由にならん!平民の分際で王族の俺に礼を尽くせぬというのは王族への反逆だっ!」

 「ぐはっ!」

 「セイ!コルグ様おやめくださいませ!この者に反逆の気持ちなどありません!!」

 「アンジェリーナ貴様!下賤の者をかばい俺にたてつく気かっ!」

 「きゃっ!」

 俺を必死で庇うアンジェリーナをみてさらに怒りをたぎらせたコルグがアンジェリーナつめより殴ろうと振りかぶった。

 「ぐはっ!」

 「えっ?セ、セイ!」

 「コルグ様、申し訳ありません!王族のコルグ様にまともな礼もつくせぬのは出来損ないの私ゆえアンジェリーナ様には…」

 「き、貴様ぁぁぁぁ!!!」

 「ぐはっ!ぐふっ!」

 「きゃぁぁぁ!コルグ様おやめください!このままではセイが死んでしまいます!誰かっ!誰かぁぁぁぁ!!」

 咄嗟にアンジェリーナを庇い殴られた俺は頭を地面につけ這いつくばるようにコルグに謝罪したがそれが気に入らなかったのかコルグはさらに激高し俺を蹴飛ばし仰向けにふっとんだところに馬乗りになり俺をこれでもかと殴り始め、必死にとめるアンジェリーナが助けを叫ぶように呼んだ。

 「何事にございますか!?あぁ!コルグ様なにを!」

 「どうしたんだい?あっ!」

 「コルグ!貴様なにをやっているっ!」

 「セルジュ!お兄様!!セイが!!!セイがっ!!!」

 「す、すべて私のせいです…アンジェリーナ様は何もしていません…ひらにご容赦を…」

 殴られ激しい耳鳴りがする中、遠くから数名の声がきこえアンジェリーナが泣きながら何かを叫ぶと殴られるのが止まったが俺はもう限界を超えていて目を開けるのもできずにいたが意識もうろうとする中、案外冷静に俺のせいでアンジェリーナが王族から罰をうけてはならないと思い最後の力を振り絞り声の聞こえる方にお願いをし意識を失った。

======================================

 「なぁ?それ面白いのか?」

 「うん!清太に手伝ってもらってるんだぁ」

 「やってみると意外と難しくてハマるよ。亨もやってみないか?」

 「俺はシューティングかアクション以外やれねぇわ!」

 「今までの恋愛攻略ゲームと違って主人公の性別を選べるから男女それぞれの攻略対象がいて難しいけど凝った作りで楽しいよ?」

 「勘弁してくれよ!わかりやすくスパっと決着つくやつのがいいの!」

 「え~!みんなでやりたかったのになぁ~残念!」

 「まぁ、亨は部活も頑張ってるし無理強いはできないよ」

 「そうだね!ねね!清太はどこまで進んだの?」

 「俺は男バージョンあとはこのシークレットのハッピーエンドだけ、女バージョンはまだ2人のハッピーエンドとしかそろえられていないよ」

 「すごっ!私なんてまだ2人のバッドエンディングしかみてないよ!!」

 「綾香~おめぇは俺と一緒のタイプだから清太と張り合ったって無理だろ」

 「なによ!恋愛偏差値なら負けてないわよ!あふれ出る女子力みせてやるわよ!」

 「無駄無駄無駄無駄ぁ!」

 「なによぉー!!」

 「清太もなんか言ってあげなよ!」

 「ん?あぁ二人とも仲いい…あぶないっ!!」

 「清太ぁ!!」

 「きゃぁーーー!!!いやぁーーー!!!」


===========================

 「うわっ!っつぅ!いててて…あれ?…ここは…」

 目を覚ますと体中に突っ張ったような痛みが走る中、俺は部屋の風景を見渡した。

 「なにごと?あ、セイジュ君!目が覚めたのね!!」

 「モナ先生…ここは…あっ!アンジェリーナ様はっ!?イッタッ!」

 俺の叫び声をきいて部屋に入ってきたモナ先生がベッドの上で起き上がった俺を見て涙目で駆け寄り傷の様子をみているのを混乱したまま見ていたが落ち着くとここは治療院の病室だと気づくと意識を失う前の出来事を思い出しつい立ち上がると体中が痛み悶絶した。

 「アンジェリーナ様は大丈夫だから落ち着いて!」

 なだめられここまでの出来事をモナ先生から聞いた俺はアンジェリーナがとがめられることもなく無事だったことに安堵の息を吐いた。

 「それじゃあ、まだ安静にしていなさいね」

 落ち着いた俺の様子を見てモナ先生が笑顔で病室をあとにした。そして俺は…

 「思い出した…俺は死んだんだ…」

 すべてを思い出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

半神の守護者

ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。 超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。 〜概要〜 臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。 実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。 そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。 ■注記 本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。 他サイトにも投稿中

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

処理中です...