異世界に転生!堪能させて頂きます

葵沙良

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第2章 和国オウラ騒動編

23.親衛隊を破壊します!②

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    夕飯とお風呂を済ませた3人は、床のラグが敷いてある居間でテーブルを囲んで座っている。

「そうですか、親衛隊が……」
「うん。ジボーさんも標的になる可能性があるみたいだし。思い出されると困ることがあるのだと思う」
「しかし、レイナの父親が一緒に帰って来てたらどうにもならないで済んだんじゃねえのか?」

    右で片肘付いて手の上に顎を乗せたジボーが、左手でエールの入ったカップをあおる。

「今回、レイナちゃんのお父さんはわざと残ったんだって。その親衛隊をユイト様が潰したいらしいの。何か良からぬ事も考えられるんじゃないかな。ほら、この間報告した時に……」

「あー…………。あれか?」

    ジボーがユイトの屋敷にいったときの事を思い出す。

「そう。だから、レイナちゃんとジボーさんが捕まると、手出ししにくくなるから」

コトリ、とリンがカップをテーブルに置き、頷いた。

「だけど、リンちゃんの家が安全とは限らないんじゃ無いですか?」

レイナが顎に指を当てて首を傾げる。

「あー…………。この家の周りに張った結界は特殊だから」

それに、リコラもいるしね、と答えるリンに、レイナとジボーの二人は更に首を捻りつつ頷いた。

「結界に関しては、機会があれば教えるね」

    兎に角、今日は寝ることにしましょう、とリンはそう言って寝室へと入って準備を始めた。


寝室にもう1つのベッドを出して置く。間仕切りになる板をスライドさせ、2つに分けた。

「リンちゃん…………。ベッド2台だけって、大丈夫なんですか?」

    扉の所から覗くレイナの疑いを向ける眼差しに、ジボーが困り顔で笑う。

「レイナ、それは大丈夫だ。その間仕切りに特殊な結界魔法付与が付いてるぞ。……その結界で思い出したんだが、この間リンに宿の部屋に掛けて貰った結界があるだろ?ちょっと不思議な現象が起こって原因が掴めないんだ」

「原因、ですか?」

「ああ。リンが夜間に起動するように結界を張ってくれたんだが、壊れるみたいなんだ。張った方も壊した方も壊れたのに気付かない」

    一昨日最近気付いたんだよなー、と呟いたジボーの言葉にリンが首をかしげる。

その言葉を聞きながら、ジボーを眺めていたレイナは、二人の手首に付けられているブレスレットに目が行った。

「リンちゃん、ジボーさん。お二人似通った腕輪してますね。白と黒で対になってるんですか?」
レイナが首を傾げて問うた。

「「は?」」


リンとジボーの動きが止まった。

「だって、デザインが同じ……じゃないですね。付いてるチャームも違いますし…。結界はリンちゃんが張ってるんですよね?」

「そうだけど……。関係あるの?」

首を傾げるリンに向かってレイナは首を振る。

「分かりません。試してみたらどうでしょう?」

「…………やってみる」

レイナの言葉に首を傾げつつ、リンがテーブルの上のカップを包むように結界を張る。

「ジボーさんはまず、腕輪の付いてない左手で結界を触ってみて下さい」

「お、おう」

レイナに促され、リンの結界に触れる。
───壊れない。

「では、今度は右手で」

ジボーが右手で結界に触れると─────結界が音もなく、消えた。

「「なっ⁉」」

リンとジボーが目を見開く。

「これは……。リンちゃん、ジボーさんの腕輪って、鑑定しましたか?」

「─────してない。って言うか、人の持ち物は余程の事が無い限りは、鑑定かけたくない」

「そうですよね……。まずは鑑定してみたら良いんじゃないでしょうか?」

    まさか、腕輪が関係していると思わなかった。半信半疑んなか、リンとジボーは顔を見合わせ、お互いに腕輪を外してテーブルに置く。

「やってみる。『鑑定』」

鑑定結果を見たリンは、驚きで固まった。

「……どうでしたか?」

レイナに声をかけられ、リンがハッとする。

「ちょっと結果にびっくりしちゃった。……説明するね。

《黒銀の腕輪:無限アイテムボックス。時間停止、サイズ自動調整。特定の結界以外を、張った本人に気付かせないで壊すことが出来る。装備者の攻撃力を50%上昇させる。白銀の腕輪(白銀のジュエルブレス)と並列に触れ合うと、黒銀の大剣と腕輪に変化が起こる。装備したままでは効果が出ない》

────って出たんだけど、ジボーさん心当たり無い?」

リンの腕輪には書いてない。黒銀の腕輪限定だろうか?

「心当たり……。親父に言われた事くらいだが。──確か、この腕輪は、冒険者だったひい祖父さんから受け継がれてきた物だって親父が言ってたな。この黒い大剣とともに。流石にアイテムボックスが付いてるなんて思わなかったが」

    ゴトリ、とテーブルの上に置かれた大剣。柄と鞘に銀色の文字で幾何学模様が刻まれた大剣は、とても神秘的だ。
その大剣を置いて3人で眺めていたときだった。腕輪と大剣が淡く光り始める。
20秒くらい明滅して光が消えた。

「並列に触れ合う……。もしかして?」

「多分そうだと思います。デザインが変わってますね」

    黒い大剣に変わりはないが、鞘の銀色の幾何学模様に紅いラインと金色のラインが複雑に絡み合っている。

「鑑定してみる?」

「…………頼む」


リンは2つを『鑑定』。

「───結果を読むね。
《黒銀のソードブレス:無限アイテムボックス。時間停止、サイズ自動調整。使用者固定。特定の結界以外を、張った本人に気付かせないで壊すことが出来る。装備者の攻撃力を70%上昇させる。》

《黒銀の双剣:普段は大剣。魔闘気を流すと、任意で双剣に変化させることが出来る。装備者の攻撃力を10%上昇、敏捷を60%上昇させる。使用者固定、自動修復、破壊不可》
って出たんだけど……ジボーさん双剣術は?」

「昔…………俺が成人するまでかなりシゴかれたな。成人と同時にこれを渡されて、Cランク以上になるまで帰ってくるなって追い出されてから、ずっと大剣ばかり使ってる。シゴかれたって言ったが、もう5年くらい双剣術は使ってないな」

ジボーは大剣と腕輪をじっと見る。
まさかこのために鍛えられたなど、誰が分かると言うのか。

「これって、私の腕輪と出会わなければこのままだったって事だよね?」

「そうですね…………」

リンとレイナも腕輪を見つめる。

「何時の時代の物なんだろう?」

リンが顎に指を当てて首を傾げる。

「んー、確か……ひい祖父さんが若い頃、冒険者やってた当時に難攻不落だと言われていたダンジョンがあったらしいんだが……。その下層の宝箱から出たらしい」

「────ダンジョンがあった?」

「ああ。そのダンジョンは、最近───つっても100年前だが、その当時召喚された勇者達が制覇してダンジョンが消えたんだよ」
ジボーの言葉に、リンが目を見開いた。

「…………召喚?」
リンがポツリと呟いた。
「リンちゃん?」
「召喚がどうかしたのか?」

    異世界召喚。リンの友人達の姿が脳裏に現れる。だが、年数が違う。
100年前の勇者ならば、自分が過ごした10年よりも長い。きっと気のせいだと、首を横に振る。

「…………何でもない。その時は同じものは出なかったの?」

リンの何時もの表情。
ジボーは気になったが、話を先に進めることにした。

「…………そこまでは知らねえ。ユイト様に聞けば何か分かるかもな」

    腕輪を嵌めながらジボーはそう答えた。
リンも腕輪を嵌め、パン、と気分を変えるように手を叩くとニコリと笑った。

「そうだ!私、多少なら双剣使えるから、明日庭で模擬戦やってみる?」

「は?お前が得意なのは刀剣術だろ?」

「うん。少し習ったことがあるの。そんなに双剣術は得意じゃないから、期待しないでね。そうと決まれば、もう寝ましょう!」

    明日から親衛隊打倒の為に特訓するぞ!と強く思う。
そして3人はそれぞれのベッドに入るのだった。


─────レイナは勿論、リンのベッドへ。








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